04.公爵令嬢、謁見する。
***前回のあらすじ***
帰宅をしたクリスティアナは、未だロンバートに仕えたい、そう思って居る事を両親に告げた。仮にロンバートが王位継承権を剥奪され、第二王子のサーフェスが継ぐことになったとしても、それはそれで不安要素が残る。それに、クリスティアナは幼い頃にロンバートと交した約束を忘れては居なかった。ロンバートを護る騎士になること。それがクリスティアナの夢だった。
翌朝、私は国王に呼ばれ登城した。
散々両親には止められたが、今私を包むのはグレンが用意してくれた男物の装いだ。
長い銀糸の髪を後ろで1つに纏め、男の装いに身を包んだ私は、どこから見ても令嬢には見えまい。
身長170㎝の私は、男性と言っても遜色は無いはずだ。
身動きが取れない程、私を縛っていた「令嬢」としての鎖はもう無い。
婚約を破棄されたからと言って令嬢で無くなるわけでは無いが、元より令嬢達から蔑まれ、子息達からは色気も無い可愛げもない令嬢と陰口を叩かれていた私を求める男は居ないだろう。
寧ろ私もその方が良い。
漸く全て脱ぎ捨てた今の私は翼でも生えているかの様に体も軽く心も軽い。
真綿を詰めていた様な息苦しさはもう無い。
そのまま空を飛べそうな程に晴れ晴れとしていた。
城へと向かう馬車の中で、付き添ってくれた兄が苦笑を浮かべる。
「しかし、いくら婚約破棄を言い渡されたからと言ってその格好は余りにも酷いのではないか? 一つ間違えば不敬だぞ。我が妹ながら、なんと言おうか……」
「王城に上がる際に正装をと言うのは当然の良識ですが、女性はドレスを着用せねばならないという決まりは無かったと思いますが?」
確かに決まりはないが、まぁ、常識としてはアウトだろう。けれど私は曲げる気は無かった。
***
「国王陛下に置かれましてはご機嫌麗しく」
国王陛下は、ポカーン、とした顔のまま、私を凝視されていた。
謁見の間で、私は完璧と言われたカーテシーではなく、騎士の様に片膝を王の御前に突き、頭を垂れている。
「──クリスティアナ=アデルバイド公爵令嬢。面を上げよ。……と言うか……。どうしたのだ。その格好は」
呆れた様な国王陛下のお言葉に、私は顔を上げ、にこり、と微笑む。
「父から既に伝達があったかと思いますが、此度ロンバート殿下より婚約破棄を言い渡されました故。本来の私に戻らせて頂いたまでです」
「それに関しては、我が愚息がしでかした事、其方には深く詫びねばなるまい」
「恐れながら国王陛下。詫びて頂くのでしたらば、わたくしのお願いを幾つか聞き届けては頂けませんでしょうか」
「願い、とな?」
「国王陛下はロンバート殿下の王位継承権の剥奪をなさるおつもりでは。国王陛下のお決めになる事、わたくしの様な小娘が口を出すのは不敬とは存じますが、何卒ロンバート殿下の王位継承権剥奪のお咎め、このわたくしに免じてお許し願いたく」
「其方はあれを許せと申すのか?」
国王陛下の眼が驚いたように見開かれる。
「是非に。それと今1つ。 わたくし、クリスティアナ=アデルバイドに騎士としてお仕えする許可を頂きたく。何卒お力添えを」
ぽかん、とした顔で少し身を乗り出されるように凝視なさっていた国王陛下は大きくため息をつかれ、深く椅子へ腰を沈められた。
「──其方の願い、しかと聞き受けた。ロンバートには3か月の謹慎を申し渡す。其方には王宮騎士団の入隊を許可しよう」
「有り難き幸せ」
私は今一度国王陛下に深く頭を下げた。
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