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第七王子に生まれたけど、何すりゃいいの?  作者: 籠の中のうさぎ
幼少期編

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9話


「ジャンカルロ様!ジョバンニ様!ご無事ですか!?」

庭園の入り口では先ほどの爆発を聞きつけて駆けつけてきたのか、キュリロス師匠と同じ鎧を身にまとった騎士の皆さんが剣を抜いて待っていた。

しかし、“面白い”と言うか、“当然”と言うか、俺の心配をする騎士がほとんどいない。

まあ別にそれで不貞腐れるような性格でもないのだが、王家に仕えるものとしていいのか?

「医者はどうしました?」

「ハッ!もうすぐこちらに、いらっしゃいました!」

その言葉に視線であたりを見渡すと、ちょうど医者が薬箱を抱えて走ってくるのが目に入る。

キュリロス師匠もそれを見てすぐに俺をその場におろし、ジャン兄様は医者の持ってきた白い布と棒でできた担架に横たわらせると、すぐさま運ばれていく。

「まっ、て。」

そんな中、ジャン兄様がそっと俺に手を伸ばした。

「ジャンにいさま?」

近寄ると青白い顔で苦しそうにしているのに、ふっと笑った。

「ライ。ありが、とう。」

「ジャンカルロ様。今はご安静に。」

俺とよほど話させたくないのか、それともそれだけジャン兄様の体調が悪いのか、俺の言葉を待つことなくそのままジャン兄様が運ばれていってしまった。


「しかし、先ほどの爆発はいったい…………。」

ようやく俺たちが安全圏に来たことでキュリロス師匠が再び何かを思案し始めた。

しかし、その内容が内容だ。

「キュリロスししょう。だから、あのばくはつは おれが やったんですって!」

「…………………。」

いくら俺が言いつのっても、半信半疑、困惑している様子のキュリロス師匠。

俺がこんな無意味な嘘をつく必要もつくような性格でもないとわかってはいるが、それでもたった五つの俺があの爆発を起こしたとは信じがたいようだった。

「ニアルコス。ライモンドの言っていることは事実だ。この僕が証言する。」

ジョバンニ兄様がそう証言したことにより、周囲の人が俄かにざわつき始めた。


「あの年で………?」

「いや、これはベルトランド様に次ぐ魔法の才能があるのでは?」

「いや、しかし、






危険なのでは?」



どこの誰が言ったのかはわからないその言葉が次第に恐怖とともに広がり始める。

まあその気持ちはわからなくもない。

だって、第一王子を蹴って王太子に!と公言する側室の息子が、魔法で大爆発を起こせるんだぞ?恐怖でしかない。

その気持ちがわかるので何も言えなくなる。

それに、たとえここで俺が何かを言ったとしても逆効果だろう。


普段は別にどれだけそんなことを言われても気にならないのだが、今日ばかりは違った。

そもそも今日は俺の誕生日で、ジャン兄様が俺のためにお茶会を開いてくれる予定だったのだ。

それなのに、ジョバンニ兄様に俺が母上の息子と言うだけで否定され、俺が母上の息子と言うだけで兵士には謀反を疑われる。

俺が望んだことでも、俺が言ったわけでもないのに。

そんなどろどろした気持ちが心のうちからあふれかえりそうになり、俺は慌てて笑顔を作って見せた。


「キュリロスししょう。」

「ライモンド殿下?どうなさいましたか?」

先ほどの爆発について考えているためかキュリロス師匠の耳に周りの兵士の言葉は入っていないようだった。

「きょうは もうへやに もどります。ジャンにいさまの たいちょうだけ あとで おしえてください。」

「でしたらお部屋までお送りいたします。」

「だいじょうぶです!!」

俺を抱き上げようとしたキュリロス師匠の手をはじく。

キュリロス師匠に惚れこんでから、腕を伸ばすことは数あれど、キュリロス師匠の手をはじいたのはこれがはじめてだ。なのでキュリロス師匠が驚いたように目を見開いている。

「ひとりで、だいじょうぶです。しつれいします、ジョバンニにいさま。」

「な!?お待ちください!ライモンド様!!」

