第138話 2年目の2学期
こんにちわ!
2年生編も中盤です!
大谷津学院は2学期を控えていた。しかし、そんな時に慌ただしかったのが理事長室で話している大谷津学院の理事長と校長である。
「しかし、困ったものですな。甲子園出場で我が校にバッシングが来るなんて。」
「理事長が頭を抱える事なんて無いですよ。全てあの湯川という生徒が空気を読まずにホームランを打ったのが悪いんですから。」
実は真樹のサヨナラホームランで洛陽に勝利後、スタンドでの暴動だけでなく大谷津学院にも若い女性を中心に苦情の電話やメールと言った嫌がらせ行為が相次いでいた。その事に頭を悩ませていた理事長だったが、校長はその責任をすべて真樹に擦り付けようとしていたのだった。
「にしても、その湯川という男子生徒が本校に来てから嫌な事ばかりだ。留学生問題や立てこもり事件等、考えるだけで頭が痛くなる。」
「成績や素行不良なら即刻退学にしたいんですけどねぇ…。学年トップに加えて甲子園初出場の立役者じゃぁ、下手に切った所で火に油に注ぐだけなんですよねぇ。」
「困りましたなぁ。」
「ホント。厄介なのがうちに来てしまいました。」
そんな事を話しながら、校長と理事長は真樹をどうにかしようとしたが、結局策など思いつかず、時間だけが過ぎていった。
そして、9月1日。この日は2学期初日である。真樹はいつも通りに起床して、朝食を済ませてから制服に着替えて家を出る。そして、いつも通りの電車に乗って成田駅に到着した。改札を出ると…。
「おはよう、真樹!」
「おう!おはよう、オニィ!」
いつものように、慶が真樹に話しかけてきた。二人並んで駅を出て、話しながら学校へ向かう。
「そう言えばオニィ、今月大会だろ?大丈夫なのか?」
「大丈夫だよ…って言いたいところだけど油断は禁物!でも、勝って国体に出たいな!」
「俺はオニィを信じよう。お前は俺が甲子園出た時も味方でいてくれたしな!」
「ありがとう真樹!僕、絶対に負けないからね!」
そんな事を話しているうちに、二人は学校に到着した。
真樹と慶が教室に入ると、先に到着していた女子生徒達が怒りながら詰め寄ってきた。
「湯川!お前のせいで私達までバッシングされたのよ!どうしてくれんの?」
「さっさと負けちゃえばよかったのに、余計なことしやがって!」
「お前みたいなKY(空気が読めないの略語)野郎は二度と学校くんな!」
「死ね、ボケカス!」
いつにも増して、女子生徒達は真樹に悪口を浴びせていた。どうやら真樹がホームランを打った事によって、他の大谷津学院の生徒にも誹謗中傷があったようだ。だが、真樹はそんな女子達に耳をかさず、溜息交じりで言い返す。
「新学期早々、とんだ八つ当たりだな。俺に文句言っても仕方ないし、怒りたきゃバッシングした奴に怒れよ。」
「あんたねぇ…責任逃れなんてサイテー!だから女子に嫌われんのよ!」
あまりにもひどい言い様に、慶も目を吊り上げながら怒った。
「ちょっと!酷いのはどっち?真樹は何も悪いことしてないのに、そんなこと言う方が最低だと思うよ!」
「はぁ?鬼越さんはやっぱりこいつの味方なの?いいわよねぇ…。陸上部のエースはいい子ちゃんぶる余裕があって!」
「なっ!」
これにはさすがの慶もカチンときていた。そして、更に最悪な刺客が現れた。
「どうしたの?何やら騒がしいと思ったら、やっぱり湯川が問題起こしてたんだね。」
そう、学校一イケメンでサッカー部の有望選手である大和田裕也だった。裕也はA組に顔を出したかと思いきや、真樹を責める女子達に加勢するかのように見下した表情でマウントを取り始める。そして、彼が現れた瞬間に大勢の女子達が彼の元に駆け寄った。
