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第七王子に生まれたけど、何すりゃいいの?  作者: 籠の中のうさぎ
幼少期編

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28話

「あー、やっぱりアンとベル兄さんだー。」

言い合うアンドレア兄様とベルトランド兄様を怒鳴っていると、部屋の入り口からひょっこりとピンクの髪の男性が顔をのぞかせた。


「あれ?ライモンドだー!どうしてここにいるの!?あ、おれオルランドだよー!うわー!あんまり話したことないけどわかるかなぁ?」

ピンクブロンドの髪にフェデリコ兄様と同じ金色の瞳。

身長は多分数いる兄様たちの中でも一番高いんじゃないだろうか。

オルランド兄様は、学園に入学してすぐオッキデンス王国に留学し、そのままその国の一人娘である王女に一目ぼれし単身婚約にまでこぎつけた猛者だ。

ふわふわとしている割に、恋をしたら一直線なところは父上にそっくりだ。

オルランド兄様はフェデリコ兄様と同じカリーナ様の子供なのだが、なぜこんなにも表情に差があるのか。

フェデリコ兄様の顔が眉間以外表情が死んでいるのに対し、オルランド兄様はむしろすべての表情筋が緩みまくってる。

周りに花でも飛んでいそうなほど柔らかな笑みを浮かべるオルランド兄様が近寄ってきて俺の手を握りぶんぶんと上下に振った。


………………うん。なんというか、毒気を抜かれた。


「お久しぶりです、オルランド兄様。こうやって話すのは初めてですよね。」

「うん!おれさ、普段フランのところにいるでしょ?あ、フランっておれのお嫁さんね!だから、ずっとライと話したいなって思ってたんだー。」

えへへー、と笑うオルランド兄様はそのまま俺の横に移動して座る。

すかさずルドさんが紅茶を出して、オルランド兄様は当たり前のようにそれを嗜む。

慣れているんだろうなぁ…………ルドさん。


「えっと………。オルランド兄様はオッキデンスで暮らしてるんでしたっけ?」

確か母親が違うアンドレア兄様とオルランド兄様は同じ年のはずだ。

「そうそう!おれとアンが学園に入ってからね、2人でオッキデンスに留学したんだよ。で、おれはフランと会ってそのまま普段は向こうにいるんだー。」

嬉しそうにそう話すオルランド兄様に、正面に座るアンドレア兄様がちょっと拗ねた表情を浮かべた。

「ね、オーリー。そのさー、アンって呼び方やめてよねー。女の子みたいじゃん。」

「えー。でも、おれにとってアンはアンだもん。昔はアンももっと女の子みたいだったし。」

「たしかに。昔はあんなに可愛げがあったのになぁ。」

ベルトランド兄様が残念そうにそう言うと、アンドレア兄様が余計に顔をしかめた。

「お前と俺ひとつしか年違わないじゃん。兄貴面しないでくれない?」

「事実私はお前の兄なんだが?」

「俺はお前のこと兄だって認めてないし。」

つんっとそっぽを向くアンドレア兄様に、ベルトランド兄様が仕方なさそうにため息をついた。

「ベル兄さんも相変わらずアンと仲いーね!」

「誰が!こいつと!!」

いや、たぶんアンドレア兄様とベルトランド兄様は仲いいと思うよ?でもさ、見ただけで互いに素直になれてないってわかるじゃん?

そんなのあれだけ言い合うアンドレア兄様とベルトランド兄様が急に素直になるわけないじゃん。


「ところで、オルランド。フランキスカ嬢とは、うまくいっているのか?」

いがみ合うアンドレア兄様とベルトランド兄様の二人を横目に、フェデリコ兄様はわずかに胃の辺りをさすりながらそうオルランド兄様に話を振った。

「えぇ!フランの話ききたい!?えへへー、フランってばすごくかわいいんだよ!この間もねー、」



フェデリコ兄様の言葉にオルランド兄様が喜々とその婚約者のフラン?様のことを話し始めた。

しかし内容が砂糖を吐きそうな惚気話だった。


「あのねー、えへへ。オッキデンスって装飾品とかに力入れてるんだけど、フランがおれにこの指輪プレゼントしてくれたんだー。」

だの、

「おれがさー、勉強のために他の女の子と話してたらさ、フランってば嫉妬してむくれちゃうんだよ。でもそれがまた可愛くてね、後ろからしばらくぎゅーって抱きしめてたら控えめにおれの腕に手を添えるんだー。もうその仕草がいじらしくってかわいくって!」

とか、

「フランってばね、パーティーの時は必ず金色と桃色を身に着けてくれるの!ね、ね!なんでかわかる!?」

「……………オルランド兄様の髪の色と瞳の色と一緒ですね。」

「そうなんだよ!!!もう!かっわいいよね!?だからねー、俺もフランの髪の色と同じ紫の宝石つけて、着るドレスローブの色は必ずオレンジをメインにしてるんだぁ!えへへー、これね、フランから言い出したんだよ?かわいいよねー、虫よけだってぇ!」

嬉しそうにふわふわ笑うオルランド兄様の話に、そろそろうんざりしてきた。


実を言うと、母上と父上が仲直りしてからと言うもの、母上にはやたらと恋愛相談をされるのだ。

やれアブラーモ様は何が好きだとか、アブラーモ様にあれをもらっただの、アブラーモ様に素敵な詩をいただいたが何と返そうかとか。

糖分過多だ。もう惚気はいい。



ふわふわと未だフラン様ののろけを続けるオルランド兄様。

そして先ほどのオルランド兄様の発言から再びいがみ合いを始めたベルトランド兄様とアンドレア兄様。

言い合う二人をちらちらと気にしながらも、止まらないオルランド兄様の惚気話を聞くフェデリコ兄様にはぜひとも胃薬を贈って差し上げたい。

コミュニケーションが壊滅的だと思っていたが、どうやら兄弟間ではうまく潤滑油としての役割をこなしているようだ。尤もそのために胃を犠牲にしているようだが。

しかも微妙にスキルが足りなくて全体を制御できていない感が否めない。



「な、ん、で!!一年しか変わらないのに、お前そんな偉そうなんだよ!研究するしか能がないくせに!」

「ホォー?その私の研究のおかげで各国との協力関係が結べているのはどこのどいつだ?ん?」

「うっざ!!押し付けがっましー!!」

「お前こそ、自分のおかげで外交が上手くいっているなどと言っているが、結局は周りの下準備があってこそだろう。もう少し謙虚になったらどうなんだ?」


「でさー!その時のフランの顔がもうかっわいくてー!!」

「そ、そうか。」

「あ、あとはおれたちふたりで城下町をデートした時の話なんだけどぉー!」



「……………カオスか?」


帰りたくなってきた。


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