59話
長らくお待たせしました。
更新頻度は低いまま、少しずつ投稿していこうかなと思ってます。
「イリーナ。今日はキュリロス師匠とマリアに会いに行くよ。」
「はい、かしこまりました。ライモンド様。」
今日はめでたい日だ。
結局マリアがホフレに攫われた事件の後、マリアはキュリロス師匠と結婚した。
俺は二人に、グリマルディ公爵から結婚の許可を得てから正式に報告を受けた。
本当は結婚してからもマリアが俺の側付きにという話だったのだが、結婚してすぐに子供を妊娠、その後双子の男の子を出産したため流石に子育てしながらは働けず後任に引き継いだ。
その後任が今俺の髪を整えてくれているイリーナ・プロツェンコ。
銀色の髪をハーフアップにしており、結い上げた髪は頭の高い位置でお団子にしている。
元は北の国の出身らしく、チェントロには魔法を学ぶために学園に来たことがきっかけらしい。
そのまま、北の国よりもはるかに暖かいチェントロの国土と文化に心惹かれたイリーナは学園の教授からの推薦を得て王宮の礼儀見習いとしての職を得たらしい。
元々北の国の伯爵家の出なので家柄的には申し分ないこともあり、あわよくば俺の妻にどうかという外交的な意味合いも含めて俺の側付きになった。
その策略はだれがめぐらせたかなんて考えたくもないけどね。
イリーナは十六歳。そして俺は十二歳になった。
今日はマリアとキュリロス師匠の子供が生まれて五年目の誕生日です。
俺は早ければ今年、遅くとも再来年には王宮を出る。
ジャン兄様も同じだ。
「よし!せっかくマリアたちが来てくれたんだから、ちょっと早めに応接室に行こうか?」
五年でちょっと身長が伸びた。
と言っても日本だとまだ小学六年生程度。
身長は160㎝くらいだろうか。ようやくキュリロス師匠の鍛錬で筋肉がついてきたころだ。
さてさてゼノンとネストル、マリアたちの子供はどれだけ大きくなっただろうか。
双子なので両方五歳。
毎年彼らの誕生日を祝っているのだが、いかんせん彼らも小さいし、俺はあまり王宮から出ることはないので年に数回しか会えない。
ただ、キュリロス師匠は依然として俺の警護と剣術指南にきてくれているので、二人の様子は毎日のように聞いてはいる。
そろそろ部屋を出ようとソファから腰を浮かしたとき、コンコンと部屋をノックする音がした。
「どうぞ。」
入室を許可すれば、扉を開けたキュリロス師匠が顔をのぞかせた。
「ライモンド様。そろそろご準備が終わられたかと思いまして。お迎えに参りました。」
今日、キュリロス師匠自身は休日のため、鎧ではない。
「………せっかく早く行って待ってようと思ったのに。」
「ははっ。さすがにライモンド様をお待たせするわけにはいきませんので。ライモンド様のことですからマリアと私たちよりも早く部屋に行って驚かせようとしたでしょう?」
「ばれてるー。」
「ずっと一緒に居りますからなぁ。」
ほがらかに笑うキュリロス師匠が俺の後ろに控えていたイリーナに会釈をしつつ、扉を開けてくれた。
なので、そのまま部屋を出て、マリアたちの待つ部屋に行く。
元々俺に会うため、毎回事前に長ったらしい申請をバルツァー将軍に出しているため東の区画にある応接室だ。
一応マリアたちの待つ部屋に入る前に形だけのノックをしてから扉を開ける。
「マリア!ゼノン、ネストル!久しぶり!」
「ライモンドさまー!」
「ら、ライモンドさま!!」
わー!と歓声を上げながらマリアとキュリロスの子供であるゼノンとネストルが走り寄ってくる。
流石に俺は王族だとマリアたちに教えられているためか飛びついてくることはないが、俺の足元までは飛んでくる。
「ゼノンもネストルも元気だったか?」
「はい!ゼノンはとってもげんきです!」
ピシィ!と背筋を伸ばし、キュリロス師匠の真似だろうか?手を胸に当てて騎士団の礼を取る。
今年五つになるゼノンは、マリアと同じキャロットオレンジの髪からキュリロス師匠と同じ灰色の耳が生えた男の子だ。
瞳もキュリロス師匠によく似た碧色だ。
「ぼ、ぼくもげんきです!あの、ライモンドさま。ぼく、ライモンドさまに去年いただいた本ぜんぶ読めました!」
ネストルはゼノンと違い本や勉強が好きな男の子だ。
髪の色はキュリロス師匠の毛と同じグレーだが、猫耳はなく目は琥珀色をしている。
その手には去年俺がネストルにあげた子供向けの本が抱えられていた。
「うあーーーー!!もう二人とも可愛いよ!」
ものすごく俺に懐いてくれる弟のような二人が可愛くて両腕で二人をぎゅっと抱きしめる。
「うわぁ!」
「きゃー!」
嬉しそうに叫ぶ二人も俺の体に腕を回してくれた。
「ふふっ。ゼノン、ネストル。ライモンド様が座れないわ。」
そう言って部屋の奥からマリアが歩いてきた。
「お久しぶりでございます、ライモンド様。」
「うん、久しぶり、マリア。」
マリアたちをいつまでも立たせておくわけにはいかないので、ゼノンとネストルの手を引いてソファに座った。
キュリロス師匠とイリーナも部屋に入ってきて、キュリロス師匠はマリアのそばに、イリーナは俺の後ろに控える。
「本当に久しぶりだね。ゼノンもネストルも元気そうで安心したよ。」
「ふふ!二人ともライモンド様に会えるって最近はずっとそわそわしていたんですよ。」
「か、かあさま!ライモンド様には言わないでって言ったのに!」
ゼノンが顔を赤くして、マリアに向かって頬を膨らませる。
ネストルはゼノンのように声をあげることこそなかったが、同じく恥ずかしそうに顔を赤くしてうつむいてしまった。
かわいいかよ。
「そう言えば、ライモンド殿下。あのお話はもう聞かれましたかな?」
俺の警護についたキュリロス師匠がふと、そう声をかけてきた。
「あの話?」
残念ながら心当たりのない俺は、その言葉にキョトリと目を瞬かせる。
「ええ。どうやら我々が本になるそうです。」
「………は?」
「なんと、8/2に発売予定だそうで。」
急なキュリロス師匠の話に頭が混乱する。
「Amazonでも予約可能ですぞ。」
ピンと指を立てたキュリロス師匠がどこか誇らしげにそう言った。
「待って!!書籍化って、俺何すりゃいいの!!?」
というわけで、実は書籍化致します。
我が子たちが大変美麗に描かれておりますのでよろしければお手に取っていただければ幸いです。
というか、私の話はもういっそのこと読まなくていい!でも!!キュリロス師匠を見て!マリアを見て!!ライモンドとかジャン兄様とかジョン兄様とか見てほしい!!!!!!
「第七王子に生まれたけど、何すりゃいいの?」一迅社さんから8/2に発売します!!
ほんと表紙だけでもいいからみんなうちの子たちを見てくれ!!!!




