49:祭の後
降臨祭終了後、代役を終えたセイはホワイティ辺境伯領にあるダンジョン前の宿で合流する手筈になっていた。だがいくら待てども彼は来ない。翌日の昼過ぎに馬を飛ばしたとしても、そろそろ到着していてもおかしくないはずなのに。
「何か、あったんでしょうか…」
モモが心配そうにきゅっと胸元で手を握り締める。王都よりもダンジョンの方がよっぽど危険ではあるのだが。現在のパーティーはモモとレッドリオ、それにダークの三人だ。セイは戦闘要員ではないものの情報に長け、地図の作成やアイテム鑑定、敵の弱点を見極めるのに不可欠な存在だった。仲間が受けたダメージに合わせた回復アイテムも即座に判断して渡してもらえるので、彼が抜けた今、神力が落ちているモモの神聖魔法で全てを乗り切るにはきつい。
「キースの奴が、また無理を言って引き留めているのかもしれんな」
「失礼な……言い掛かりはやめてよね」
いきなり声をかけられ、ぎょっとして振り向くと、宿の入り口のドアに話題の人物が寄り掛かっていた。
「キース、貴様いつここに来た」
「ついさっきだよ。セイは来られないって事を、彼の代わりに知らせにね」
「セイ様はご無事なのですか!?」
詰め寄るモモから嫌そうに顔を逸らすと、イエラオは彼女から距離を取る。
「ご無事だよ。彼は男として、誠意を見せるために王都へ留まったんだ」
「一体何をやっているんだ、セイは」
「結婚式の準備」
あっけらかんと言うイエラオの言葉が、一瞬理解できなかった。
「…はあ!?」
「イエラオ殿下、誰の結婚式のためにセイは来られないのですか」
「だから、セイ本人の結婚式だよ。婚約者であるミズーリ嬢とのね」
レッドリオたちの目が点になる。婚約者との結婚……それは分かるが、何故今なのか。彼等がいない間、セイに何があったと言うのか。
すると、モモが凄い剣幕で髪を掻き毟った。
「どう言う事っ!? どうしてセイが結婚するの、ミズーリとって、セイルートのバッドエンドじゃない! 一体何がどうなって…」
「ど、どうしたんだモモ。落ち着け!」
騒ぎ出すモモを押さえ付け、レッドリオはイエラオを問い質す。
「どうなっているんだ、あのセイがモモを裏切るとは思えないんだが……これも貴様の仕業か!?」
「答えは半々かな。まあ詳しい事は上映会で見てよ」
そう言ってイエラオが宿に招き入れたのは、ホワイティ辺境伯の紋章が入った兵士たちだった。分厚い布に包まれた、大きな荷物を二人がかりで抱えている。
「キース、何だこれは」
そのまま客室まで運ばれていく荷物を戸惑った目で見送るレッドリオに、イエラオが悪戯っぽく笑う。
「兄上たち、最近はずっとダンジョン攻略で、クロエ嬢の監視ができていなかったでしょ? だからこの宿で行おうと思って持ってきてもらったんだよ」
「魔法の鏡を……わざわざ王都からか!?」
「まさか。あれは母上の嫁入り道具なのは知っているよね? そしてここは母上の実家ホワイティ辺境伯領……ここにあるもう一つの鏡を借り受けたのさ。
さあ、上映会を始めようか」
※冒険者ギルドに登録されている各自の職業
●モモ、クロエ:神官(神聖魔法が使える)
●レッドリオ:魔法剣士(王家と親族にあたるホワイティ辺境伯領は魔法に特化している。王妃の実家でもある)
●ダイ:剣士(まだ見習いで騎士の称号はもらっていない。剣の腕はかなり強い)
●セイ:商人(盗賊と共通のスキル有り。知識と交渉術が武器で、レベルが上がると魔物とも意思の疎通が可能)
●ダーク:弓兵(セレナイト公爵家は弓術に強い。近距離では剣も使える)
●ロック:剣士(双剣使い)
●ラキ:盗賊
●サム:戦士(斧使い)
●キサラ:魔術師(回復魔法も少し使える)
●シン:未登録(護身術は一通り叩き込まれた)





