第266話 本番に向けて
こんにちわ。
久々に晴れて嬉しいです。
季節はもうすぐ2月を迎えようとしている中、大谷津学院ではそれぞれの部活動が各々成果を出している。そんな中、杜夫の所属する写真部も忙しくなっていた。
「ここまで頑張ってきた以上、絶対失敗したくないわ。」
そう言ったのは写真部の3年生である、木下希美という少女である。木下はカメラのデータをパソコンに移管して、細かいチェックを始めた。そんな彼女に杜夫は話しかける。
「先輩、期限いつでしたっけ?」
「来週までに提出よ。それから、再来週に筆記と実技。」
二人の会話に、1年の小林も興味津々で聞いてきた。
「やっぱり、専門大学は普通の大学入試と結構違うんですね。」
彼の言う通り、木下は2月に大学入試を控えているのだが、そこはかなり特殊な入試方法だった。
「芸大、美大受験に実技は必須よ。今回受ける千葉芸大も例外じゃないわ。」
木下はそう言った。彼女が受験しようとしている千葉芸術大学は、一般常識として英国数の筆記試験に加え、各学科で課題の事前提出、筆記試験の翌日に実技試験という入試方法を採用している。彼女が受験しようとしている映像、写真学科はカメラの腕前が試され、事前の課題提出では写真の提出、実技では大学構内で撮影及び編集の技術が見られる。木下は大学に提出用の写真の選定と、その編集の最終確認をしに来ていたのだった。
「でも先輩なら大丈夫ですよ。コンクールであれだけ活躍したんですし。」
杜夫はそう声かけたが、木下は真面目な表情で言う。
「でもね、公津君。芸大、美大は数が少ないから入試は狭き門なの。1浪、2浪も珍しくないわ。コンクールの優勝者ですら落ちるって言われているから、気を引き締めて行かないとだめなの。」
冷静にそう言った木下。それに対し、小林は微笑みながら言った。
「とにかく頑張ってくださいよ。応援してますから。」
「ありがとう。小林君。」
木下も、そんな彼に微笑みながら返事をした。そんな時、杜夫も小林に声を掛ける。
「じゃあ、小林。俺たちは次のコンクールの作戦会議だ。撮影場所を早い所決めようぜ。」
「あ、そうでした。そうでした。こっちも頑張りますか!」
杜夫達も2月にコンクールの予選が控えており、二人は題材の撮影場所について話し合いを始めた。こうして、写真部の面々の忙しい時間がまた過ぎていく。
別の日。成田市内の公園では真樹と慶が自主トレを行っていた。園内の遊歩道を並走しながら、慶は真樹に話しかける。
「そう言えば真樹。春の選抜出られるんだね!おめでとう!見に行くよ。」
「21世紀枠だけどな。とにかく、今度こそ優勝だ。」
「どんな形でも、出られるだけで凄いよ!」
「ああ。だから練習に身が入る。」
そう話しながら、二人は数十分走りこんだ。そして、水分補給の後にウェートトレーニングを始める。
「そういえばさ、真樹。」
「何だ?」
「杜夫の写真部も忙しいみたいよ。」
「聞いた。コンクールがどうのとか言ってたな。」
「それもそうだし、木下先輩が千葉芸大の入試受けるみたい。」
「ん?ああ、前に見た杜夫の集合写真に写ってたメガネの女の先輩か。」
慶も真樹も木下と直接の関わりはないが、杜夫に写真を見せてもらったことはある。
「受験かぁ。僕たちも来年受験だけど、どうしよう?まだどこの大学行こうか決めてないよ。」
慶は不安げにそう言った。そんな彼女に真樹が真顔でいう。
「オニィが次の大会で活躍すれば、陸上強い大学から声かかるかもしれないだろ?」
「そうかもしれないけどね…。ま、いいや。今はお互い、大会で結果残すことに集中しようよ。」
「そうだ。それでこそオニィだ。」
そんな話をしながら、真樹と慶はトレーニングに励み、大会に向けての準備を進めていったのだった。
各人が、それぞれの目標に向けて努力をしている中、ある所では不穏な動きもあった。
「くそっ。あいつめ…。」
暗い部屋で一人、何者かがそう呟いた。デスクの上のパソコンには電源が入っており、少女はそれを見ながら拳をテーブルの上に叩きつける。
「どこまでこっちの邪魔をすれば気が済むんだ。」
その何者かは、特定の誰かに強い恨みを抱いている様だった。そして、ふと不敵な笑みを浮かべながら言った。
「邪魔してやる。何もかもあんたの思い通りになると思うな。」
その何者かは、悪意の籠った表情でそう決意したのだった。
こんにちわ。
受験シーズンなので、少し受験要素を作品に入れてみました。
次回もお楽しみに!




