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第七王子に生まれたけど、何すりゃいいの?  作者: 籠の中のうさぎ
幼少期編

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15話

なぜジャン兄様の体が弱いのか。

人と亜人、ノトス連合王国出身のものとの間に産まれた子供は必ずどこかに欠陥を抱えている。

これがこの世界での共通認識だ。

しかし父はこの世界を代表する五大国の代表として、またノトス連合王国とよりよい関係を作るためにとノトス連合王国の代表種族であるエルフの族長の娘であるソフィアさんを側室に迎え入れた。

そして生まれたのがジャンカルロ兄さんとジョバンニ兄様だ。

しかし周りが心配したとおり、ジャンカルロ兄様もジョン兄様もそれぞれ問題を抱えている。

ジャン兄様は先日の南の庭園での出来事で実際に見た通り、体が著しく弱い。

いつもしんどそうで、貧血気味である。

元々体が弱いというのもあり、免疫力が低くすぐに何か病気にかかる。

最近は髪や肌も荒れてきているようだった。

逆にジョバンニ兄様は、そう言った身体的には特に問題はないのだが、エルフであればだれでも使える魔法が使えないのだ。

それは自然とともに生きるエルフにとっては致命的な欠陥ともいえる。

ではそれがなぜ発生するのか。

同じ亜人族同士ではそのような問題は起きない。

しかし亜人は亜人でも別の種族の者同士、または人と亜人の間には必ず何か問題を抱えた子供が生まれるのだ。

そしてそれは未だに原因がわかっていない社会問題の一つだ。

「ちなみに、ベルトランドにいさまはなぜだとおもいますか?」

「ふむ。それは難しい問題だ、が。何か種族に関する根本的な部分が関係しているのではないかと踏んでいる。」

「こんぽんてきなもんだい………。」

「そうだ。今一番有力な説は、人が下位種族で亜人が上位種族だという考えだ。上位種族の力に下位種族の体が耐えられないゆえに体が弱い。または体を守るために体が力を捨てた結果だという考え方だな。」

これが普通の大人なら、五歳児に対して下位種族だとか上位種族だとかいう言葉を使わないだろう。

しかしベルトランド兄様はいい意味で俺を子ども扱いしない。

「こうさつとしてはわかりますが、どこかさべつてきですね。」

「亜人族は精霊に最も近い性質を持っているからな。人族は魔法を使えるかどうかは個人の才能によるが、亜人族はハーフを除いて全員が必ず魔法を使える。だからこそハーフは混じり物と忌み嫌われるのだ。見た目が上位種族である亜人の特徴を継いでいるからこそ、余計に縁起が悪いと言われるのだ。」

そこまで話を聞いて自身の中で一度その現象について考えてみるも、もっと単純な問題のように思えてならない。


「そもそもひとのせいしつもついでいるのだから、まほうがさいのうにさゆうされるのはあたりまえでは?」

そんなもの白人と黒人が結婚したとして、肌の色は黒いほうが優性遺伝なのだから褐色の肌の子供が生まれる確率の方が高い。

なら単純に亜人と人族では亜人の遺伝子が優性遺伝子なのでその身体的特徴が表に出やすいだけなのではないだろうか。

しかし優性や劣性とどちらが出やすいという確率的に決まっているだけで、それも必ずではない。

「ひととあじんのこどもなのですから、りょうほうのせいしつをついでしかるべきでしょう?ひとがまほうをつかえるかいなかがさいのうにさゆうされるのであれば、はーふのこどももさいのうにさゆうされていたとしてもおかしくないでしょう。」

「……………ほぉ?」

ベルトランド兄様が面白そうに紅茶の入ったカップをテーブルに置き、俺の方に身を乗り出す。

「ハーフが魔法を使えない理由が人との間に生まれたがゆえに人の性質を継いで才能に左右された結果だとして、体が弱いのはどう説明する。」

「それはあじんとひととのあいだでのせいかつのちがいをみてみないとわからないですね。さんこうまでに、ハーフのせいかつしゅうかんはひとよりですか?あじんよりですか?」

「亜人だ。」

「しょくせいかつやうんどうしゅうかんもですか?」

「無論。」

だとすれば、

「えいようしっちょうでは?もしくはかろうですね。あとはたんじゅんにきおんにじゅんのうできていない。」

エルフは自然から、獣人は生肉から、有鱗族は水から栄養を補給する。

そのため普通人が食べるような食事はあまりとらない。

なので、栄養の吸収器官が人よりに生まれた子供なのにも関わらず、他の亜人と同じ食生活をしていたらうまく消化吸収ができずに栄養失調に陥る可能性は大いにあり得る。

「栄養失調…………。体を動かすのに必要な栄養が足りていないということか……………。一度ジャンカルロに私たちと同じ食事を勧めてみるか?」

「まさかとはおもいますが、いままでジャンにいさまもほかのえるふとおなじしょくじを?」

「その通りだ。」

その言葉に俺は思わずため息をつきたくなった。

「なぜこのじゅうねんのあいだにえいようしっちょうのかのうせいにきがつかなかったんですか。」

「そもそも栄養失調なんて言う言葉は今初めて聞いた。だがなるほどどうしてしっくりくる呼び方だ。栄養失調………。お前の名前で医学部に申告しておこう。」


この世界の科学の知識が低いことは察していたが、科学の知識が低いということは科学で解明した様々な医療の知識も同じく低いということだ。

俺は深いため息を吐いた。

よくよく考えてみればジャン兄様の体調不良のすべてが栄養失調の症状だ。

倦怠感に貧血。そもそも体を作る基礎的な栄養が足りていないのだから、髪や肌も荒れるに決まっている。

俺の方こそなぜその可能性に気が付かなかったのか。

「いますぐにでもジャンにいさまににくとさかなとこくもつをたべさせてください。こめをくえ、こめを。だいずをくえ、だいずを!!」

よくよく思い返してみれば血を出せばなかなか止まらないなんてビタミン不足じゃないか。

足のむくみも手足のしびれも栄養の不足による症状の一つだろう!?

「いますぐにわとりのたまごをジャンにいさまにくわせてください。」



後に、この時の据わった目と今まで一度も聞いたことがないような低い声は二度と聞きたくないとキュリロス師匠に言われた。

正直すまんかった。


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― 新着の感想 ―
良質な読み応えです。 さて、ジョンの方の食生活は、どうなのでしょう。 ジャンと同じ症状ではなかった様ですが、ジョンは、人間同様の物も食べていたのでしょうか。魔法云々との関連も気になりますね(後になって…
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