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第七王子に生まれたけど、何すりゃいいの?  作者: 籠の中のうさぎ
学園編

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89/140

89話

ジュゼッペさんと話した次の日、俺はいつも通り学園が終わってから店に顔を出した。

「あ! ライさん!!」

「あなたがジュリアさんの言っていたライさん……ですか。初めまして、店長に言われて今日からここの経営を見ることになりました、ヴォリアです。本日はあくまで、知り合いの店で研修という形で、伺わせていただいています」

見事なまでの無表情。白銀の髪に深い青い瞳。

スィエーヴィルの系統だろう。

「初めまして、俺の名前はライ・オルトネクです。よろしくお願いします」

手を差し出すと、ちらりとそれを一瞥し、しばらく見つめ、そして握った。


…………なんだ今の間は!?

気難しい人なのかな!? 年のころは俺よりもだいぶん年上。

多分二十歳は超えてるんじゃないかな?

「先ほどから、ジュリアさんに店の経営状態を教えて貰っていましたが、わからないことが。あー……多く、ありました。ライさんはしばらく仕入れに関しての業務を担うと伺ってはいますが、少々お伺いしても?」

「もちろんです」

多分、言葉を濁してはいるけど、ほとんどわからなかったんだろうなぁ。

そのあと、俺のわかる範囲での経営に関して話はしたものの、ヴォリアさんの眉間に深いしわが刻まれていくことになる。

「とりあえず、今この店に出ているものの値段をきっちりさせましょう」

「賛成です」

それから俺とヴォリアさんは一日かけて店と、奥にある商品のすべての仕入れ値と売値を記入していく。

もっとも、奥にあるものやジュリアとジネブラさんが仕入れたものに関しては正確な値段がわからないものも多かった。

「よく、これで今までこの店つぶれませんでしたね」

「それは俺も思います」

「…………はぁ。とにかく、何とかします。本当は仕入れ関係でお話ししたかったんですが、しょうがないですね。その話は明日にしましょう」

「賛成です」

あらためてこうやって話を聞くと頭が痛くなるなぁ。

経営を学んでいるヴォリアさんなら余計だろう。

先ほどから何度かこめかみに手を当てている。


「そういえば、ヴォリアさんって商業科の出身ですよね」

「はい? ええ、まぁ。商人の道に進んでますから、それはもちろん」

「あ、あの! じゃあ、どなたか技術科のお知り合いの方いらっしゃいませんか!? 俺、ぜひとも作りたいものがあるんです!」

その言葉に、ヴォリアさんは怪訝そうに眉をひそめた。

「はぁ。作りたいもの……。まぁ、どういったものかにもよりますけど」

「あの、自転車っていうんですけど」

そう、俺は自転車が欲しかった! 学園までちょっと遠いのだ。

いや、もちろん歩ける距離ではあるけど、自転車や車の便利さを知っている『俺』としては、車は無理でも自転車くらいは持っておきたいのだ。

「ジテンシャ? どういうものですか?」

「えっと、前輪と後輪があって、それをつないだ本体の上に人が座れるサドル。そこに座った状態で、車輪を回転させるためのペダルをつけた人力で駆動する乗り物です」

「…………何人か、心当たりがいます。一度話は通しておきます」

「ありがとうございます!」

正直そっち方面には伝手がないのでありがたい!!

これで俺の通学もちょっと楽になる!

そうこう話しているうちにいつもなら店じまいする時間になったので、俺はヴォリアさんとジュリアに挨拶をして帰路についた。


寮へと帰った俺に、後ろから声がかかる。

「ずいぶん遅かったね。今まで仕事だったの?」

自分の家の扉の前で、オリバーとばったり出くわした。

「まあね。オリバーは?」

「学園で今の今まで先生たちと共同研究だよ。この間君が魔法と魔法の相乗効果の話をしただろう?その時に僕が話し合いの場にいたからっていう理由で意見を求められるんだ。確か、何人か魔導士科の先生方が君の担任に話を通すって意気込んでたけど何も話しは聞いてないかい?」

「あーなんかそんなことミューラー先生が言ってた気がする」

「先生方が、ミューラー先生は君と話もさせてくれないと憤っていたよ」

その言葉に俺は目をぱちぱちと瞬かせる。

ミューラー先生の口ぶりだと、別にそこまで俺と話したがっているようには思えなかったから。

「そんなに話したがってるの? 全然俺は話をするくらいならいいんだけど…………」

「一度ライからミューラー先生に掛け合って時間を作ってくれないか? 先生方が何を話されているか、わからなくもないんだけど議論に参加できなくて心苦しいんだ」

「そういうことなら、明日話してみるよ」

じゃあね、おやすみ。と互いに手を振って自室に入った。


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― 新着の感想 ―
[良い点] 自転車つくるのって難しいからねえ 近代の製鉄やチェーンやギアの精度があれば昭和くらいのができてもおかしくないけれど ブレーキの発明もない馬車交通レベルだし かつての大きい前輪にペダルが…
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