第105話 台田みどりという人物
おはようございます。
真樹お得意のフィールドワーク。
果たして成果は出るのか?
真樹は野球部の後輩である本郷丈を台田みどりから救うべく、遂に動き出した。まずは手がかりをつかむために、彼女が通う北下総高校を訪れ、聞き込み捜査をすることにした。そこで、電車内でよく見かけるアニメ好きな男子高校生二人組に出会ったのだが、同じ高校に通う彼らに真樹は聞き込みをする。
「はて、我らに聞きたいこと?」
「それはどのようなことなのだろうか?」
二人は首をかしげながら真樹に尋ねた。真樹は下校前に丈からもらった台田の写真をスマホの画面に映し出し、二人に見せた。
「この女を知っているか?あんたらの学校の1年生で台田みどりというんだが。」
二人は写真を見ると、少し間を置いてから答えた。
「勿論、知っておるぞ。」
「我が高はそれほど大きい学校ではないが故。」
「他学年の顔も覚えやすいときている。」
「だが、なぜそのような事を聞きに来たのだ?」
不思議そうな顔をしている二人に、真樹は説明を続けた。
「実は、うちの部活の後輩がこの女と付き合っていてな。だが、かなり困らされていてどんどん元気が無くなっている。俺は後輩を困らせる奴を許してはおけないと思って懲らしめたいんだが、その為に手掛かりが必要だ。もし知っていることがあれば教えて欲しい。学校でのこととか。」
真樹がそう言うと、二人は少し難しい表情をして黙り込んだ。それから、重そうな口を再び開いて話し始める。
「先程も言ったが、うちは割と小規模の学校故に噂が広がりやすい。」
「だが、台田みどりに関してはあまりいい噂は聞かん。」
二人は詳しく説明を始めた。
「まず、誰かと仲良くしているのを見たことがない。」
「対人関係は宜しくないと思われる。」
「この間も遅刻をして先生に怒られておった。」
「だが、反省の色を見せず、逆切れをしていた模様。」
そこまで聞いた時点で、美緒と沙崙はすっかり呆れかえっていた。
「なんか、いかにも問題児って感じの子なのね。」
「本郷君も、よくそんな子と付き合ったわね。」
呆れる二人を背に真樹は質問を続ける。
「あとは…?金銭トラブルみたいなものは無かったのか?」
そう聞いた真樹に二人はすかさず答えた。
「これは、仲の良い後輩から聞いたのだが。」
「台田みどりは財布をよく忘れるそうだ。」
「故によく他人からお金を拝借していると言っていた。」
「だが、金を返したという報告は無い。」
「対人関係が悪化したのも、そう言うことがあった所以。」
更に真樹達は、二人から衝撃のことを聞いた。
「更に、金ではないが最近事件が起きた。」
「授業中に、突然台田みどりが悲鳴を上げながら教室を飛び出したそうだ。」
「そしてそのままトイレに立てこもり、出て来ようとしなかった。」
「先生方が無理矢理引きずり出した時、スマホを手に持って暴れていたそうだ。」
「意味不明なのだが、あまりにも衝撃的であるが故、この事件を知らぬ者は我が高にはおらん。」
そこまで来た時点で真樹達は台田の異常性に驚いていた。そして、ますます丈のことを救いだしてあげたいと真樹は強く思うようになった。真樹は二人に礼を言う。
「分かった。ありがとう、時間を取らせて済まなかったな。所で、台田本人は今いるのか?」
「いや、そこまでは知らぬが恐らくおらんだろう。」
「部活にも入ってなく、放課後に補習や自習している訳でもない模様。」
最後にそれだけ聞いた真樹は再び礼を述べ、美緒、沙崙と共に北下総高校を後にした。その帰り道、美緒が口を開く。
「なんか、想像以上にヤバい子だったわね。多分私も仲良くなれそうにないわ。」
沙崙も頷きながら言う。
「そんなのを相手しなきゃいけないなんて、本郷君たまったもんじゃないわね。」
真樹は難しい表情で考察しながら話し始めた。
「恐らく、台田は相当幼稚な精神の持ち主だと思う。だから一人で何も出来ないし、誰かに頼ることしか頭にないんだろう。それに加えて寂しがり屋ときた。本郷が前に奴から鬼のように着信があったと言っていたが、授業中でも本郷と通話をしたいという衝動が抑えきれずに爆発したんだろうな。」
真樹の考察を聞いた美緒と沙崙は溜め息交じりに呟いた。
「全く、どういう環境で育てばそんな精神になるのかしら?訳わかんないわ。」
「真樹、そんなの相手にどうやって本郷君を救いだすの?」
真樹は少し悩みながら答えた。
「こういうのはまともに横綱相撲取っても、却って火に油を注いじまう。こっちも強硬手段しかなさそうだな。」
少し重い空気の中、真樹達3人は色々話し合いながら帰宅するのだった。
その夜、本郷家にて。
「はぁ…またか。」
夕食と入浴を済ませた丈が部屋に戻り、充電していたスマホの画面を確認する。案の定、台田からこれでもかというほど連絡が入れられており、彼は溜め息をつくしかなかった。メッセージには『ねぇ!』『いま何してるの?』『返事してよ!』というメッセージと共に、数十件にも達する不在着信が入っていた。そんな中、再び台田から連絡が入ったのだが、無視しても面倒だと思った丈は渋々電話に出た。
「丈、出るのが遅いよ!」
「風呂と晩飯の時間なんだから仕方ないだろ!」
「そんな言い訳しないで!返信位できるでしょ!」
「無茶言うなよ。それとあんまりムキになるなよ。」
「それが彼女に対して言う言葉?酷い、酷すぎるよ!私は丈のことこんなに好きなのに!」
電話越しの台田の声は完全に逆上しているようだった。その後も彼女は丈の言い分に耳を貸すこともなく、2時間以上も一方的に愚痴を言い続けていた。よく焼く解放された丈はスマホを持ったまま勉度に寝転がる。
「つ、疲れた…でも、もう限界だ!」
流石に今まで大目に見ていた丈も、いい加減耐えられなくなっていた。台田に体力も精神力も削られてしまった丈は、心に台田に対する不満を抱きつつも、そのまま眠りに就いてしまった。
おはようございます。
今回のターゲット、台田の素性が割れました。
果たして真樹はどう出るのか?
次回をお楽しみに!




