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第七王子に生まれたけど、何すりゃいいの?  作者: 籠の中のうさぎ
学園編

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90/140

90話

オリバーと話した次の日。

ミューラー先生の座学の講義が終わってすぐ俺は先生に声をかけた。

「あの、ミューラー先生。少しいいですか?」

「ライ・オルトネク、どうしましたか? 何かわからないところでもありましたか?」

教育熱心というか、ミューラー先生は何かわからないところがあれば、生徒一人に何時間でも時間を割いてくれる人だ。

普段俺は座学に関しては予習復習を欠かさないので一度もこうやってミューラー先生に声をかけたことはない。

まあ技術面に関しては俺が一番お世話になってるけど。

「あ、いえ。講義に関してではないんですけど。先日魔導士科の先生が俺と話を、とおっしゃっていた件なんですが、どういった内容だったんでしょうか?」

「さては、魔導士科の生徒から何か聞いたんですね……?」

ちょっと面白くなさそうにミューラー先生が眉間にしわを寄せた。

図星であるため、別に悪いことをしたわけではないが、思わず目を逸らせてしまった。

俺の頬にミューラー先生の視線が突き刺さる。

しばらくすると、あきらめたようにミューラー先生がため息をついた。

「はぁ。別に、意地悪で黙っていたわけじゃありませんよ」

「じゃあ、どうして…………?」

「あなたが、騎士科がいいと言ったんじゃありませんか」

しょうがなさそうに、でもどこか嬉しそうにミューラー先生がそう言った。

「どれだけ周りに弱いと言われようと、どれだけ私に騎士科より魔導士科が向いていると言われようと、騎士科でやりたいことがあるからと科を移動せずに鍛錬を積んできたでしょう。あなたがほかの人よりも勝っていることがあるとすれば、ほかの人よりも年齢が低いこととその気持ちです。何をするにせよ、早い段階で基礎を固めているとそれだけ早く応用に進めますからね。だから、今のうちに、年が若くやる気もあるうちにこちらで基礎を固めておきたかったんですよ」

その言葉に不覚にも涙腺が緩んで、目に涙がたまる。

あわてて数度瞬きをしてごまかしたけど、いやいや、その言葉は卑怯でしょう。

だって俺は、絶対に期待されていないと思っていた。

投げかけられる言葉は辛辣な言葉ばかりだったから。

でも、そうじゃなかった。

「魔導士科の先生方って、本当に自分の専門に関しては盲目的というか、なんというか。周りが見えてないんですよねぇ。話に行くのは構いませんけど、数週間単位で捕まる可能性を考えると、どうしても担当教師としては送り出したくはないんですよねぇ」

「そういう理由なら、俺も納得できました。せめてもう少し時間に余裕が持てるようになるまでは、やめておきますね」

「そうしなさい。ほかに質問は?」

「ありません、先生」

「では、また午後の実技の講義で」

そういうとミューラー先生は軽く手を振って講義室を後にした。


「ん。先生に聞きたいこと聞けたん?」

「ばっちし。なに、ご飯待っててくれたの?」

「もっちろーん! な、アル!」

「おー」

二人対二人の実戦でペアを組んでから、俺とシーシキン、改めアルトゥールとの関係はだいぶ良くなった。

まあ間にシローが入ってくれたことも要因の一つだったんだけど。

「そういえばアルトゥール早弁してなかった? お昼入るの?」

「余裕」

「アルはよーさん食べるよなぁ」

育ち盛りの男が三人。

俺もたいがい食べるほうだと思ってたけど、アルトゥールとシローはそれ以上。

シローは一日三食プラス軽食程度だけど、すべてが大盛りを通り越して山盛り。

その全部が筋肉と縦向き方向の成長に使われている。

身長の高いゴリマッチョ。

胸板も厚ければ腕も太い。

でも身長があるから太って見えないからいいよね。

対してアルトゥールは一回に食べる量は大盛りくらいだけど、なんせ燃費が悪い。

朝食べて、学園に来る前に鍛錬してから二回目の朝食。学園に来たらまず学食で軽く腹に入れてから午前の講義を受けて昼食。午後の講義が始まる前にも軽く腹に入れ、講義を受け終わったら夕ご飯。寮に帰って鍛錬しつつ二度目の夕飯を食べ、風呂に入ったり自由時間を満喫。

空腹で眠れなくなるから軽く飯を食ってから布団に入るそうだ。

一日五回の食事と三回の軽食。

なのに、太らない。ついでに言うと、それだけ食べて運動もしているのに筋肉もあまりつかない。

いや、筋肉はあるんだけど、無駄な筋肉がつかないからいわゆる細マッチョ。

二人ともうらやましい限りである。

俺は体形的には二人を足して割った感じだ。

「あんだけ食っても筋肉にならねーんだよ」

「筋肉付きにくい体質なんだろうね。逆にシローは筋肉だるま」

「筋肉重くてアルみたいに動けへんねやろーなー。その辺はアルがうらやましーわぁ」

互いに軽口をたたきながら学食へと向かった。


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