表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
52/52

52.エピローグ。

***前回のあらすじ***

断罪が終わった。ロンバートは、シェリナへと改めて婚姻を申し出る。ロンバートは男爵家に入婿することを申し出て、国王と男爵の同意も得ることが出来た。遠回りの末、やっと夢が叶った二人は、王都から旅立っていった。

「はぅぁーーー! クリス様お綺麗ですわーー!!」


 純白のドレスに身を包んだ私に、マリエッタが歓喜の声を上げる。父も目を潤ませ、母は号泣をしている。 屋敷の者も一堂に集まっていた。すっかり涙もろくなった執事のジーヴスもやっぱり白いハンカチを握りしめ号泣していた。


「やー、見事な化けっぷりですねお嬢! 馬子にも衣装!」

「あなたッ!」


 グレンの突っ込みにすかさずグレンの脇腹にマリエッタが肘を叩き込んだ。全く気付かなかったが、この二人恋仲だったらしい。2か月ほど前にグレンからしれっと「あ、俺マリエッタ嫁さんに貰ったんで」と言われた時は耳を疑ったが、案外お似合いだ。ただ、一言くらい言ってくれても良かったんじゃないかと思う。マリエッタに文句を言うと、恥ずかしくてとはにかまれた。


 兄上の傍らには、婚約者エレミア様がご一緒だ。兄上が留学中の隣国の第三王女で子供の頃からの婚約者。お会いするのは随分と久しぶりだ。


「さて、時間だ。行こうか」

 父上の差し出す腕に、私は手を添えた。


***


 厳かなパイプオルガンの音が響く。扉に控えていた神殿付きの白騎士が扉をゆっくり開いてくれる。私は頭を軽く下げ、父と一緒にゆっくりと祭壇へと向かう。ヴェール越しに、参列客の顔を見る。ロンバートが居る。その傍らには、大きなお腹をしたシェリナが。エルヴィエはレイアと一緒だ。チェスターも夫人を伴って来ている。夫人の腕には、可愛らしい赤ん坊が抱かれていた。ダグラスもユスと一緒だ。ダグラスの腕に抱かれた小さな男の子が、こっちに向けて手を振っている。討伐で何度か組んでいるアーチャーのジルや魔術師のクロード、副団長のライドに私に勝負を挑んできたオウルの姿もある。セインやエメリックの姿も見えた。兄上が居る。母上が居る。リュシアーナ様は相変わらず大興奮なご様子。フェリックス様が抑えるのも安定だ。ウィンダリア卿夫妻の姿ももちろんある。私の長いヴェールの先を持つのは、フェリックスご夫妻子息のリジー坊やが務めてくれた。とても可愛い。


 そっと顔を上げると、純白の騎士の正装に身を包んだセドリックが、ふわりと甘い笑みを浮かべている。私は父から手を解いて、セドリックの腕を取った。


「綺麗だ」


 小さく私にだけ聞こえるような声で、セドリックが囁く。私は頬が熱くなる。

 皆に見守られる中、厳かな司祭の問いかけに対し宣誓をし、指輪を交わす。ふわりと私のヴェールが捲られ、セドリックの赤い瞳に私の姿が映る。司祭に促され、セドリックが私の頬を優しく包み込んだ。私はそっと目を閉じる。心臓の音が煩い。セドリックの吐息が唇に掛かり、誓いの口づけを交わす。ふわりと唇に触れる甘く柔らかな感触に、私は身も心も解けてしまいそうだった。


 高く鐘の音が響き、花吹雪が舞う。大勢の人の拍手に祝福され、私は幸せの絶頂にいた。


***


 数年の月日が流れた。

 ロンバートは、辺境の地で、良き領主として平民からの信頼も厚い。生まれた子供は男の子で、幼い頃のロンバートにそっくりだった。

 チェスターには第二子が生まれたそうだ。エルヴィエとレイアは、来年式を挙げることになった。

 ダグラスとユスは3人の子供に恵まれて、幸せにくらしている。時々コンフォートの砦に、ユスの作った薬草を卸しに来てくれると、コンフォートの騎士が教えてくれた。


 あれから、私はこのクェレヘクタで騎士を続けている。白の騎士団への打診もあったが、私は赤の騎士団に留まることにした。

 討伐も数を熟し、私はすっかりセドリックの片腕に収まっている。

 サーフィス殿下は父が次期王としての教育を続けている。数年後には良い王になりそうだ。


***


 「これよりベックフォードへ討伐に向かう! 期間は5日! 皆心して掛かれ! 聖水を!」


 私達は聖水を飲み干し、地面に叩きつけて割る。一斉に馬へと飛び乗り、馬首を返す。高い馬の嘶きがあちらこちらで上がる。


「行くぞ、クリス!」

「はいッ!」

「出立!!!」


 おぉ!っと勇ましい声が一斉に上がる。エルヴィエとチェスターが親指を上げる。私もそれに応えた。

 横を走る馬車の窓から、セインが、レイアが、笑みを向けて来る。馬車の向こう側には、ジルとクロード。オウルの姿もある。

 最愛の夫が私に笑みを向ける。私もセドリックに笑みを返す。


 私の居場所は、彼の隣。私は、此処で、生きていく。

 命尽きる、その日まで───

ご閲覧・評価・ブクマ・ご感想・誤字報告有難うございました!これにて【婚約破棄された公爵令嬢は令嬢の仮面を脱ぎ捨てる】、完結です!小説書くの楽しいですねー。沢山の方に読んで頂けて、沢山の方に評価を頂き、沢山の方がブクマを付けて下さって、沢山の方にコメントを頂き、沢山の方の誤字報告に助けて頂き学ばせて頂き、皆様のお陰で、毎日楽しんで書かせて頂きました。心から感謝感謝です!

新しいお話も投稿開始しました。此方は悪役令嬢要素もちょっぴり後半に入ってきます。此方も毎日更新する予定。

【ひとりぼっちの少年はお姫様を拾う】

https://book1.adouzi.eu.org/n4785fn/

--------------------------------------------------------------------------------------

全51話

初回投稿日2019年 05月03日 21時56分

最終投稿日 2019年 05月26日 00時16分

文字数112,238文字


総合評価 11,980pt

評価者数:261人

ブックマーク登録:4,800件

総合PV:1,496,231アクセス

ご感想:48件


2019/05/26 01:48現在

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
YouTubeのマンガから探して読ませていただきました。 よく有る婚約破棄の断罪から始まったのですが、全編を読み終わり 事件は色々起こるものの、必ず居るイヤなヤツ悪いヤツ 辛くなる出来事などが無く、優…
[一言] するする読める簡潔さ、展開が最高でした。 一気に読み切ってしまいましたw 面白かったです。
[一言] 楽しく読ませて頂きました。 作者様、今年も残り一ヶ月を切りました。 ご多忙化と存じますが、身体に気を付けて執筆して下さい。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