第185話 その名は早紀
こんにちわ!
4月最後の投稿です。
真樹の目の前では、現在異様な光景が広がっていた。帰宅すると、祖父母である正三と多恵が見覚えのある女性と口論になっていたのだった。そして、真樹が恐る恐る近づいてみた結果…。
「母さん…。」
その正体はかつて真樹と彼の父を捨てて逃げた母親だったのだった。女性は真樹を見るなり、笑顔で近づいてくる。
「やっぱり真樹だ!久しぶり、大きくなったわね!」
そう表情を輝かせた女性。彼女の名前は杉田(旧姓湯川)早紀。真樹の実の母親である。真樹が小学校1年生の時に離婚して家を出たあと、別の男性と再婚して現在に至る。そんな彼女を真樹は訝しげな表情で睨みながら言った。
「今更何しに来たんだよ?」
「つれないわねぇ…。せっかく久々に会えたのに!」
真樹は心底迷惑そうだったが、早紀は全く悪びれた様子はない。そして、正三が怒りながら再び早紀に詰め寄る。
「近寄るな!真樹はうちの大事な孫なんだ!あんたみたいに家族を平気で捨てるような奴に会わせる義理はない!」
そして、多恵も続く。
「そうよ!あんたに捨てられた後、この子がどんなに辛い思いをしたかも知らないで!よくそんな平気な顔で出てこれたもんだね!」
二人が怒り心頭なのに対し、等の早紀には全く響いている様子はなかった。
「だからぁ、それは申し訳無かったって言ってるでしょ!あの時だって、私もまだ若かったし…。」
と分かりやすい言い訳をしていた。そんな様子を見た真樹は、溜息混じりで言った。
「爺ちゃん、婆ちゃん。後は俺が相手する。これ以上構うことないよ。」
真樹はそう言って正三と多恵の二人を家に戻し、早紀と二人きりになった。
「フフフ…真樹と2人!久々に親子でゆっくり話せるわね。」
「場所を変えるぞ。」
浮かれる早紀に対し真樹は面倒臭そうにそう言いながら移動したのだった。
所変わって、2人は近所のカフェにやってきた。
「しかし、あんたも変わったわねぇ。昔はコロコロ太ってたのに、今じゃこんなに筋肉質になって。」
「…。」
「進学校に入れて、甲子園にも行くなんて流石私の息子!小さい頃はアレだったけど、あんたは遅咲きタイプ見たいだったのね!」
「…それで、何の用だよ?」
一方的に楽しそうに話続ける早紀に対し、真樹はイライラしながらそう問い詰めた。しかし、早紀は能天気だった。
「まぁまぁ、そんなに急かさないで!せっかくの親子の再開なんだから、ゆっくりティータイムでも楽しもう!」
「こっちだって暇じゃないんだ。大した事じゃないなら帰るぞ!」
そう真樹にキツく言われた早紀は少しがっかりしながら言った。
「せっかく会えたのに…まぁいいわ!ねぇ、真樹。あんた、私の息子として戻ってきてくれない?」
「は…?」
あまりに突然の事に、真樹はそう返すしかなかった。
こんにちわ!
次回は5月初頭に連載する予定です。
お楽しみに!




