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第七王子に生まれたけど、何すりゃいいの?  作者: 籠の中のうさぎ
学園編

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79話

「…………はー。あほ言ってないで、できるとこから消化していこう」

今日郵便受けに届いていた手紙の送り主にふと目を落とした。


【あなたの忠実な番犬より】


ホフレだな?? 自分のことを犬呼ばわりして、なおかつこの住所を知っているということはホフレだな?

頼むからやめろ。

この郵便物を一体だれが届けてくれていると思っているんだ。

街の郵便屋さんだぞ??さぞおかしなやつを見る目でこの手紙を届けたに違いない。

そんないちいち気にしない?? 俺が気にするんだ。やめてくれ。

実は、学園を出る前に、ホフレには定期的に文を送ってもらえるように頼んでいた。

それは王宮を離れるから、王宮内の事情に極端に疎くなってしまうので、新聞替わり、もしくは週刊誌代わりにホフレから情報が欲しかったんだ。

ともかく、返事に書くフレーズ一つは決まった。

【送り名に犬って書かないでくれる?】だ。

送り名はともかく、中身はまともだろう。

俺が頼んだんだ。俺のために動くと約束してくれた下僕だから、きっと中身を俺の期待に応えてくれるはずだ。


【親愛する大天使より尊い 美しきあなた様へ】


手紙を閉じる。

一行目から濃い。

俺の疲れた脳が文章を理解することを放棄した。

いや、さすがに読み間違えだろう。

恐る恐る手紙を開いた俺は再び閉じた。

本当に書いてあった。

いやいやいや、あて名はおかしくても内容は、大丈夫なはず。


【あなた様に会えない日々に、私はまるで色を失ったようでございます。季候の変わらぬはずのこの国で私の手足は冷え、まるで心臓を失ったかのような心地でございます。何を見ても心動かされず、癒されず、いつも思うはあなた様の何よりも深く滑らかな射干玉の御髪にございます。】


再び閉じる。

これは何の手紙だ?

俺へのラブレター?? 暗号書?

そういうのノーセンキュー。

普通に近況報告してほしいんだが。

いや、もともとホフレに近況報告を頼んだ俺のほうが悪かったか?いや、それなら申し訳ない。

ホフレは近況報告に向いてない(対俺に限る)

いやいや、でももしかしたら大切なことが書いてあるかもしれないから、一回はちゃんと読もう。


【そういえば、マヤ様派の中でライモンド様派を名乗る連中がいるそうなので、不敬であると締め上げておきました。

それでは、あなた様のお早いお戻りをお待ちしております。】


と、最後の一文に書いてあった。

「いや、そこもっと詳しく書いてくれない!?」

え!? 俺派って何!? 俺を王に担ぎ上げる集団とはまた別ってこと!?

それともその派閥からさらに分岐したってこと!?

やだ……王宮に帰るのが怖くなってきた。

というか俺が王宮を出てから二日程度だろ?

今日が学園の初日なんだけど??

その派閥いつからあるの。誰が作ったの。なんて主張してるの。

ホフレくーん。情報が少なすぎる!!

俺への愛情表現はいいから情報をくれ!

手紙はそのままぐしゃぐしゃにまるめて炎魔法で焼却処分。

ボウッと音を立てて燃え上がった手紙が一瞬で灰になる。

そのまま目をつむってベッドにうつぶせに倒れこんだ。

あまり王宮には頼りたくないと思っていたけど、一人でできる気がしない。

ここで人脈をちゃんと築いていれば、応援呼べたんだろうな。

もっとも俺は元気にニートしてたからそんな伝手はない!

あっても俺はお忍びでいたいから使わない!!

つまりライ・オルトネクとしてどうにかするしかない。

ここで振り出しに戻るわけか。

商業科ってどんなことに食いつく?

魔導士科はオリバーとベルトランド兄様に今日話した魔法同士の相乗効果の話でもしていれば、興味を持ってもらえるはず。

騎士科は何とか俺が頑張るしかない。

でも一応俺の所属している科なわけだし、こっちの伝手は何とかする。

問題は技術科と商業科。

利益の出るものを発明すれば、いいのか?

例えば自転車とかならどうだろう。

ゴムに類似するものがあるかわからないから、だいぶん乗り心地は悪いだろうが、馬を買うよりも安く済むし、歩くよりも早く目的地につける。

自転車を作ること自体は技術科に、これを流通させるには商業科に。

いや、わざわざ自分から流通させようとしなくてもいいのか?

俺のアイデアが金になると分かれば自然と商業科とはつながりが持てると信じたい。

アイデア帳でも作るかな。

もっともアイデアは『俺』の記憶だより。

どうやったら作れるのかわからないけど、あったらいいな、こんなのほしいなを書き溜めていく。

で、何かの拍子に技術科もしくは商業科の人の前でポロリしよう。


先ほどまで、ぐるぐる頭の中に情報と考えが渦巻いていて眠れなかったのに、いつの間にか俺の意識は落ちていた。


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