293:納得しどころ
そうしてロックが街から持ち帰った小包には、モモの着替えや手紙の束などが入っていた。前世のモモがめんどくさいからと手紙を捨てずにいてよかった。
「ありがとな、二人共! へぇ~、これが体操着かぁ……クロエとお揃ぇだな!」
「お礼なら取ってきてくれたチャコに……ちょっと!!」
部屋にまだロックがいるのに、その場で着替え出すモモ。咄嗟にロックの両目を塞ぎ、シンに合図するとすぐさま廊下に出てドアを閉めた。
「クロエ……そんな事しなくても普通に後ろ向くつもりだったから」
「ねぇ、いつもこうなの? 村にいた頃からこうなの!?」
思えば初対面の時から脱ぎ癖はあった……足だけとは言え、貴族の習慣からすればとんでもない事だったわ。芹菜はピンときてなかったから、恐らく前世のモモも深く考えてなかったに違いない。
「着替えるような時間には会わないようにしてるよ……なに怒ってんだ?」
「はあ……身の振り方次第では再教育が必要だと思って」
着替え終わった頃を見計らい、私はロックからそっと手を外す。二人の関係は村にいた事にもう完成していて、私一人があたふたしてもしょうがないのかもしれない……もやもやするけど。
「へへっ、ぴったりだ。動きやすいな、これ!」
「でしょうね……暴れてないで、手紙開けたら?」
ベッドの上で正拳突きを始めたモモに呆れて封筒の束を渡せば、それをベッド脇に置いてボスンと座った。
「悪ぃ悪ぃ、えーっと何々……『久しぶりね、モモ。元気にしている? 最近返事が来ないけど、忙しいのかしら――』」
便箋の文字を追いながら音読するモモだったが、次第に無言で読み進めるようになった。とりあえずロックは街まで行って疲れているだろうからと食堂で休んでもらう事にして、同室の私は椅子に腰かけ、何となくモモの様子を眺めていた。
◆ ◇ ◆ ◇ ◆
「あら、レッドリオ殿下」
水差しが空になったので替えようと退室したら、部屋の前にレッドリオ殿下がいた。また何かシンと揉めていたらしい。隠しルートはほぼ逆ハーレム状態で、攻略対象同士も仲が良かったはずなのに……まあ、実際は色々あるのだろう。
驚いているものの何も言わない殿下を訝しく思いながらも、視線を追って部屋の中を振り返る。さっきと何も変わらず、モモはベッドで母親からの手紙を読んでいた。一枚一枚丁寧に、読み終わってもまた同じ手紙を繰り返し。
「あんなにゆっくり読んでいたら、日が暮れてしまうだろう」
「どうりで休日が潰れるはずですよね……でも、それでこそモモですよ。本当は故郷や家族を何より大切にする、そんな女の子なんです」
分かった風な事を言っているけれど、単にゲームでそういうキャラだった、という設定の話ではない。ロックが本気で好きになる『モモ=パレット』とは、そんな女の子なのだと、私が勝手に納得したいのだ。
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※「がうがうモンスター」「マンガがうがう」にてコミカライズが連載中。
※書籍情報は活動報告にて随時更新していきます。





