第128話 大暴動の後で…。
こんにちわ!
前回大騒動が起こりましたが、どうなってしまうのか?
甲子園球場では一回戦第3試合、京都の洛陽高校と真樹達の大谷津学院の対戦が行われていた。試合は序盤から洛陽がリードし、エース三条が完封目前まで来ていた。しかし、その後大どんでん返しが起きたのだった。9回裏の大谷津学院の攻撃、ツーアウト1,2塁の場面で打席が回ってきた真樹は、三条の懇親のストレートを振り抜いてバックスクリーンにサヨナラホームランを打ったのだった。大谷津学院の甲子園初勝利で歓喜に沸きたい所だったが、予想外のことが起きたのだ。三条目当てで球場を訪れた大勢の女性ファンがサヨナラホームランの真樹に腹を立てて暴徒化したのだった。口汚いヤジと共に真樹に物を投げ込んできており、最早収拾がつかなくなっている。
「ふざけんな、クソ野郎!」
「お前のホームラン見に来たんじゃないのよ!」
「2回戦は棄権しろ!」
「お前の家に火付けるから、覚悟しなさいよね!」
女性ファン達は真樹への暴言と物の投げ込みをやめようとしない。あまりにひどい有様に、真樹もとうとう堪忍袋の緒が切れてしまった。
「うるさい、黙れ!マナー違反だぞ!お前らみたいな民度の欠片もない奴に言われたくないわ!そんなに不満なら、お前らが帰れよ!」
そんな激こうした真樹を関屋と沙崙が慌てて止めに入る。
「真樹、落ち着け。お前が腹を立ててもしょうがないだろ!」
「そうよ、あんな奴らほっといて速く逃げましょう!このままじゃ怪我しちゃうわ!」
真樹の手を引っ張ってベンチに引き揚げようとする関屋と沙崙。そんな時、球場スタッフが慌てた様子で声を上げる。
「お、大谷津学院の皆さん!早くこちらへ!早く、早く!」
スタッフの指示に従い、真樹達大谷津ナインは大急ぎでベンチ裏に引き揚げて避難したのだった。
一方、慶達がいる応援席も大荒れだった。大谷津ナインを応援に来ていた彼女たちの席の周囲でも、三条目当ての女性ファンが物を投げ込みながら罵声を浴びせている。その場にいた全員が、訳の分からないという表情をしていた。
「お、おい。何なんだこれ?何でこうなるんだよ?!」
杜夫はその様子を見て完全に動揺している。慶は驚きと同時に呆れた様子で絶句していた。
「こ、こんなの…酷すぎるよ。真樹はズルしたわけでもないのにどうしてこんな仕打ちされないといけないの?」
一方美緒はその様子に腹を立てて女性ファンに声を上げ、立石と飯田に宥められていた。
「やめなさーい!あんた達、自分が何してるか分かってるの?!みっともないわよ!」
「菅野さん、落ち着いて!あなたが怒っても意味ないわ!」
「気持ちは分かる!でも、ここは一旦退却しよう!」
そして、吹奏楽部とチアリーディング部の1年はすっかり怯え切っていた。大神と宮下は顔を真っ青にしながら呟く。
「な、何でこうなるの?」
「やだ、怖い…。」
そんな彼女達に、数名の球場スタッフがやってきて声をかけた。
「大谷津学院の応援の方ですよね?ここは危険なので急いで避難して下さい!我々が誘導します!」
慶達はスタッフ達に守られるように席を立ち、逃げるように球場を後にしたのだった。
騒ぎの後、真樹達大谷津学院野球部と慶達応援組は、野球部が宿泊しているホテルのロビーに避難していた。あのような騒ぎが起こってしまった以上、本来試合後に行われる監督や選手へのインタビューは出来ず、全員速やかに球場を後にしていた。特に野球部員達は試合に加えて、あのような騒ぎが起こってしまい、すっかり疲れ切っていた。
「ああ…一体何なんだよ、あれ?」
「何で真樹がサヨナラ打っただけであんなに怒るんだよ?酷くね?」
武司と伸治は暴徒化した女性ファン達に不満を露わにした。そして真樹は、自分のせいで他の部員や応援に来ていた慶達を危ない目にあわせてしまったのと、頭にきて言い返してしまった事を申し訳なく思い、頭を下げながら言った。
「みんな。勝ちにいった結果、こんな大騒動を起こして、その上カッとなり過ぎたのはさすがに大人げなかった。ごめん。」
真樹はそう言ったものの、当然ながら真樹を責める者はいない。関屋、堀切、大橋は微笑みながら真樹を慰めた。
「お前が気にすることはないもない!お陰でうちが勝てたんだから!」
「そうだぞ、真樹!むしろお前が怒るのは当然だ。俺だって腹立たしいわ!」
「気にすんなよ、真樹。今日のホームラン、カッコよかったぞ!」
そして、美緒、杜夫、立石も真樹に声をかける。
「湯川君。あなたは謝る必要なんて無いわ。あんなのに腹を立てるだけ時間の無駄よ!」
「安心しろ、真樹!どんなことがあろうと、俺はお前の味方だ!いや、親友だ!」
「先生も正直、あれはないと思うわ。また試合あるんだから、胸張って頑張んなさい!」
そして、慶も真樹の前にずいっ出てきて言った。
「真樹!僕、真樹がもっと活躍するの見たいよ!推してる選手が打たれたからって、あんな暴動起こすなんて、同じ女として…いや、人間として恥ずかしいよ!あいつらにこそ、ふざけんなって言ってやりたいよ!」
「オニィ…。みんな。ありがとな!」
真樹は微笑みながらみんなに感謝の意を述べた。そして、沙崙は真樹達野球部員を励ますように声をかける。
「みんな。色々大変だったけどお疲れ様!正直今日のことは腹だたしいけど、それ以上に打ちが勝ったことは嬉しいわ。今日はゆっくり休んで、2回戦に備えましょう!」
沙崙の言葉に関屋が頷きながら言った。
「そうだ。色々あったが、みんな本当によくやった!次も試合あるし、頑張ろう!」
関屋の言葉に、部員達は安どの表情を浮かべた。そして、吹奏楽部の大神とチア部の宮下も続けた。
「皆さん。次回も応援させていただきますんで、宜しくお願いします!」
「正直、あの騒ぎの時は怖かったですけど、みんなの言葉を聞いてたら気にするのがバカらしくなりました!次もお互い頑張りましょう!」
飯田の方も頷きながら言った。
「僕も、正直今日のことは許せませんが、まずは大谷津学院の勝利おめでとうございます!最後まで見守りますんで、是非頑張って下さい!」
全員、今日の騒ぎの事を気にせず、次の試合に向けてプラスに考えることにした。その後、野球部一同はホテルの部屋に戻り、慶達もそれぞれの宿泊先へ移動したのだった。
その夜。昼よりほとぼりが冷めた所で野球部が宿泊しているホテルに報道関係者が数名音ずれていた。試合後にできなかったインタビューをする為だ。現在、関屋と真樹が呼ばれてロビーでインタビューを受けている。
「まずは監督、改めまして甲子園初勝利おめでとうございます。」
「ありがとうございます。」
「今回の選手たちの活躍、いかがでしたか?」
「素晴らしかったです。最初劣勢だったのに、最後にひっくり返してくれて嬉しい限りですね。」
「あのような騒ぎが起きてしまいましたが、選手にはどのように声をかけましたか?」
「みんな思ったより気にしていませんでしたからね。2回戦もありますし、プラスに考えていこうと伝えました。」
「ありがとうございました。大谷津学院、関谷監督のインタビューでした。」
関屋のインタビューはそんな感じで行われた。その後、真樹もインタビューされる。
「湯川選手、見事なサヨナラホームランでした。」
「ありがとうございます。」
「最後、どのような思いで打席に立ったのですか?」
「先輩達が作ってくれたチャンスを無駄にしたくない…。それだけ考えていました。」
「予想外の騒動もありましたが、現在のご心境は…?」
その質問に対し、真樹は一息ついてから答えた。
「もう気にしてないですね。僕達は、あんな野次には負けません!絶対2回戦も勝ち抜いて見せます!」
そう力強く言い終えた所で、真樹へのインタビューは終わったのだった。
こんにちわ!
真樹達にとっては苦い1勝でしたが、2回戦はどうなるのか?
次回もお楽しみに!




