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真樹VS女子  作者: 東洋連合
Episode16 盗んだのは誰だ?
277/333

第272話 心当たりは…。

こんにちわ。

今回は早め早めに物語を動かしていきたいと思っております。

 近年はスマートフォンのカメラ性能も向上し、画質が王幅に改善された上に編集も自由にできるようになっている。しかし、それでも望遠機能などは高性能のデジタルカメラに比べるとやはり限界はある。なので、杜夫達の様な写真に力を入れている者は大体が一眼レフなどのデジタルカメラを使用している。だが、非常に高価なので高校生が手に入れるのは難しいのも事実であり、スマートフォンやチェキなどを使う者も一定数いる。そして、大谷津学院写真部の様に写真の腕を磨くために努力している者もいれば、映えを重視して承認欲求を満たそうとする者もいる。木下の入試強制辞退事件の裏では、正に後者の様な者が暗躍していた。


「くそっ!何でよ!」

 悔しそうにそう叫んだのは、一人の少女だった。少女は学校から帰って来るなり、部屋に入って鞄をベッドの上に投げ捨てるように放り投げた。

「ヘマしちゃって!全部やり直しじゃない!」

 髪の毛を明るい茶色に染め、緑色のカラーコンタクトを付けている、いかにも今時女子ともいえるその少女。少女はスマホで自身のブログのパージを開き、過去の投稿を見返す。

「どう考えても、私の方が映える写真取れるのに、なんでみんなあの地味女の写真ばかり褒めるのよ。」

 彼女は所謂ブロガー、インフルエンサーの類で、主に映える写真をネットにアップしてフォロワーからのリアクションやコメント数、閲覧数をみて楽しんでいる様だ。

「あいつが邪魔しなければ、私が日本一可愛い写真女子としてもっと輝けるのに。今度こそ邪魔してやる。あんな奴の思い通りにはさせない。」

 少女はスマホ置いて、そのままベッドに寝転がったのだ。


 所変わって、ここは大谷津学院写真部の部室。前日に真樹の協力もあって、データを盗んだ実行犯を捕まえることが出来た木下は、この日も部室で入試の準備をしていた。本人曰く、ここが一番集中できるとの事だ。彼女が筆記試験の準備をしていると、部室に誰かが入ってきた。

「あ、先輩も来てたんですね。」

「お疲れ様でーす!」

 杜夫と小林だった。2人も月末のコンクールの予選に向けて、活動日以外にも部室によく顔を出している。木下は二人を見て、微笑みながら挨拶した。

「公津君に小林君。2人も精が出るわね。」

 入試とコンクール、それぞれの目標に向かって準備に勤しむ3人。すると、小林が前日の事件に関して木下に聞いた。

「そう言えば先輩。昨日遅くまで犯人と事情聴取されてましたけど、どうでした。」

 小林が聞くと、木下は手を止めて説明を始める。

「何か…。盗んだことは認めたけど、自分は頼まれただけって言い張ってて…。その頼んだ人も結局分からないままだったし。捕まったのはいいけど、どうもスッキリしないのよね。」

 険しい表情でそう言った彼女。そんな時に杜夫は昨日真樹に言われたことを思い出した。

「真樹は裏に黒幕がいるのは間違いないって言ってました。でも、仮にそれが本当だったとして、どうやって見つけるかが分からないんですよね。」

 真樹は杜夫達に黒幕が別の方法で入試の邪魔をしてくると予想したが、それを阻止する為にも犯人の手がかりは未だにゼロである。

「全く…。本当に一体誰なのよ…。」

 木下は溜息交じりにそう呟いた。そんな時、小林が何かを思い出したように言った。

「何か…それっぽい奴一人いるような、いないような…。」

「え、誰よ…。」

 木下が怪訝な表情を浮べながら小林に尋ねる。小林は過去大会の資料を持ち出し、あるページを見せた。

「ほら、こいつですよ。」

 それは昨年、成田市のコンクールの時の物。そこには部門賞で金賞を受賞した木下の隣に、それぞれ銀賞と銅賞の受賞者が映っているのだが、小林は銅賞の受賞者の方を指さした。それを見て杜夫も何かを思い出したように話す。

「ん~と。あ、思い出した。東成田高の香取真奈だっけ。毎回ド派手な格好で、映え重視の写真でエントリーしてくる。確かに、先輩が金賞取ってから、会うとよく絡んできてたな。」

 木下自身もその少女の事は頭の中に入っている。だが、疑問も残る。

「確かによく突っかかってきて面倒臭かったけど、何でそれが今回の事件につながるのよ?」

「そ、それは…。」

「分かんないんですが…。」

 杜夫も小林も項垂れながらそう言った。結局、怪しい者はいるものの犯人特定までは至らなかった3人。こうしている間にも、木下の入試の日は迫っている。


 放課後。真樹は自宅の最寄り駅である佐倉駅に降り立った。この日は野球部の練習もなかったが、帰りに欲しい本を探しているうちに遅くなってしまい、駅に着く頃にはすでに日が沈んでいた。駅を降りた時、真樹はあることに気付く。

「ライトアップか。杜夫が喜びそうな光景だな。」

 駅前の植木に電飾が付けられ、イルミネーションが見られるようになっていた。真樹はスマホでイルミネーションの写真を1枚撮り、杜夫のメッセージに送信した。送信を終えて帰ろうとしたその時、植え込みの方で何やら声が聞こえてくる。

「こら、君!何やってんだ?」

 植木の管理人と思しき中年男性が、怒り口調で叫んでいる。男性の視線の先には派手な格好をした少女が一人立っていた。少女は男性に対し、不満そうに言う。

「何って、映える写真撮っているだけだけど。文句ある?」

「花壇の中に入って撮る奴があるか!」

 よく見ると、少女は花壇に完全に足を入れた状態で自撮りをしていた。男性はそのことを注意したのだが、少女の耳には届かない。

「いいじゃん。減るもんじゃないし。」

「撮影するならマナーを守れって言ってるんだ!」

 男性に注意され、少女は更に喧嘩腰になる。

「うるさいな、もう!花壇入らなきゃいい角度で撮れないようにしてんのが悪いんじゃん!」

「何だ、その態度は!これ以上荒らすなら警察呼ぶぞ!」

「っ…ちっ!分かったよ!」

 警察と言われて少女は不満そうにその場を立ち去った。その様子を見て、真樹は溜息をついた。

「いるよな。ああいう自分勝手なバカ女。目障りだからさっさと地獄に落ちてくれ。」

 そう言い残し、真樹は自宅へ向かった。しかし、まさかこの事が先日の事件と関わって来るとは、この時誰も思わなかったのである。

 

こんにちわ。

最近また寒くなっています。

体調を崩すと、執筆にも響くので気を付けます。

それではまた次回!

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