キュリロス師匠が俺に声をかけるが、その声を無視して半ば走るように自分の部屋へと逃げ帰った。



「ライモンド様!!ご無事でしたか!!?」

部屋に入るとすぐにマリアが駆け寄ってきて、俺にけががないかを確認する。

先ほど俺が起こした爆発で先に避難させられていたらしい。

「ねえ、マリア。」

「はい。ライモンド様。」

「おれは、なにをすればいのかな?」

「え?」

生まれた時からずっと考えていた。

俺はいったい何のために記憶を持ったまま生まれたのか。

話にだけ聞く兄たちは、みなそれぞれ自分の役割を持っている。

一番上のフェデリコ兄様は王太子として父の仕事を手伝っている。

次男のベルトランド兄様は、若いながらも学園を飛び級で卒業し教鞭をとっている。

アンドレア兄様とオルランド兄様はそれぞれ他国に留学しながら外交の術を学んでいる。

ジョバンニ兄様はあれで音楽の才能があり、すでに国内外問わず多くの人を魅了している。

ジャン兄様は絵画で、ではあるが、ジョバンニ兄様とおなじような感じだ。

じゃあ俺は?

七番目に生まれた俺は何ができる?

魔法を勉強したところでベルトランド兄様の二番煎じ。

芸術の才能なんてからっきしで、国のために何かをしようと思っても母上の発言のため周りからは疑われる。

戦争などないので強くなっても意味がない。

強いて武力を使うところと言えば、冒険者くらいだ。

野に出て魔物を狩り、ギルドに報告し報酬を得る。

冒険者とはギルドに登録すればだれでもなれるもので、EランクからSSランクに分類され、それによって受けられるクエストが変わってくる。

Aランク以上の冒険者と言うのはまれで、そう言った人たちは貴族や王宮に召し上げられることもある。

そして、SSランクのその上をいくものを勇者と呼ぶのだ。

別に勇者になりたいわけじゃない。

ただ自分を見て評価をしてほしいだけなのだ。

もし、自分が王族ではなくただの平民に生まれたのなら、


「いまよりも じゆうだったかも しれない。」


俺のためなど都合のいい理由をつけて、俺は王宮の、自分の部屋に軟禁されている。

五歳の子供が部屋から出ることも許されず、知るのは部屋から見える庭のみ。

幼いとはいえ、なぜ王宮の中ですら自由に見て歩くことができないのか。

話ができるのはマリアとキュリロス師匠とジャン兄様。

腹違いとはいえ、なぜ他の兄弟と話すことができないのか。

母上も父上も話すことには話すが、いつも会話は一方的だ。


「だれも おれのはなしなんて きいてくれない。」


子供の時から、この世界に生まれてからずっと心の奥底にしまっていた思い。

俺を見れば顔をしかめる使用人たち。

憐れむだけ憐れんで、自分可愛さに俺を見捨てて、それなのに俺を身の程知らずだと蔑む。

しょうがない。

だって誰だって自分が一番可愛いんだ。

しょうがない。

しょうがない。

しょうがない。

しょうがない………。


「さみしい…………っ!」



「ライモンド様…………。」

ぎゅっとマリアが俺の体を抱きしめた。

「ライモンド様。もっと泣いてください。」

そう言われて初めて、俺は自分の頬を伝う涙に気が付いた。

「マリアはずっとライモンド様の側にいます。あなたのお側にいます。」

「う、ふぁッッ。」

「ライモンド様。泣いてください。」

「ひぅっ!ま、りあッッ。」

「あなた様は聞き分けがよすぎるんです。もっと我儘を言っていいんですよ。」

そのまま俺は生まれた直後を除いて初めて声を上げて泣いた。



そしてその日の晩に予定されていた俺の誕生日を祝う夕食会が中止されたと知らされた。

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― 新着の感想 ―
[良い点] ふざけるな!と怒鳴る点は 流石おっさんからの転生者だと思った。 [気になる点] 最後の方は おっさんの記憶持ち転生者とは思えない程 嘆き。もうすでに設定が崩れすぎている。転生者の設定は…
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