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第七王子に生まれたけど、何すりゃいいの?  作者: 籠の中のうさぎ
学園編

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102/140

102話

 それ以降、ベルトランド兄様は混合魔法に関してほかの教授陣と話をするとかで研究室を後にした。

なので、オリバーに一から神聖文字を教えて貰う。

 基本的に魔方陣は神聖文字を使用する。

 世界最初の魔法は妖精からノトス連合王国に住まう亜人に伝えられた。 その妖精の使う文字が、神聖文字。 すなわち、神が使う聖なる文字というわけだ。

 神聖文字はアルファベットよりも、どちらかと言うと象形文字のほうがイメージ的には近い。

一文字一文字が意味を持ち、それの組み合わせで単語の意味が変わるというわけだ。

しかも、文字数は漢字のように多いわけではない。

 ファンタジーの定番、ルーン文字だっけ? それに近い印象を受ける。

「それにしても、一年目なのにもう留学の藩士が出ているのか」

 真面目に神聖文字に関しての考察をしていると、オリバーがそう言った。

「あー。 俺も今日初めて聞いたけどね」

「留学なんて、毎年学園全体から数人しか行かないぞ。 それもほとんど上流階級の方たちのための社会見学の意味合いのほうが強いものだしな」

「そうなの?」

 意外と言えば意外だが、確かにこの世界の言語やらなんやらを考えれば納得はできる。

 言語は世界共通言語。 学園は各主要国にあり、どの国の学園に通うかは個人の自由。

 入学条件はすべて統一されていて、よく言えば平等。 悪く言えば多様性がない。

「留学先ってどうやって決まるの?」

「希望の留学先があれば、そこに。 そうじゃなかったら担当教授の勧める留学先だって話だ。 まぁ、僕には縁がないだろうけどね」

 苦笑いを浮かべるオリバー。

「え、でも。 だとしたら、何のためにミューラー先生は俺を留学に行かせるんだろう」

「さぁ…………? でも、ミューラー教授は元Aランクの冒険者だろう? 何かしら意味はあるんだと思うけどなぁ。 それより、今はそのミューラー教授とベルトランド教授に言われたこっちに集中しようか」

「はーい」



◆◆◆◆◆



 ベルトランド兄様とオリバーのところで神聖文字の勉強を始めて早数か月。

 今までほぼ毎日顔を合わせていたシローとアルトゥールとは、ほとんど顔を合わせなくなった。

「おいおい、戦場の指揮官様は魔導士科に入学しなおしたんか、コラ」

「お、ライやーん! 久しぶりやなぁ!」

 ここ数か月、ほとんど行動を共にしていたオリバーだが。 今日も今日とてそのオリバーと食堂で昼食をとろうとすると、ちょうどシローとアルトゥールも昼食を取りに来たようだった。

「うわー。アルトゥールの嫌味も久しぶりに聞いたんだけど。 でも今はオリバー一緒だからやめてくんない? 同類と思われたくない」

「んだと、コラ!」

 久しぶりの軽口に、俺の胸倉を掴むアルトゥールだが、その顔には笑みを浮かべている。

「んで? そっちのボッチャンと今はよろしくしてんのかよ」

「うっわ、言い方が低俗ぅ」

「なんなんだ、君たちは………」

 オリバーもアルトゥールの言い方に顔をゆがめ、アルトゥールもそんなオリバーの表情に不機嫌になる。

「ひとまず、互いに紹介するから昼飯にしない?」



 とりあえず互いに昼食を持ち寄って、席に着く。

 事情を知らないほかの生徒たちが、怪訝な表情で俺たちのテーブルを見てくる。

 シローとアルトゥールが隣に座り、向かいに俺とオリバーが座る。

 シローはもともとあまり騎士科だの、魔導士科だのとこだわっていなかったから笑顔だが、アルトゥールはまるで輩だ。

 ひとまず隣に座るオリバーをアルトゥールとシローに紹介する。

「今俺に魔法を教えてくれてるオリバー・ウッド。 ちなみに俺の寮の隣の部屋の人でもある」

「オリバー・ウッドだ。 魔導士科三年目、と言いたいところだが、来学期からはベルトランド教授のもとで混合魔法研究のチームに加わる都合上高等部配属になる」

「え、初耳」

「最近決まったことだからな。 僕も先日ベルトランド教授に話を聞いたばかりだ」

 少し誇らしげにそう述べたオリバーに、アルトゥールは面白くなさそうに眉根を寄せた。

「次に、こっちの好青年がシロー・ナキリ。 俺と同じミューラー先生の講義受けてる同期」

「初めまして。 ボクはナキリ・シローやで! ようナキリが名前やと思われるんやけど、ボクの国ではシローの方が名前になるんよ。 シローでええよ」

 友好的に差し出されたシローの手を、オリバーは意外そうに少し見つめ、それに応えた。

「最後にこの口も行動も悪い輩みたいなのがアルトゥール」

「おい」

 俺の適当な紹介にアルトゥールがビキリと額に青筋を立てた。

「アルトゥール・シーシキンだ。 で、テメェ強ぇのかよ」

「野蛮かよ」

 アルトゥールは野生動物か何かなの? 強さこそ全てなの?

「…………少なくとも、剣を振るしか能がない君よりは総合的に見て僕のほうが優れてる」

「んだとコラ!!」

 オリバーの言葉にガタリと腰を浮かしたアルトゥールを、隣のシローが抑え込んだ。

 え、ていうかオリバーも何煽ってるの。 戦闘狂なの? 同族嫌悪なの??

「俺様はな! こういう軟弱なくせしてすかしてる奴が一番嫌いなんだよ!!」

「奇遇だな。 僕は頭を使うことを自分から放棄してるくせに、いざ頭で戦う者を前にしたらその強さを認められないような臆病者を見ると虫唾が走るんだ」

 なーんでこう互いに煽りあうのかなぁ?

 今日会わせる予定がなかったとはいえ、俺は自分が留学に行く前にこの三人を合わせようとしていた。

 と言うのも、三人で協力して俺がいない間にも混合パーティーの戦い方とか魔法とかの訓練をしてほしかった。

 騎士科の方は俺がいるミューラー先生のクラスに限りだが、魔法の有効性は認められてる。 と、思う。

 一応留学の期間は秋学期のみの半年に満たない期間だが、その間何もしなければ風化してしまう。

「二人とも落ち着きぃ! アルも、今までライと一緒に戦っとったんやから魔法が強いんもわかっとるやろ! 」

「オリバーも! アルトゥールが向こう見ずな戦闘馬鹿なのは俺も認めるけど」

「おいコラ、ライ!」

「これでも、うちのパーティーの優秀なメインアタッカーだから。 大目に見てよ。 ね?」

 主に対人面で問題があるとはいえ、アルトゥールの剣術は目を見張るものがある。

 もしも、俺が今後も平民として冒険に出ることがあるのであれば、ぜひとも一緒に旅をしたいメンバーの一人だ。

 それにはもちろんシローもオリバーも含まれているけど。

「まぁ、こいつの口の悪さに関してはさ。 俺も軽口の叩きあいを楽しんでる節もあるし、ごめんね」

 ごめんね、と手刀を切って詫びる。

 と、アルトゥールならここでもう一言二言文句なりなんなり言うと思っていたが、存外静かなので不思議に思いそちらに視線を送る。

 そこには、何か言いたげに数度口を開くも結局何も言わずへの字に口を固く結び、何とも形容しがたい表情を浮かべるアルトゥールの姿。


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