第111話 真樹は人質?
こんにちわ!
今月初投稿です!
朝の大谷津学院では只今大騒ぎの真っ最中だ。なんと、飛び道具を持った台田が学校を襲撃して立てこもっているのだ。教職員と生徒達はすぐにグラウンドに避難したが、真樹だけは台田と共に校舎内に残っていた。
グラウンドは避難した教職員及び生徒達が埋め尽くしていた。しかし、2年A組のクラスは違う意味でざわついている。なんと、真樹だけがクラスメートたちと離れて姿が見えないことが分かったのだ。これを知った担任の立石はさすがに動揺を隠せない。
「そ、そんな。もう、湯川君ったらどこに行ったのよ?!」
そんな立石に対し、慶が言った。
「た、多分まだ校舎に残って襲撃犯にあっていると思います。犯人は見当がついているので直接戦うつもりです。」
慶の言葉に杜夫、美緒、沙崙は納得しつつも心配で仕方なかった。
「あ、あいつならやりかねないな。そんな事して本当に大丈夫なのか?」
「また無茶苦茶な事して!もう、許さないんだから!」
「真樹…どうかご無事で…!」
一方、他のクラスメートの女子達は心配するどころかむしろ喜んでいた。
「寧ろいいんじゃない?この際強盗に湯川を殺してもらえば!」
「そうよね。そうすれば学校が平和になるし!」
「私も湯川嫌い!」
「襲撃犯さーん!早く湯川を殺して下さーい!」
好き勝手言う女子生徒達を立石が一喝する。
「みんな、なんて不謹慎なこと言うの!一人の命がかかっているのよ!先生、嫌いな人ならだれでも死んでいいなんて教えた覚え無いわ!次そんなこと言ったら本当に許さないわよ!」
立石の怒鳴り声にさすがの女子生徒達も黙り込む。しかし、警察もまだ到着しておらず、事態はいまだに膠着状態だった。
一方、校舎内では真樹が台田と対峙していた。真樹を見た台田は手に持っていたハンマーをつきつけながら真樹に言い放った。
「そっちから出てきてくれてありがたいわ!あんたを殺して地獄送りにした後、私は丈と一緒に天国に行くから!」
「改めてみると、相変わらず滅茶苦茶な思考回路だなお前は。生憎だが本郷はすでに他の生徒たちと一緒に避難している。これ以上、本郷に被害を出すわけにはいかないぜ!」
真樹の方は冷静に、台田を軽蔑するようにそう言い放った。そんな真樹の言動に対し、台田の苛立ちは高まる一方だった。
「うるさい!何よ、人の恋愛を壊しておいて偉そうに!お前みたいな屑のせいで、私がどんなつらい思いしたか分かる?私の彼氏を…丈を返してよ!私は丈がいないとダメなんだから!」
支離滅裂なことを平然と言う台田に真樹はすっかり呆れかえってしまった。
「はぁ。滅茶苦茶すぎてこっちまで頭おかしくなりそうだよ。お前のワガママのせいで、本郷がどれだけ傷ついたか分かるか?大好きな野球のプレーにまで支障が出るくらい精神的に病んでたんだぞ。それだけ迷惑かけたのに罪悪感もなければ反省する気もない。お前の方がよっぽど人間の屑だ。」
今の状況に全く動じずに、逆に台田を挑発する真樹。台田の方はそんな真樹の挑発に乗ってしまい、逆上し始めた。
「もう許さない!あんたが何もかも奪った!あんたが私の人生を狂わせた!だから今ここで死刑にしてやる!私の心を傷つけた罪、死んで償え!」
そう言って台田はハンマーを振り上げた。一方の真樹は呆れた表情で台田に言う。
「分かったよ、殺せるもんなら殺してみろよ。だが、俺が死ぬ前に質問に答えろ。」
「何よ。」
「なぜそこまで本郷に拘る?なぜ考えもなしに金を使い、挙句の果てに人に借りて返さない?なぜそこまで誰かに依存しようとする?答えろ!」
真樹の質問に台田は長々と答え始めた。
「丈が特別だったからよ。私、昔から人付き合いが苦手で友達も全然できなかったし、みんなから冷たくされていたわ。だけど、丈だけは私に優しく接してくれた。教科書忘れた時も見せてくれたし、行事で同じ班になった時でも普通に話してくれた。そんなことしてくれるのは丈だけだった。お金だって丈にもっと好きいなってもらう為たくさん必要だったけど、自分の持ち金だけじゃ足りないから借りただけよ!丈にもお金を借りたけど、丈だって自分の彼女がもっとかわいくなってくれるなら、いくらでもつぎ込めるはずよ!それに返さないつもりなんて無いわ!就職していっぱい稼げるようになったら返すつもりだったのに、強奪とか恐喝なんて言うなんて酷い!最低!」
余りにも身勝手な言い分に真樹は返す言葉もなかったが、溜息交じりに言い捨てた。
「はぁ。もう、聞いてて頭痛くなりそう。お前みたいなのに好かれて本郷が可哀想だよ。」
真樹の言葉に台田の怒りは頂点に達した。
「もう怒った!まずはお前を殺して地獄に送ってやる!覚悟しろ!」
逆上した台田はハンマーを振り上げたまま真樹に突進して行ったのだった。
一方、その頃校舎の外は更にざわついていた。警察は到着し、更に報道陣まで来て現状をニュースとして中継している。そんな中、一人の生徒が羽交い絞めにされていた。
「やめろー、みどり!湯川先輩を放せー!」
「落ち着け丈!」
「お前が行った所で何ができるんだよ!」
丈は叫びながら校舎に入ろうとしていたが、同級生の千葉と登戸に止められていた。真樹が校舎に残っていることは瞬く間に全校生徒達に伝わり、丈は自分のせいで真樹を巻き込んでしまったと責任を感じて自ら止めようとしたのだった。
「うう、湯川先輩、すみません…。」
二人に宥められ、涙目で崩れ落ちる丈。真樹の安否が分からぬまま、今も尚現場には緊迫した状態が続いている。
こんにちわ!
真樹は果たして大丈夫なのか?
次回もお楽しみに!




