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36.ロンバートの異変。

***前回のあらすじ***

セドリックに渡されたものは、柘榴石の付いた髪留めだった。自分の気持ち、セドリックの気持ちを自覚するクリスティアナ。久しぶりに王都へと戻ると、民が出迎えてくれた。凱旋のパレードとなったクリスティアナ達は、民の歓声に答えながら城へと帰還する。夫々荷を下ろし片づけをする中、文官の執務室へ書類を届けに向かったクリスティアナはシェリナと再会を果たすも、シェリナの様子がおかしい。部屋で待つように伝え、クリスティアナは文官の許へ急ぐのだった。

 書類の受け渡しは直ぐに終わった。2、3質問を受けたが、ほんの数分で済む。私は一旦詰所の入口へと戻った。既に片付けは終わっているらしい。この後は宴会になだれ込むだけだそうだ。私はセドリックに許可を貰い、シェリナの待つ私室へと向かう。


 3度ノックをすると、中からはい、と返事が返ってくる。扉を開けると、立ち上がってこちらを見ているシェリナと目があった。白い肌からは血の気が失せ、青白くなっている。目元が赤い。不安げに眉を下げ、大きな目には涙が浮かんでいる。


「とりあえず座って?」


 私はベルを鳴らし、女官を呼んでお茶を運んでくれるように頼む。シェリナは言われるがままにソファーに身を沈め、祈る様に手を組んで小さく震えている。

 一体何があったのか。私はシェリナの隣へと腰かけると、彼女の肩を抱いた。シェリナの怯えた様な目が、私を見る。


「申し訳、ありません。クリス様。お帰りになられたばかりだというのに取り乱してしまって……」


 私はゆっくり首を振る。小さく笑みを向けると、シェリナは視線を落とし、ぽつぽつと話し出した。


「クリス様が遠征に向かわれてから直ぐ、ロンの悪い噂が流れ始めたんです……。勿論私、そんな噂信じていませんでしたが、悪い噂はどんどん増えていっていて、そうしたら昨日ロンバート殿下の使いの方が手紙を持っていらしたんです。もう会わない、理由は言えない、自分の事は忘れて欲しいって……。3日前お会いできた時は、何も仰っていなかったのに。久しぶりに会えたって、会いたかったって抱きしめて下さったのに……。愛していると言って下さったのに……!」


 私は頭が真っ白になった。『あの』ロンバートが? あの馬鹿今度は何を考えているんだ。


「私、ちゃんと聞きたくて、会って話が聞きたくて、ロンに会いたいと言ったんです。せめて理由だけでも聞かせて欲しくて。でも会わないって追い返されて……。部屋に居るのは判っているのに、どうしても会ってくれなくて……。」


 あのシェリナ狂いのロンが、こんなに短期間で気持ちが変わるとは思えない。いや、思いたくない。シェリナの言葉も右から左に抜けて行ってしまう。婚約を破棄されようが、断罪をされようが、それでも私はロンバートを信じていた。ロンバートの本質を信じていた。自分に出来ることをするといったあの時のあの顔は、嘘だったというのか。


「私、ロンに嫌われたんでしょうか……。会いたくない程怒らせる事をしたんでしょうか……。他に好きな方が出来たのでしょうか……。ロンの気持ちが判らないんです……!!」


 シェリナは顔を覆うと声を上げて泣きだした。私はシェリナを抱きしめる。


「──私も、ロンが心変わりをするなど信じられない。きっと何か考えがあるのだと思う。何か心当たりはないの?」


 シェリナの背を撫でながら問うと、シェリナは首をふるふると振った。


「ずっと、何か考え込んでいる様子ではありました……。でも、分からないんです! 何で会ってくれないのかも何で何も話してくれないのかも! ロンはきっともう私の事好きじゃないんだわ! 私もうどうして良いか判らないの!」


 がばっとシェリナの細く白い腕が、私の首に回される。そのまま縋りつく様に泣きじゃくるシェリナに、私は胸が苦しくなった。こんなにシェリナを苦しめて、ロンは何をしようとしているのだろう。


「──分かった。私もロンへ面会を試みてみるよ。会ってくれるかは判らないけれど、その時は部屋をけ破ってでも話を聞いてくる。ロンの貴女への想いは、そんなに軽いものじゃない筈だ。今は信じて待っていて? きっと何とか話を聞きだしてみるから」


***


 私は迎えに来たグレンにそのままシェリナを送る様に伝え、そのまま馬車を出させた。シェリナを見送った私は、そのままロンの部屋へと向かう。駄目で元々だ。エメリックに会えばロンの居る場所まで案内して貰えるのではないかと思った。

いつもご閲覧・評価・ブクマ・ご感想・誤字報告有難うございます!感謝感謝です。さてさて、ロンバートのターンです。長くなったので分けます。ちょっとブースターが掛かっているのでがんがん行きます。次は既に書きあがっているので、30分後くらいに投稿すると思います!

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