道化師は楽しみたい
___________神々の黄昏とはよく言ったものだ。黄昏た結果、世界は焼却されたのだから。
(そもそもの起因は悪神ロキにある。)
女型の怪物アングルボサとの間に子を成し、三体の巨人が生み落とされた。それらはどれもが強力で世界を単体で破滅させるだけの力があった。
(混沌を好む男の手元にそんな面白いものがあっても見ろ。使うに決まっている。)
事実、それらの巨人を使い神々との戦争を引き起こした。各地で起きる天変地異。戦闘の余波は増すばかり。平穏な地など何処にも在りはしない。
(最終的には全ての種族が戦争に参戦したんだ。)
悪神ロキは口がよく回る神だった。言葉巧みに戦況を変えるものだから喜劇を観ている感覚さえ感じていたのだろう。
(けれどラグナロクは巨人スルトの持つ『勝利の剣』によって幕を閉じた。悪神ロキも含め、世界は跡形もなく燃え尽きてしまった。)
運良く生き延びた神々は二柱だけ。オーディンの息子ヴィーザルと雷神トールの息子マグニ。彼らは助かったとはいえ、死にかけでもあった。だから、その死にかけの命を捧げる事で世界を取り戻そうとした。
「そして再構築された世界が僕たちが住まうヴァルハラ大陸。なんでそんな事を知っているのか______________それは僕がロキ、ウートガルザ・ロキだからさ。『道化師』の職業を選定されたちょーと悪戯づきなエルフ♪」
こんな事を話していると悪神ロキの方だと間違われるから、訂正はするけれど、神話でも一際目立った逸話を残すもう一人の方のロキだと言っておくよ。
(雷神を欺き、世界蛇を遊戯の道具とした"元"神。)
世界は滅びたのに何故、現人類はこの歴史を知っているのかと疑問が残ることだろう。それはこのウートガルザ・ロキが歴史を大まかに書き記した本を古い遺跡地、ダンジョンに残して来たからに他ならない。
「はぁ、つまらない..........君達が命をとして作り上げた世界は何故こうも平凡で窮屈なんだろう。もちろん、平和はいいことだとは頭では理解しているよ。元々は静寂を好む内気な神だったからね。」
だからこそ悪神ロキが悪巧みをする理由がようやく分かってしまった。暇だから何か面白い事をしよう。彼はそんな単純な思考回路だったのだ。純粋さと悪は紙一重だからね。
(...........ふ、あの神のことだ。満足して死ねたことだろう。)
ただ興味深い事に神々の黄昏、ラグナロクで三体の巨人は完全に消滅はしなかった。スルトの終焉の剣から生き延びたのだ。
「流石は半神半魔の化物達。中々と生命力が高い。」
細胞の一つでも残っていればあれらは永い年月を掛けて復活する。そういう類いの化物達であった。
(だから僕はラグナロク後に聖遺物を使って封印を施した。そうでもしないと人類が息を吹き返す前に世界が廃坑して、生物が住めない世界になってしまうからね。)
三体の巨人は各地にて強い封印が成されている。
「今は確か三体の巨人を指して『ラグナロクの再来』と呼ばれているんだっけ。」
封印ははいずれ綻ぶ。そして世界に破壊と恐怖を撒き散らすことになるだろう。だが、それはまだまだ先の未来だ。
「このヴァルハラ大陸に置いて、最高峰の勇士教育がされるとされる教育機関。」
ヴァルハラ大陸のど真ん中に存在する都市『ウルズ』。その都市を闊歩しながら泉の中心に存在する巨大な世界樹へと視線を向ける。
「ようやくたどり着いた。」
_____________ヴァルハラ学園。世界樹の真下に建造された教育施設。そちらへと視線を下げ、笑みを深める。
「今度はいい暇潰しになるといいな。」




