第114話 地獄からの解放
こんにちわ!
この章はこれでラストです!
大谷津学院は凶器を持った台田に侵入を許し、更には真樹が校内に残ってしまった事によって緊迫した状態が続いていたが、その状況もようやく終わりを迎えた。逆上した台田が真樹の作戦で外に連れ出され、そこを警察官に取り押さえられたのだった。真樹の方も無事に無傷で保護され、心配していた慶達と合流したのだった。慶は半分怒りながら真樹の元に来る。
「もう、真樹ったら!また危ない手を使って!これで殺されたら元の子もないでしょ!」
「心配かけて悪かったって。でも、こうでもしなけりゃ誰もあいつを止められなかっただろ。」
「そうかもしれないけど…とにかく無事に帰ってきてくれてよかった。」
慶は涙目になりながら真樹にそう言った。そして、杜夫、伸治、武司も安堵の表情を浮かべて駆け寄ってきた。
「真樹ー!よかった、お前なら必ず帰って来てくれると信じていたぞ!」
「ったく。無茶しやがって。まぁ、お前らしくていいけど。」
「どうやってあの女と戦ったんだ?あとで教えてくれよ!」
そして、沙崙も心配そうな表情で真樹に駆け寄ってくる。
「真樹!心配したんだから!本当に、あんたって何するか分かんないわね!」
「すまんすまん。一応、それは褒め言葉として受け取っておくわ。」
一方、怒りの表情を浮かべている人物が2名いた。無論、学級委員長の美緒と担任教師の立石である。二人は鬼の形相で真樹の元にやってくると、目を吊り上げながら怒鳴り始めた。
「もう、湯川君ったら!何で毎回毎回勝手なことするの!」
「あなたって子は…あんまり無茶なことしないでって毎回先生言ってるでしょ!勝手にいなくなられて、どれだけ騒ぎになったと思ってるの?」
「はいはい、すみませんでした。今度は心配かけない程度に仕留められるようにします。」
とても反省しているようには聞こえなかったが、真樹は頭を下げながらそう言った。そして、台田の元彼である丈が申し訳なさそうに真樹の所にやってきた。
「すみませんでした、先輩!自分が、もっとしっかりあいつを制御できたら先輩を危険な目に合わせなくて済んだのに!」
「気にするな、本郷。俺が勝手にやった事だ。それに、お前がこれ以上被害者になるのは俺としても嫌だったからな。」
「先輩…。」
微笑みながらそう言う真樹を、何と見えない表情で丈は見ていた。すると、学校に来ていた警察官が真樹の所に近づいてきた。
「湯川真樹君だね。大変な状況の所申し訳ないんだけど、調書を取りたいから警察まで来てくれないかな?」
「分かりました。じゃあ、みんな。ちょっと言って来る。」
真樹はそう言ってパトカーに乗せられ、警察署へいてしまった。一方、真樹が無傷で生還した事を知った他の女子生徒達は不満たらたらだった。
「何で無事なのよ?」
「そうよね、そのまま殺されてればよかったのに。」
「また地獄の日々が…。」
「最悪…。」
好き勝手言う女子生徒達。そして、事件の影響で大達学院はそのまま休校になり、生徒達は全員帰宅したのだった。
その日の夕方。警察署での事情聴取を終えた真樹は、帰宅して家でテレビを見ていた。ニュース番組だったのだが、勿論内容は台田が起こした事件である。
「本日午前10時頃、千葉県成田市の高校にハンマーを持った女が侵入し、立てこもった事件について新たな情報が入ってきました。犯人は県内に住む16歳の少女で、仮病で学校を欠席し、犯行に及んだとのことです。調べに対し、容疑者の少女は『彼氏に振られて悲しかった。だから、そのきっかけを作った男と彼氏を殺して自分も死ぬつもりだった。』と容疑を認めており、警察は更なる調査及び容疑者の精神鑑定も行うとのことです。」
アナウンサーがそこまで言った所で、真樹の祖父母である正三と多恵が口を開いた。
「とにもかくにも、お前が無事でよかったよ真樹。お前から話を聞いた時、心臓が止まるかと思ったわい。」
「本当に、よかったわ。もし、あなたに何かあったら死んだ息子…あんたのお父さんに顔向けできないわ。」
「爺ちゃん、婆ちゃん。心配かけてごめん。」
真樹は二人にそう謝った。亡き父の事を考えると、真樹は自分の命を余る無碍にできない、そう改めて感じたのだった。
その後。台田は逮捕されてから容疑を認めているものの、「自分は悪くない、そうさせたあいつら(真樹や丈)が悪いから一緒に逮捕して欲しい」と相変わらず無茶苦茶な事を言って奇声を発しながら暴れたのだった。その後、台田の両親が会見を開いて謝罪し、彼女が丈達から踏み倒したお金の返金をすることとなった。そして台田は、建造物侵入の他に恐喝の罪にまで問われ、少年院へと移送されることとなったのだった。一方、ストレスの元となった台田から解放された丈は、すっかり元気を取り戻していた。
「よーし、本郷!もう一本いくぞ!」
「はい、お願いします!」
この日、野球部の練習が行われていたのだが、関屋がノックで打った球を丈は見事にダイビングキャッチした。精神的苦痛が無くなり、今まで通りのプレーができるようになっている。
「よかったわね。真樹の捨て身が無駄にならなくて。」
ノックの順番を待っていた真樹に、沙崙がそう話しかけてきた。真樹は真顔のまま沙崙に言葉を返す。
「当然だ。でも、俺は捨て身だなんて思っていない。ただ単に、悪には制裁を下したいってだけだ。この間も、これからもな。」
幼少期から酷い目にあわされ続けた真樹だからこそ、目の前の悪行を見過ごせなかったのだった。元気が戻った丈を見て安心した真樹は、ノックの順番が回ってきたのでそのままポジションに付き、練習を始めた。かくして、彼の体を張った作戦で大谷津学院はまた平和を取り戻したのだった。
こんにちわ。
次回から新エピソードが始まります!
どのような話になるのかは、お楽しみです!




