第217話 この女、全部食います
こんばんわ!
久々に夜間に投稿します。
12月に入ると、授業もほとんど期末テスト対策になる。各部活動も活動を停止し、生徒達も授業が終われば速やかに帰宅してテスト勉強をしていた。無論、真樹達もだ。週が明け、いつも通りに登校する真樹。成田駅に改札に着くと、いつも通り慶が声を掛けてきた。
「おはよう、真樹!」
「オニィか。おはよ!」
いつも通り、二人並んで改札を出て学校へ向かう。そんな時、慶は少し申し訳なさそうに言った。
「真樹。その…昨日はごめんね。結果的に呼び出す形になっちゃって。」
「気にすんなよ。友達が困ってんだ。話ぐらい聞くさ。」
優しくそう言った真樹に慶は少し複雑そうな表情で聞いた。
「でも…その大野さんだっけ?いつ考えても良く分からないよ。同級生待ち構えて、所構わず食べ物を強奪するって。」
「いわゆる食い尽くし系ってやつかもな。まぁ、俺も理解できないし理解したくもないけど。」
「とにかく、大神さんと津田さんが可哀想で仕方なかったよ。」
「その前日には宮下が被害に遭っている。う~ん、関わらない方がよさそうだな。」
「そうだね。」
そんな話をしながら二人は学校に到着したのだった。
学校到着後、真樹と慶はホームルーム前に前日あったことを杜夫、美緒、沙倫に話していた。
「なんだよそれ…やばすぎるだろ…。」
と杜夫はドン引きしていた。
「いや、マジで無い。私なら怒って摘まみ出す!」
と呆れ顔の美緒。
「やだぁ~そんなの。みんな可哀想。」
露骨に嫌そうな表情を浮かべた沙倫だった。そして、真樹が言う。
「とりあえず、その大野とかいう1年の前で食べ物の話をしたり、何か食べるのは危険だというのが分った。学年は違うけど、気を付けた方がいい。」
そう忠告した真樹。更に慶も続く。
「僕も、最初はびっくりしたけど、パスタ取られたこと思い出したらなんだかイライラしてきたんだよね。こんな事、許されちゃだめだよ。」
慶は怒り心頭だった。そんな時、杜夫がふと言った。
「つーか、その大野とかいう奴はどうやって宮下や大神が飯を食いに行くって情報を手に入れたんだよ?」
呼んでもいないのに突然現れた事を考えれば当然の疑問だった。美緒もそれに関しては恐怖心を抱いていた。
「何か、怖いんだけど…。それよりも盗み食いが無理。昔、シュークリーム妹に取られてケンカしたこともあるし。」
そういう美緒に続き、沙倫も難しい表情で言った。
「宮下さんには本郷君がいるから大丈夫かもしれないけど…他にも被害者が大勢いるなら気の毒よね。」
真樹達から見ても、やはり大野の行動は常軌を逸しているように見えていた。腑に落ちない気持ちのままだったが、この日も1日は始まっていく。
その日の昼休み。
「腹減った…。武司、ジュース買いに行こうぜ!」
「おう、今行くわ!」
B組の教室では、午前の授業が終わって伸治が武司を誘っていた。教室を出てC組の教室に差し掛かった途端、中では異様な光景が広がっていた。
「はい、あ~ん!」
「パクッ!」
裕也が巨大な重箱から唐揚げを箸で掴み、女子生徒の口に運んでいた。その女子生徒とは、何故か2年の教室にいた大野だった。
「美味しい?」
「美味しい、美味しいです!裕也先輩の唐揚げ、最高です!」
「うん、俺も花子ちゃんが美味しそうに食べる所見てると幸せになってくるよ!いっぱい食べていいからね!」
「嬉しい!私、食べるの大好きなんですぅ!」
そんな光景を見て、周囲の女子は羨ましそうにしていた。
「いいなぁ!」
「私も裕也君にあ~んってされたい!」
「私はあ~んってしたい!」
「裕也君、私とおかず交換しよ!」
様々な声が飛び交う中、裕也は優しく言った。
「うん、いいよ!みんなで食べよ!その方が美味しいし!」
それを聞いてクラス内の女子たちから黄色い歓声が沸き上がる。そして、裕也の周りにはあっという間に大勢の女子たちが集まった。その光景を外から見ていた伸治と武司は冷めた表情で話した。
「おい、あれこの間本郷が話していた大野じゃないか?」
「ホントだ。タルト横取りしていた。」
「大和田に餌付けされてる。」
「行くぞ、伸治。関わるとやばい気配がする。」
「そ、そうだな。」
伸治と武司の二人はそう言って、足早に自動販売機の所に向かうのだった。
一方その頃、1年A組の教室では、宮下をはじめチアリーディング部の1年生仲良し4人組が何やらヒソヒソと話していた。
「いい?絶対に大野さんの前でご飯やスイーツの話をしないこと!さもないと、この間の私みたいに大変なことになるから!」
宮下は他のメンバーに強くそう言い聞かせた。それを聞いた他のメンバーも顔を青ざめながらコクコクと頷いた。
「わかったわ。」
「そりゃ当然。」
「非常識すぎる。」
やはり、大野の味方はここにはいなかった。そして、前日被害に遭った大神と津田も吹奏楽部で仲がいい他の同級生たちを呼んで昨日の事を愚痴っていた。
「せっかく鬼越先輩も誘って、美味しいパスタ食べれると思ったのに…!」
「全部台無し!マジで腹立つし、先輩にも申し訳ないわ!」
2人の話を聞いた他の吹奏楽部1年達は、完全にドン引きしている。
「やだぁ~酷い。」
「災難だったね。」
「マジで無理。」
こうして、大野は宮下や大神といった同級生の被害者達から、やばい人或いは要注意人物扱いされてしまった。しかし、各人が警告した所で事件が収まる訳ではなかったのだった。
こんばんわ。
さぁ、まだまだ事件は起こりますが果たしてどうなるのか?
次回もお楽しみに!




