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12:捨てられた恋心

『お嬢様…本当に私と同室でよろしかったのですか?』


 しばらくして我に返ったシンが、ベッドの皺を直したりクローゼットの中を覗き込むクロエに話しかける。


『何か問題でも?』

『大有りです。兄妹と偽っていますが、実際は未婚の若い男女なのですよ』


 シンの物言いに一瞬ぽかんとしたクロエは、小さく噴き出す。こちらを見ているので、何となく自分がバカにされたようでムッとする。


『やだ、シンってばそんな目で私を見てたの?』

『茶化さないで下さい』

『ごめん、貴方が私を異性として意識するなんて、天地が引っ繰り返ってもあり得ないでしょ』

『何故そう、決め付けるのですか。私だって男なんです。それとも貴女にとっては、まだただのペットなのですか?』


 まるでシンが口説いているかのように見えるが、もちろんそんな訳がない。普通に常識として説いているだけだ。昔やらかした暴言を持ち出され、クロエは珍しく悲しそうな顔をした。


『あの時は本当にバカな事を言ったわ……貴方がとても大切なのに、殿下に仲を疑われるのが怖くて。昔も今も、ペットだなんて思った事はないわ』

「おい、見えねえぞ!」


 スクリーンに使っている鏡いっぱいにクロエの指が映り、ダイが苛立った声を上げた。彼女がブローチに触れているのだ。壊されないかヒヤヒヤする。


『貴方はね、私の理想の兄なの。本当はダークお兄様よりシン……貴方がお兄様ならよかったのに』

「僕だってお前みたいな根性悪よりモモの方がよかったよ、清々する!」


 向こうには聞こえないのにダークが反論してくる。どちらかと言えばモモは妹ではなく妻にしたかったと言う負け惜しみも若干籠っている気がする。やがてクロエの手がブローチから引き剥がされ、そのままシンの両手に包み込まれた。


『お嬢様が望むのであれば、兄でも恋人でも演じてみせますが……やはりレッドリオ殿下でなければその役は務まりませんね』

『ううん、殿下の事はもうどうでもいいのよ』

『「は!?」』


 シンとレッドリオの声がシンクロした。

 クロエが……婚約者となって以来、どこへ行くにもべったりくっついてきてうっとおしいくらいアピールしてきた、あのクロエが、何と言った!?


『お、お嬢様…ここには私しかおりません故、無理をなさらずとも』

『むしろ、今までが無理のし通しだったのよ。こちとら遊びたい盛りの女の子よ? それがやれ聖女の修行だ、やれお妃教育だと朝から晩まで死ぬような思いで……せめてこの結婚が幸せなんだと思い込まなきゃ、やってられなかったのよ。ええ、そうよ。確かに殿下の事は好きだった、一目惚れだった。

でも、婚約破棄されて追い出された以上、あの人とはもう他人。終わった、過去の事なの。いちいち掘り返しても時間の無駄、人生の無駄だわ。さっさと忘れて第二の人生を楽しまなきゃ損じゃない?』


「じ…人生の無駄……終わった過去だとぉ…?」

「で、殿下…落ち着いて下さい。所詮は負け犬の遠吠えです」


 鏡に突っ込んで叩き割りそうな勢いのレッドリオを、セイが慌てて止める。まさか、クロエがこんなにも切り替えが早い女だとは思わなかった。十歳で婚約してから破棄されるまで、ずっとずっとレッドリオ一筋で、他の男など見向きもしなかったのだ。例外は一緒にいるシンただ一人で、それすらペット扱いだったのに……


「しおらしく反省していれば可愛げがあるものを……いいだろう、俺をコケにした貴様には最上級の絶望を与えてやる!」


 報復を心配するモモのために始めた監視だと言う事も忘れ、レッドリオは額に青筋を立ててクロエを指差した。



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