表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

97/239

2 ブラック・ダイヤモンド


 巨漢のゼノンが睨む中、カリヤの黒マスクから声が響いた。


「お前は挨拶はいらん。俺の質問に答えろ。お前がゼノンか?」

「お前は――名乗らんでいい!」


 ゼノンがいきなり襲い掛かる。その太い腕を振り、巨大な拳がカリヤの顔を襲う。

 その拳が――カリヤの眼の前で止まる。


「ぐっ――力場魔法か!」


 ゼノンは歯を食いしばり、蹴りを繰り出す。

 が、その横蹴りが当たる前に、ゼノンの腹に前蹴りが当たり、その巨体が吹っ飛ぶ。ゼノンの身体が、家具を破壊しながら奥の壁にぶち当たった。


「ぐぉっ…くうぅ――」


 ゼノンが壊れた家具の中から身体を起こす。


「て…めぇ……ナメやがってーッッッ!」


 ゼノンの身体から、凄まじい気力が沸き上がる。その気力は、周りの空気を歪めるほどの威力だった。


 カリヤは眼を見開いた。


「ほう。ギャングのボスなど木偶の棒かと思ってたが……それなりにやるようだな」

「ほざけ!」


 巨体とは思えぬ速さでゼノンが突っ込んでくる。

 ゼノンがパンチの連打を繰り出した。


「オオォォォォッ!」


 ゼノンが咆哮する。ゼノンの拳は、カリヤの魔導障壁に防がれているが、それをぶち破る勢いでゼノンは連打を繰り出す。


「フン、大した威力だな。…そうだ、これを使ってみるか」


 そう言うと、カリヤの手の中に、アブソーブガンが出現した。

 その上部についているメダルから、アイコンが数種類、空中に浮かび上がる。


「ハルトのディギアは――これか」


 ○⇔○、という感じのアイコンをカリヤは触った。

 と、連打をしていたゼノンの眼の前から、カリヤの姿が消える。


「な――何処へ?」

「此処だ」


 気づくとゼノンはカリヤの位置に。そしてカリヤはゼノンの背後に立っていた。

 瞬間、カリヤが剣を抜きざまに振り上げる。


「ガアァッ!」


 ゼノンの右腕が斬り飛ばされ、宙を舞った。

 ボトリ、とその腕が床に落ちた時、周囲にいたゼノンの手下たちは、声を上げることもできなかった。


「う……ぐ――て、てめぇ……何が目的だ?」


 斬られた腕を抑えながら、ゼノンはカリヤに問う。

 カリヤは相手を見下す目つきで言った。


「お前……口の利き方が判ってないようだな?」


 ゼノンの顔色が変わり、その額には汗が流れ始めた。


「わ、判った、オレの負けだ。お、お前をボスとして認めよう。オレは……あんたの右腕でいい。どうだ?」

「質問に答えろ。お前の部下で、一番面倒な雑務を片付けてるのはどいつだ?」


 ゼノンは、なんだ? という顔をして答えた。


「そこの……グレールだが」


 ゼノンは視線だけで、部屋の隅に立っていた眼鏡をかけた男を促した。


「そうか」


 カリヤはそれだけ言うと、ガントレットをゼノンに向けた。

 黒炎が放射されて、ゼノンがあっという間に黒炎に包まれる。


「ぎゃあっ! グガ…ガ…ガァァッ!!」


 絶叫を上げて、ゼノンは黒い塊になって床に転がった。

 ゼノンの部下たちは、声をあげる事もできない。


「グレール、お前は今日から俺の右腕だ」

「……はい。判りました。――ところで、貴方は何者なのでしょう?」


 グレールは、眼鏡の奥の鋭い目つきでカリヤを見つめた。


「俺はカリヤ・ダイヤモンド。こいつらが、俺の部下だ」


 カリヤは後ろに並ぶ手下たちを、ゼノンの手下たちに見せつけた。

 赤目のビヤル、美少女姿のネラ、そしてゲイルとカザンが、それぞれキングバイパー人間と、バイソン人間に変身した。


