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14.公爵令嬢、騎士叙任式にて騎士になる。

***前回のあらすじ***

謹慎処分となったクリスティアナの元婚約者、ロンバートは、一人自室で苦悩していた。未だ自分のした、事の重大さに気づいていない。ロンバートの心の中は、シェリナの事でいっぱいだった。


 真っ白い、柔らかな肌触りの絹のシャツに袖を通す。詰襟の首元を飾るレースタイは繊細なレース編みが施され、深紅のスピネルが嵌めこまれたブローチで止める。ぴたりとしたズボンは脇に金糸の刺繍で一本ラインが入り、ベストとジャケットは深い赤で金の飾り紐と留め具が美しく、金糸の刺繍が細かく施されている。ひざ丈まである白いブーツに足を通し、髪はサイドを少し垂らし、残りは深紅の細いリボンで後ろで1つに括る。


「ふぉぉぉぉぉぉ!!! クリス様似合い過ぎます! 何このイケメン! けしからん!!」


 マリエッタが奇声を上げる。鼻息が怖い。てか、けしからんって何だ。

 とはいえ、鏡に映った自分の姿に、自分でもニヤけそうになる。ぺったんこな胸も尻も、こうしてみると魅力的に見えるから不思議だ。寧ろ男にしか見えない。普通の令嬢ならきっとショックなんだろうが、私は自分の姿に大満足だった。


 騎士の正装が届けられてから3日後。待ちに待った任命式の日。初めて袖を通す騎士の正装に、私の胸も高鳴る。様子を見に来た父と兄は複雑な顔をし、母は何故かマリエッタと顔を真っ赤にして大喜びをしていた。


「お嬢、きっと腹の中で性別間違っちゃったんですね」


 一人全く動じていないグレンだけが、ニコニコとそんな感想を述べた。


***


 登城する父と共に馬車で城へと向かう。


「これは、おめでとうと言うべきなのだろうな。可愛い娘と思っていたのに、いきなり娘が息子になった様で複雑だよ私は」


 青天の霹靂だ、と父が何度目かの愚痴を零す。


「しかも赤の騎士団にとは。もっと反対をすべきだったかな。良いかい? クリス。くれぐれも無理はするんじゃないぞ? お前の命は1つしかないのだから。私の可愛い娘はお前ひとりなのだよ」

「判っています。父上。ご心配をお掛けするのは私も心苦しいのですが」


 騎士になる。そう告げてから、散々父とも母とも話し合った。父には何を馬鹿なと叱られたし、母には泣かれた。

 それでも最後には、私の気持ちを許してくれた父と母には感謝してもしきれない。他の貴族達に色々と言われるだろうが、お前は気にせず思うように生きなさいと言ってくれた。


「長い事お前を縛り付けていた。お前の気持ちに気づこうともしなかった。許しておくれ」


 そう言ってぽんぽん、と頭を撫でる父の手は、大きくて、暖かかった。


***


「これより騎士叙任式を行う。クリスティアナ=アデルバイド、これへ」


 ずらりと並んだ騎士の間を、私は進んだ。王の隣で台座に載せられた剣を手に捧げ持つのは、セドリックだ。王がその剣を手に取れば、私は王の前に跪いた。王の持つ剣が私の肩へと当てられる。


「汝、クリスティアナ=アデルバイド。我、クェレヘクタ王国国王、エルネスト=クェレヘクタの名において赤の騎士団への入団を命じる。我がクェレヘクタ王国の剣となり盾となり、何時如何なる時も騎士としての誇りを忘るる事なく、国の為、民の為、その身を尽くし邁進せよ」


 王の傍に仕えていたセドリックが、王から剣を恭しく受け取り鞘へと納め、剣の下げられた剣帯をベルトに止めてくれる。気持ちが引き締まる思いだ。ずしりとした剣の重さ。

 手袋越しに鞘を握り、剣の柄を掴み、3度剣を鳴らす。涼やかな音が響き渡る。そうしてもう一度深く頭を下げた私のうなじを国王が叩き、肩に旗幟が掛けられる。


 これで晴れて私もクェレヘクタ王国騎士団の一員となった。


***


「一度騎士団の詰所に行って服を着替えて来い。着替えが済んだら私の執務室へ。皆に紹介をしよう」


 隣を歩くセドリックは、結構歩くのが早い。私は早足で付いていく。まぁ、確かにこんなビラビラした格好じゃ、騎士の訓練なんてとても出来ないだろう。


「皆にはクリスと紹介しよう。知っている者も少なからずいるだろうが、女扱いを受けたくないんだろう?」


 はい、と頷くと、セドリックの眼が緩やかに弧を描く。また、あの目。ほんの僅かに口角の上がっているように見える。柔らかな、穏やかな目。何?と思うけれど、冷たくされるよりはいいか。

 何故かはわからないけれど、団長はそこはかとなく私を認めてくれたのかもしれない。

 此処は喜んでおくことにする。


 セドリックとは執務室の前で別れて、私は教えられた部屋へと移動する。部屋の中のテーブルの上には、生成りの麻のシャツに皮のベスト、黒いズボンと言った軽装が置かれていた。私は急いで服を着替え、剣をベルトに下げて走ってセドリックの執務室へと向かった。


ブクマ&評価&誤字報告有難うございます!コメント7件目頂きました!ブクマもなんと2000件を超えました!ありがたやありがたや・・・。

次は夜に更新したいと思います。

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