第113話 我儘はおしまい
おはようございます!
本章もいよいよ佳境です!
台田みどりが大谷津学院を襲撃してから、既に1時間以上が経過した。真樹だけが避難せずに校舎内に残り、直接台田を止めようとしたのだが、当の彼女は真樹の言葉など全く耳に入れず、何とハンマーだけでなく包丁まで隠し持っていたのだ。真樹もこれは少し予想外だったようで、冷や汗をかきながらその場から走って逃げだした。そして、台田の方は鬼の形相で執念深く追いかけてくる。
「待て、湯川真樹!」
「嫌だね!」
「お前みたいな罪人は大人しく殺されろ!」
「お前の方が犯罪だぞ!」
「うるさい、あんたを片付けてから丈も始末するから!」
「滅茶苦茶なこと言ってんじゃねぇ!」
あちらに逃げ、こちらに逃げ、必死に走り続ける真樹を台田はしつこく追いかけてくる。真樹の方も逃げる以外のことが何も出来ず、次第に息切れするようになってきた。
(このままじゃまずいな、そろそろ止めを刺すか。)
真樹はそう心の中で呟く。因みに、大谷津学院の構造はと言うと、4階建ての建物で1年生が4階、2年生が3階、3年生が2階を使用する。勿論真樹は普段は3階にいて、避難する時は自分が列の最後尾であることを利用してこっそり教室の隅に隠れていた。そして、台田が3階に上がってくるのを待ち伏せて、説得を試みたのだった。結局失敗して逃げるしかなかったのだが、先程まで3階に留まって各教室内に逃げ込んだりしていた真樹だったが、今度は階段を使って下の階に降り始めた。
「往生際が悪いそ、湯川真樹!大人しく私に殺されろ!」
「どこまでも滅茶苦茶な奴だな、お前は。」
そう言いながら、2階に逃げ込んだ真樹は先ほどと同様各教室に逃げ込んで、刃物を振りまわす台田に対して椅子や黒板消しなどを投げながら応戦。一見ただ逃げ回っているようにしか見えないが、実は真樹には考えがあった。
(台田は部活動もしていないし、ここ最近は引きこもってばかりで運動してないから体力はあまりないはず。それに、こいつは頭に血が上ると周りが見えなくなるから今自分が何階にいるかも分からない筈だ。)
真樹の予想通り、台田の方は完全に我を忘れたかのように包丁を持って真樹を追いかけまわし、一方で息切れが激しくなり、真樹との距離も開き始めた。そんな台田を真樹が再び挑発する。
「どうした?もう終わりか?これだけでかいこと言った割には、大したことない奴だな。」
「はぁ…はぁ…。殺す、絶対に殺す!」
台田はそう言うと再び真樹に向かって突進した。そして、真樹は全速力で階段を使って1階まで下りて行ったのだった。
一方、外では。
「いいか。犯人は若い女性とは言え、包丁を持っている。下手すれば人質の男子生徒が危ない。慎重に機を窺い、隙を見て突入だ!」
「「「了解!」」」
警察官の突入部隊が、真樹救出のために突入の準備をしていた。各隊員が心の準備を整えていた時…。
「ん?あれは…。」
隊長が昇降口から誰かが出てくるのを見た。汗をかいた男子生徒が、外に向かって走ってきたのだった。無論、その生徒は真樹だ。そして、その後すぐに包丁を持った女…もとい台田が息を切らしながら真樹の後を追いかけてくる。それを見た隊長は、すかさず隊員たちに指示を出す。
「各員、被害者と思われる少年を保護!犯人と思われる女もそのまま確保だ!」
「「「了解!」」」
隊員たちは一斉に動き出し、まずは真樹を保護。保護された真樹の所に、突入部隊の隊長が駆け寄ってくる。
「君、大丈夫か?怪我はないか?」
「ええ、何とか。」
「そうか。ならよかった。ひとまず、こちらに来なさい。」
「はい。」
隊長に付き添われ、警察関係者の待機場所に連れて行かれた真樹。一方、台田はと言うと警察官相手に包丁を振り回しながら喚き散らしている。
「こら、君!大人しくするんだ!」
「うるさい、お巡り!邪魔しないで!湯川と丈を殺して私も死ぬんだから!」
「バカな事を言うんじゃない!」
「いやぁぁ!」
警官たちを追い払おうとしいた台田だったが、勿論敵う筈がなくあっさり取り押さえられた。
「放してよ!あいつだけは許せないんだから!」
「はいはい、話は署でゆっくり聞かせてもらうから。」
必死の抵抗も空しく、台田は警察官に手錠をかけられてそのまま連行されてしまった。こうして、突如学校を襲った物騒な事件は終わりを迎えたのだった。
おはようございます!
何とか解決しましたね!
次回でこの章はラストです!
お楽しみに!




