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真樹VS女子  作者: 東洋連合
Episode8 大波乱の甲子園
121/333

第120話 出発の日

こんにちわ!

今年最後の投稿です!

 大谷津学院野球部が今夏に出場する、夏の全国高校野球大会…もとい甲子園の開幕まであとわずかである。こうなると、各メディアではやはり甲子園に関するニュースがよく取り上げられる。この日の夜も、ある局のスポーツニュースで甲子園に関する特集を放送していた。

「続いては、夏の甲子園特集です。今年も、全国各地で予選を勝ち抜いた猛者達が出場する訳ですが、その中の注目校を取り上げていきたいと思います。」

「はい、こちらは初出場の千葉県代表、大谷津学院高校。6年前、女子校からの共学化と同時に創設された部なんですが、部員数も少ない中、見事に出場を決めました。取材VTR、ご覧ください。」

 女性アナウンサーがそう言うと、大谷津学院の紹介VTRが出ると共にナレーションが流れた。

『創設6年目の新鋭、そして部員数はわずかに17人。それでも、千葉県大会決勝では強豪、習志野商業を破って悲願の初出場!それは千葉県成田市にある、大谷津学院高校です。』

 ナレーションの後、学校の映像や部員たちの練習風景が流れた。そして、勿論関谷のインタビューも放送されている。

「監督。初出場と言うことですが、何か選手の皆さんに大事にして欲しいと思うことはございますか?」

「とにかく楽しむことです。経験したことのないような大舞台で戦う訳ですから、緊張することは避けられないかもしれません。でも、後悔するようなプレーだけはして欲しくないので、全力でやるようにと伝えてあります。」

「ありがとうございました。頑張って下さい。」

 そう言って映像はそこでおわり、スタジオに戻った。

「いやぁ、楽しみですね。甲子園で彼らがどんなプレーをするのか注目です。」

「練習中も和気藹々としてみなさん楽しそうでした。大谷津学院の皆さん、是非、頑張って下さい。」

 それから何校か紹介して、番組は終わった。いじめ問題や立てこもり事件といったマイナスな部分でしか取り上げられたことが無い大谷津学院だが、今回で明るいイメージがつくか注目されていたのだった。


 ある日の午前中。ここは、東京の飯田橋にあるオリエント通信のオフィスである。そう、ジャーナリストの飯田の職場だ。彼は先日、台湾出身の留学生で大谷津学院野球部のマネージャーを務めている沙崙の取材をしていた。今週のオリエントタイムズでその事を特集記事にするのだが、その原稿の最終確認をしていたのだった。

「よし、これならいいかな?」

 飯田は出来上がった原稿を課長の元に持っていった。

「課長、原稿できました!」

「おー、どれどれ?」

 課長は飯田から原稿を受け取り、チェックをする。一通り読み終えた後、課長は頷きながら飯田に微笑んだ。

「うん。いいじゃないか。このまま入稿して、発刊に移れ。」

「はい、分かりました。」

 そう言って飯田は原稿を持って発行作業に移行した。そして、心の中で微笑みながら呟いた。

(陳さん、本当に湯川君に会えてよかったね。スケジュールで甲子園に行けないのは残念だけど、心の底から大谷津学院を応援させてもらうよ。)

 その後、飯田はご機嫌な様子で仕事に打ち込んだのだった。


 ある日の朝。ここは真樹の家である。真樹は制服に身を包み、荷物を沢山持って玄関に立っていた。その様子を、祖父母である正三と多恵が優しく見守っていた。

「爺ちゃん、婆ちゃん。行ってきます!」

「頑張るんじゃぞ!」

「行ってらっしゃい、真樹!」

 そう、この日はいよいよ大谷津学院野球部が甲子園に出発する日だった。真樹は祖父母に微笑みながら出発の挨拶をする。

「爺ちゃん達がたくさんうちの試合見れるように、絶対に勝つから!」

「ああ。お前なら大丈夫!とにかく全力で試合に臨むのじゃ。それが一番大事だぞ!」

「きっと、天国のお父さんも喜んでるわ。怪我しないように、気をつけてね!」

「分かってる!じゃあ、行ってきまーす!」

 そう言って真樹は元気な様子で家を出た。今回は一度学校に集合し、そこから大会運営側が用意したバスに乗って大阪府内にある宿泊施設に向かうのだ。真樹は電車に乗り、最寄り駅で降りて学校に到着。そこには既に大型バスが一台止まっており、他の部員たちや見送りに来たであろう父兄たちが大勢集まっていた。

