表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

62/475

50:馴染む闖入者

『気を付けてね、ロック。これ、お弁当』

『ああ、行ってくるよチャコ』


 ダンジョンに向かうロックに、いつものように弁当の包みを渡すクロエ。それを見て仲間たちが口笛を吹いて囃し立てる。


『ひゅーひゅー、熱いねー』

『お似合いだよ、お二人さん!』

『お前らなあ…』


 文句を言おうとするロックとクロエの間に立ちはだかったのは、一行に無理矢理ついて行っているダイだった。


『おいクロエ、俺の分も用意しろ』

『なーに、この木偶の坊えらっそーに!』

『何だと、使用人風情が!』


 キサラが愚痴るが、本来ならばダイの言う通り、三人はセレナイト公爵家の使用人…しかもスラム出身だ。将軍の息子であるダイにおいそれと口を聞いていい立場ではない。


『やめなさい、キサラ。お客様、お待たせしました』

『それでいいんだよ、罪人は大人しく御奉仕してりゃ…』


 得意げな表情でクロエから弁当を受け取ろうとするダイだが、その目の前にさっと手を差し出される。


『六五〇カラーになります』

『な…っ、金取んのかよ!?』

『お弁当の食材は全て、グレース夫妻の財布で買ったもの。そして今の私は雇われの身。よってこれは商品になりますお客様。お支払い頂けますねお客様?』

『だ、だったらロックは何なんだよ? 貢ぎ物とでも言うつもりか!?』

『もちろん私からの依頼でダンジョン攻略して頂いてますから、昼食ぐらい付けます。貴方には頼んでいませんから……あら?』


 悔しそうに歯ぎしりするダイの頬に真新しい傷を見つけ、クロエは手を伸ばす。


『ダイ様、お怪我が…』

『触るな、悪女がうつる!』


 クロエの手をバシンと払い除けるダイを、さすがに黙って見ている事はできず、シンはクロエのそばに駆け寄った。


『悪女って、殿方に触ってうつるものなのかしら?』

『子供の理屈ですよ、お嬢様』

『はいはい。いつまでも遊んでないで、さっさと行きな! ほら、あんたの分はあたしが作っといてやったから』


 そこへ女将が割り込んできて、ダイの手にずいっと包みを押し付ける。


『おばさん、これはクロエを反省させるための…』

『いい男ってのはね、駄々捏ねてないで素直に礼を言えるもんだよ。要らないならみんなに分けてやっとくれ。やれやれ、いつまでも居座られちゃ片付かないったら。チャコ、あんたも次からこのボクちゃんのもついでに作ってやんな』

『ボ…ボクちゃん!?』


 子供扱いされて顔を真っ赤にするダイを、クロエはちらりと見遣った。


『女将さんに頼まれれば、嫌とは言えませんね。では治癒に関しては、ダイ様から直接頼まれればと言う事で、よろしいですか?』

『だ、誰が頼むか…バーカ!』


 手にした包みとクロエを交互に見ながら、ダイは精一杯の罵声を浴びせると、自分を置いて行こうとするロックたちの後を慌てて追いかけた。その様子を客たちは微笑ましそうに見守っている。王都からの不躾な闖入者も、いつの間にか日常の風景と化していたようだ。


「あのバカ、完全にあっちに馴染みやがって」

「何て事なの……ダイ様までが」

「あ、あいつは食い意地が張っているだけだ。モモの心の籠った手料理を食べれば、すぐこちらに戻ってくる」


 苛立ちを隠せないレッドリオと、呆然と身を震わせるモモ。おろおろするばかりのダークは何とかフォローに入るが、誰も聞いてはいなかった。



※初めて作中に登場した設定:カラフレア王国の通貨「カラー」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

バナーイラスト
― 新着の感想 ―
[一言] (振り返り!) 監視の側から見ると本当にクロエたちはほのぼのして見えるなぁw テレビ番組の編集のようにピンポイントでレッドリオたちが「キイイッ! タノシソウ! チクショウ!」と今にも叫びだし…
[一言] そんなダイに一言 誰もお前に居てくれなんて言ってない。 ガキは帰ってママのオッパイでも飲んでろ。
[一言] ダイ…チョロQすぎる… 第二王子は策士ですねぇ~いや…相手が自滅しているのか。徐々に羽がもぎ取らていく
2020/07/09 22:15 退会済み
管理
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