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第七王子に生まれたけど、何すりゃいいの?  作者: 籠の中のうさぎ
幼少期編

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44/140

44話

俺の周りでカリーナ派とマヤ派の牽制が始まったことにより、今まで以上に自由がなくなった。

依然としてキュリロス師匠はバルツァー将軍にこき使われて機嫌が悪いし、ボッサが警護と称して俺の部屋に入ろうとするのでマリアの機嫌も悪い。

俺と兄様たちが会えば周りがうるさいので会えず、せっかく俺と交流を持てたのに、とアンドレア兄様なんかは俺と王宮内で目が合うたびに不満そうに顔をゆがめていた。

周りの目など気にしないベルトランド兄様と、そもそも派閥に関係のないジャン兄様だけが俺に会いに来てくれる。


俺から会いに行くことはないけどね。

だって俺が部屋を出るとろくなことにならないから。

絶対群がるでしょ、貴族たちが。

キュリロス師匠もいないのに、そんなことできない。

ボッサは信頼できないしね。

十中八九ボッサはバルツァー将軍の送り込んできた耳であり目だ。

そうでなければ、あまりにもタイミングが良すぎる。

キュリロス師匠は名誉貴族とはいえ、その経歴から下手な貴族がほいほいと命令を出せるわけではない。

父上との契約で、この国の王族の警護が第一優先事項になっている。

だからこそ公爵位を持つ、それもこの国の国防を担うバルツァー将軍くらいしかキュリロス師匠に別の任務を課すことなんてできない。

そのキュリロス師匠と入れ替わりで入ってきたのだから、やはりボッサはバルツァー将軍からの間者だろう。


すぐ近くに目と耳があるのに他の貴族に餌をばらまくなんてことできない。

今の俺は、俺の後ろにいる誰かが俺に入れ知恵をしているという構図があるからこそ安全圏で見ていられるのだ。

後ろ盾がいるのであれば、俺を取り込もうと俺に手を出せばその何某かが出てくる。

正体不明のミスターX。それが抑止力になり、防波堤になる。

そのミスターXが全くの虚像だと知られれば、直接俺を取り込もうと必死になるだろう。

そうなったら俺ではどうしようもできなくなる。

だから俺は俺自身で考えて発言していると思われては駄目だ。

今餌を撒くために他の貴族と腹の探り合いをすれば、しばらく誰にも会っていなかったことはバルツァー将軍に筒抜けだ。

そのうえでバルツァー将軍にしたのと同じような駆け引きを別の貴族とすれば、バルツァー将軍は俺の背後に誰もいない可能性を視野に入れ始めるだろう。

だから今の俺にできることは部屋で元気にニートをするだけだ。

勉強はマリアが初歩的なことを教えてくれるから誰も部屋に入れる必要もないし、部屋から出る必要もない。


このボッサが優秀かどうかは正直今のところ分からない。

普段が素であるとするならば、あまりにも阿呆すぎる。

俺を警戒させてどうする。それでも間者か、スパイか?

もしこれが俺を油断させる罠だと怖いから警戒は怠らないけどさ。


まあ、何はともあれ。ボッサが俺の部屋に警護にやってくるときに部屋に居座ろうとすることと、警護から外れる時に部屋に居座ろうとすること以外はおおむね平和だった。

だからこそ、忘れていたのかもしれない。

俺はあくまで王族だから、危害を加えようものなら国賊となる。これはジャン兄様にも言えることだ。

キュリロス師匠は言わずもがな剣術においては最強クラスだ。

じゃあマリアは?



「マリアが来ない。」

陽はとうに高く昇っているはずなのにカーテンが閉まっているせいで部屋の中は薄暗い。

いつもなら、俺が起きる前には隣の私室のカーテンを開け、寝室の横の衣裳部屋からその日俺が着る服を取り出しベッドわきのサイドテーブルに用意してくれる。

それからは俺が起きるまで続きの従者の間で待っているのだ。

遅くとも、俺が起きて数分の間には部屋に来て、俺を起こしに来てくれるのに。

「ライモンドさまー!ああぁぁ?あれ?ライモンド様………?まだ寝てる……?いや、体調不良……、にしてもおかしいな。」

俺が寝ている隣の部屋、私室の方からボッサの声が聞こえてくる。

夜間の警備の者から警備を変わったらしいボッサがいつものように無遠慮に俺の私室の扉を開ける音が聞こえた。

戸惑う声。最後には若干の焦りが混じっている。

腐っても兵士である。足音を消したボッサが静かに隣の部屋を歩き、光源を確保するためかカーテンを開ける音がした。

そしてその少しあと、ゆっくり静かにボッサが俺の寝室のドアを開けた。


「…………ライモンド様?いらっしゃいますか?」

潜めた声。平素よりも数段低いその声に、俺は布団を蹴り上げた。

それと同時にボッサが剣を抜き俺へと向けてきた。

「って、ライモンド様!?」

慌てて剣を納めたボッサが俺のベッドの側まで足早に、しかしきちんと周囲を確認しながら歩み寄る。

「今日はどうかなさったんですか?普段よりも随分と遅いですが………。マリアさんはどうしたんですか?」

ベッドのすぐわきに跪き俺にそう尋ねるボッサは、やはり焦っているようだ。

それでいて、周囲を警戒するように視線をせわしなく巡らせている。

正直、これが演技かどうか。ボッサが無能の皮をかぶった優秀な男なのかどうかなんてもうどうでもいい。

今まで俺はボッサに直接話しかけたことはない。

それはマリアに対して無体を強いたからという理由であって、別に俺に対して無礼だからなんてそんなことどうでもいい。

何よりも、俺にとって一番重要なことはマリアの安否だ。


七年。俺が生まれてから一度もこんなことはなかった。

俺にうつしてはいけないからと、風邪をひいた時を除いて一度もマリアは俺の世話係を離れたことはない。

マリアだって年頃なんだ。城下に買い物だって行きたいだろう。友人と遊びにも行きたかっただろう。

父に言われた通り婚約者をさっさと探すこともできただろうに。

それでもマリアは俺を優先したのだ。

時を、その命を俺のために七年間も無駄にしたんだ。

同情であれ、何であれ。それが事実だ。


何も答えない俺に、いつものことだとボッサがきょろきょろと周囲を見渡しマリアの姿を探す。

「ねぇ、ボッサ。」

俺に話しかけられたことがよほど意外だったのか、わずかに目を見開いたボッサに視線だけよこす。

「お前も恩には報いるべきだと思うでしょう?」

なんのことかわからない、と言いたげな表情を浮かべるボッサに、俺は笑みを浮かべた。

「共同戦線を張りますよ。マリアを探し出す。」


やべえ

ライモンド氏が18歳になってた

7年間ですな


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