「裕也君だ!助けて、湯川のせいで私たち困ってるの!」
「こいつが空気読まないせいで、私達まで悪者扱いされたー!」
「本当に最低!裕也君とは大違い!」
その話を聞いた裕也は更につけ上がった。
「うわー、やっぱりお前って女子に嫌がらせをする天才だな!甲子園出たお陰で、褒められるどころか更に嫌われるとかウケる!やっぱりお前って生きてる価値無いんじゃないの?」
「うるさいよ。俺のことより、お前は自分のサッカー部の心配しろよ。関東体会近いのに、余裕ぶってる場合か?」
真樹は呆れながら裕也にそう言った。裕也のサッカー部も県予選を突破し、関東大会を控えていた。因みにサッカー部も野球部と同様に共学化と同時に創設された部であり、今の所最高成績は裕也加入の1年前に記録した関東大会のベスト16である。因みに去年は県大会で準優勝したものの、関東大会では初戦敗退している。
「はっ!まぐれで甲子園出た分際で俺に説教すんなよ、クズが!俺がいれば全国大会なんて楽勝!U-18の代表候補にもなっているこの大和田裕也様を舐めてんじゃねえぞ!」
走自信満々に言い放つ裕也に周りの女子達は黄色い歓声を上げた。
「さすが裕也君!素敵!」
「絶対、全国行ってね!」
「次の試合も応援しにいくから!」
「頑張れー、裕也君!」
女子達からの歓声を受けた裕也は満足げな表情で、他の女子と楽しそうに話しながら自分の教室に戻って行った。呆れて物も言えない真樹と慶の後ろで、不機嫌そうな声が聞こえた。
「はぁ…新学期早々何なの?話にならないわ、あいつ。」
二人が振り向くと、後ろに怒った表情でそう発言した美緒がいた。そして、同じタイミングで教室に入ってきた杜夫と沙崙も裕也達の発言に怒り心頭だった。
「マジでふざけんなよな、大和田の奴!真樹達の頑張りを何だと思ってるんだ!」
「私、大和田君だけは絶対に許せなくなったわ!あいつこそ地獄に落ちればいいのに!」
顔を真っ赤にする3人に真樹は落ち着いた表情で言った。
「やめとけよ。あいつの為に怒ることほど無駄な時間はない。ほっとけ、ほっとけ。どうせ調子に乗れるのは今だけなんだから。」
「で、でもよ…。ウザすぎんだろ、大和田。」
「顔だけイケメンって、ああ言う奴のこと言うのね。新しい日本語を覚えたわ!」
杜夫と沙崙はやっぱり裕也の事が許せなかった。真樹は更に二人を宥めるように言う。
「まぁ、安心しろ!俺は間違ってないって言える自信はあるし、これからも堂々と頑張るつもりだ。それより、オニィにことを応援しよう!」
「ええっ、僕?」
慶が裏返った声で言う。
「オニィだって全国出場かかってんだから、今度は俺が応援する側だ。忙しいのに甲子園来てくれた恩もあるしな。」
「い、いや…。それは友達が出てるんだから当然だよ!でも…ありがとう!頑張るね!」
慶は恥ずかしそうにそう言った。杜夫と沙崙も激励を送る。
「頑張れよ!我らがスプリンター!」
「慶の走り、期待してるからね!」
その後ろで、美緒が自分を指差しながら言った。
「ちょっと―、こっちにもバレー部で全国狙ってる人がいるんですけどー?」
「ああ、菅野もそうだったな。ごめん、忘れてた!」
「もう!甲子園であんたの試合見に行ったでしょ!失礼ね!」
さらっとそう言った真樹に美緒は頬を膨らませながら自分の席に行ってしまった。こうして、真樹達2年A組の二学期は険悪ムードで幕を開けたのだった。
こんにちわ!
裕也君を久々に登場させました。
2学期も始まり、これからどうなるのか?
次回をお楽しみに!