「おーい、みんなー!」

 真樹は手を振りながらそう叫び、部員たちと合流する。

「お―、真樹!」

「待ってたぞ!いよいよだな!」

 武司と伸治がご機嫌な様子で真樹とそんな話をする。すると、後ろからよく見知った人物達が現れた。

「おーい、真樹!」

「見送りに来たぜ!」

「あんな立ち、頑張んなさいよー!」

 やってきたのは慶、杜夫、美緒の3人だ。3人はご機嫌な様子で真樹達の所に近づいて話し始める。

「真樹、武司、伸治!みんな本当に頑張ってね!僕も当日応援に行くから!」

「みんなのベストプレーを俺のカメラがきっちり収めるからな!期待してろよ!」

「私が見に行くんだからね。みんな、みっともない試合見せるんじゃないわよ!」

「分かってるって!」

「絶対に勝つ!」

「俺たちを信じろ!」

 真樹、武司、伸治の3人はそう力強く言った。そして、その直後に真樹の担任である立石が校門から入ってきた。

「あ、先生!」

「おはようございます!」

 慶と美緒がぺこりと挨拶をする。立石はにこりと笑いながら一同に挨拶した。

「みんなおはよう。いよいよね…。先生ね、今すごく嬉しいし、すごく緊張してるの。頑張ってね!」

 立石がそう言った直後、今度は沙崙が駆け込んできて真樹達の所にやってきた。

「ごめん、みんな!緊張して眠れなくって、起きるの遅くなっちゃった!失礼、失礼。」

 それを見た慶と美緒は沙崙に抱きつきながら激励の言葉をかけた。

「沙崙ー!頑張るんだよ!気を付けていっておいで!」

「台湾から一人でやってきて、頑張ってるあなたを尊敬するわ!」

「謝々!慶、美緒!行ってくるわ!」

 そんなやり取りを真樹は微笑みだ様子で見ていた。すると、立石が真樹に声をかけた。

「湯川君。」

「何ですか、先生。」

「私、あなたの担任になれて良かったって思ったかも。」

「何でですか?」

「最初はね…こんなにクラスの女の子たちを敵に回して大丈夫かしらって思ったわ。私にも心を開いてくれないし。」

「はぁ…。」

「でも、あなたが勉強や部活、それ以外の人助けなんかも影でやっている事を知った時に、思ったの。あなたなら大丈夫って。」

「大したことしてないですよ。」

「謙遜することはないわ。とにかく、辛くても頑張れるあなたを尊敬したいの。あなたは…やればできる。だって…ヒック…学校の成績は勿論、部活でも甲子園行っちゃうんだもん。先生、感動しちゃったじゃない…ヒッ。」

 そう言う立石の目には涙が流れていた。それを見た真樹がさすがに動揺する。 

「ちょ、先生!何で泣いてるんですか?まだ試合してないですよ。」

 そんな真樹を武司と伸治がからかい始める。

「あー、真樹が立石先生泣かせた―!」

「いーけないんだ、いけないんだ!」

「お前達、あとで覚えておけ!」

 そんな感じで真樹達がじゃれ合っていると、女子生徒達が9人校門から入ってききた。真樹は面識が無かったが、野球部の1年である本郷や登戸達はすぐに気付いた。

「あれ、お前達。」

「来てくれたの?」

 現れたのは吹奏楽部1年の4人と、チアリーディング部1年の5人だった。お互い1年生同士ということもあり、彼らの中には彼女たちの中に面識がある者もいるようだ。到着すると、眼鏡をかけた吹奏楽部1年生と、サイドアップのチア部1年生が前に出てきて話し始めた。

「野球部の皆さん。私は1年C組、吹奏楽部の大神(おおがみ)(あい)です!」

「同じく、1年B組でチアリーディング部の宮下(みやした)郁美(いくみ)です。」

 二人がそれぞれの部の代表として挨拶をした。大神と宮下は更に続ける。

「まず、今回甲子園での応援をうちの部の先輩方がボイコットしてしまった事をお詫びさせて下さい!」

「本当に申し訳ありません。説得したのですが、顧問も向こうの味方ばかりで私たちの意見を聞いてはもらえませんでした。」

「でも、私達はやはりアルプススタンドで演奏しながらみなさんの活躍を見たい、という意見を曲げられませんでした。」

「だから、今回は私達9人で甲子園に遠征し、応援させて頂きますのでよろしくお願いします!」

「本郷君、千葉君、幕張君、登戸君も頑張るのよ!」

 大神と宮下はそれだけ言うと深々とお辞儀をした。それに対して、本郷達1年生だけでなく真樹達2年生や3年生も深々とお辞儀をして礼を述べた。そして、沙崙が点呼をとって関屋に報告した所で出発の時間が来た。

「よーし、みんないるな!じゃあ、バスに乗って出発だ!」

 関屋がそう言うと3年生から順番にバスに乗り始めた。真樹も黙ってバスに乗り、1年生と沙崙が乗り終えた所で関屋も乗り込み、出発する。

「じゃあ、みんな!いよいよだ!もう後戻りはできないから、悔い無く頑張っていこう。それでは、お願いします。」

 関屋は部員たちを激励した後、運転手に声をかけてバスは出発した。大谷津学院の、夏の甲子園が、今始まろうとしているのだ。

こんにちわ!

次回は年明け後に行います!

それではみなさん、よいお年を!

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― 新着の感想 ―
[一言] この一年生たちには結構好感度アップですね。 ちゃんと大局観を持っているため、将来は偏見に囚われない立派な人間になれます。
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