「「「な、なんだ!?」」」


 驚く手下たちの前で、さらに多くの手下たちがヒモグラ人間に変貌する。

 ヒモグラ人間たちが、ずらりと前に出た。

 手下たちは、その迫力に息を呑む。


「お前らは女に股を開かせてその上前をはねたり、バカを麻薬漬けにして儲けてる最低な連中だよな?」


 カリヤの言葉に、元ゼノンの手下たちは何も言えない。

 皆、冷や汗をかきながらカリヤの言葉を聞いていた。


「どうしてそんな下らない真似をするようになった? 冒険者は命がけなのに、大した報酬が得られない。軍人はもはや家柄で軍隊の採用が決まる。――この国の皇帝は傭兵あがりだってのにな? それで落ちこぼれたお前らは、真面目にやってシケた金稼ぐより、他人からむしる方が利口だと思ったわけだろう?」


 カリヤはそこにいる手下たちの、一人一人の顔を覗き込んだ。

 カシャン、と音をたてて、黒マスクが開く。


「……俺もそうだよ」


 カリヤがにやりと笑う。その口からは、牙が見えていた。


「クソ真面目にコツコツ働いて、ショボイ稼ぎで我慢する――そんなのは、バカのやる事だ。そんな事で満足してる奴らに比べりゃあ、お前らの方がまだ利口だ。だがな、俺がやろうとしてるのは、小銭稼いで満足するような――そんなシケた話じゃねえんだ。お前ら……この国を牛耳ってみたいと思わねえか?」


 カリヤは手下たちを見つめた。


「み…みたいっす」


 そのうちの一人が、声をあげる。


「お、おれも、そんな風に生きれるんなら――」

「オレだって…もっと、デカくなりてえ!」


 次々と、元ゼノンの手下たちの声があがる。

 と、カリヤの黒マスクの口がカシャンと閉じた。


「いいぜ。見せてやるよ。偉そうにふんぞり返ってる連中が、俺たちの足元に這いつくばる風景を見せてやる。その代わり……死ぬ気で俺についてこい!」


 カリヤの声に、手下たちが雄叫びをあげた。


「今日から俺が此処のボスになる。不服な奴はいるか?」


 カリヤの最後の問いに、手下たちが応えた。


「ボス! 今日から――いや、今からボスと呼ばせてもらいます!」

「おれはあんたについて行くぜ!」

「なんでもやりますぜ、ボス!」


 カリヤは満足そうに笑みを浮かべ、中央のソファにどかりと腰を下ろした。


「よし、いいだろう。今日から俺たちは、『ブラック・ダイヤモンド』だ。判ったか!」


 オウ! という大勢の声が、その場でこだました。



〇   ○   〇   ○   〇   ○   〇   ○



「よく判らない事は、よく知ってる人に訊いてみよう!」


 というエリナの案に従って、僕たちは月光堂書店に来ていた。

 店主のジョレーヌは、相変わらずの愛想のない眼鏡姿で僕らを迎えた。


「久しぶりだな、ジョレーヌ! 色々あってご無沙汰してしまった。もっと早くに来たかったんだけど」

「うん。君たちに色々あったのは、ある程度知ってる。街で噂だからね」


 え? 街で噂?


「噂なのか、私たち?」

「今やトップニュースと言ってもいいだろうな。『謎多きパーティー・ブランケッツの実態!』と言ったところだ。――まあ、座りなよ」


 ジョレーヌはカウンターの奥から、そう声をかけた。

 見ると、前にはなかった丸テーブルと椅子のセットがカウンター傍に置いてある。


「素敵だな、ジョレーヌ! いいじゃないか」


 エリナの声に、ジョレーヌは少し照れくさそうな顔をした。


「少し本棚を整理してね。本を選ぶ人が、落ち着いて本が読めるスペースを作ろうと思ったんだ」


 そう言いながらジョレーヌは、テーブルの上に新聞を新聞を置いた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