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5 ニュー・ブランケッツ・アタック


 僕は叫ぶと同時に、鉄鞭を飛ばした。

 軟化した鉄鞭が、シグマの足に絡む。


 僕はそれを硬化して、押しやった。


「ムッ――」


 狙いがそれて、シグマの身体がキャルの脇を通り過ぎる。

僕とカサンドラが、キャルとエリナの元に駆け寄った。


 残りは一人。これなら――


「みんな、ニュー・ブランケッツ・アタックだ!」

「「「おう!」」」


 みんなが僕のポケットに乗り、アタック体勢に入る。

 そして僕らの姿が消えた。


「ムッ――姿を隠しただと! 何処にいる!」


 シグマが空中に蹴りを出す。無論、僕らはそんな処にはいない。


 まず、エリナの手裏剣が、シグマに襲いかかった。


「ムッ! クソ、こんな小技で――」


 手裏剣を迎撃しているシグマに、空中から突如現れた、鎖剣が飛んだ。


「なに! そこにいるのか!」


 瞬時に鎖剣を弾き飛ばしたシグマが、逆に鎖の位置から僕らに襲い掛かってくる。

 ――それが狙いだ。


 僕はその向かってくる先を読み、逆に踏み込んでいる。

 そしてしゃがみ込んで――地盤軟化!


「な――」


突っ込んできたシグマが、いきなり足をとられて床に埋まる。

 50cmほどもシグマの足が埋まったところで、僕はジャンプした。


「こんな小細工! すぐに脱出できるぞ!」


 そう。シグマが脱出できるのは、予想済みだ。

 重要なのは、頭上をとる事。


「アタック!」


 僕の掛け声で、空中にいる瞬間に、皆が僕から離脱した。

 と、途端に僕らの姿が空中に現れる。


「なにっ! 貴様ら――」


 驚くシグマに、キャルは既に魔法輪を向けていた。


「稲妻の蔓薔薇(ライトニング・ローズ)!」

「グオッ、オオオォォォ――」


 キャルの電撃を喰らったシグマが、呻き声をあげる。

 僕は棒剣をくるりと回すと、柄の球の方を先端にしてシグマに打ち付けた。


「重化落とし!」


 シグマが慌てて左腕で防御する。

 ――が、防御しきれず、棒剣はシグマの肩に喰い込んだ。


 僕らの身体が地面に落ちる――最大重化!


「グアアァッ!」


 ボコリ、と肩を凹ませるように棒剣が喰い込み、シグマはたまらず床に倒れた。

 僕は地面に着地すると、棒剣を手の中ですべらせ逆手に剣先を振り上げる。


 シグマの胸板を踏みつけると同時に、剣先を右肩の付け根に突き刺した。


「グォッ――」


 胸板の装甲を凹ませ、右肩に棒剣の剣先が突き刺さった。

 傍らではエリナとカサンドラが軟着地し、キャルがくるりと回転して床に降りる。


「クッ――ぐ……」


 シグマが呻き声をあげながら、その変身が解除されていく。

 僕は棒剣を抜いて、飛び退った。


 銀髪のシグマの姿が現れ、口から血を吐いた。


「く……お前らの勝ちだ――。だが忘れるな! オレたちを殺したとしても、お前たちの野望は必ず仲間が喰いとめる!」


 なに言ってんだ、この人?


「別に野望なんかありませんし、あなた方を殺そうとも思ってません。――エリナさん!」

「あっちの女性の治癒だろ? 判ってる」


 エリナが走って、スルーの元へ行く。


「なに? ……なんだと――」

「なんだか知らないけど、自分たちが正義の側だって口ぶり止めてもらえませんか? くどいようだけど、ギュゲス・ネイは転生者を勝手に殺してるし、禁猟種の青霊鳥を自分たちの実験のために密猟した悪党だ。それに従ってるあなた方は、むしろ悪の手先です」

「なに……?」


 シグマが呆然とした顔で、寝転がったまま僕を見ている。


「権力の側にいて、それに従わない立場を悪とか決めつけるの止めてもらえませんか? 傲慢で、無神経で、自分たちに都合の悪い者を悪者に仕立てる――エゴイストの偽善者のやり口ですよ。まったく、腹が立つ」


 僕はそれだけ言うと、踵を返した。

 そういう人たちは、前にもいた。僕がいじめられてない事にすれば、都合のいい人たちの言い分だ。


 そういう人たちは、声をあげる僕が「悪者」であるかのように非難した。

偽善者が。思い出すだけで、腹がたってきた。


「……ちょっと耳が痛いな」


 カサンドラが、苦い顔をしながらやってくる。

 僕は苦笑してみせた。


「まだ、気にしてるんですか? 気にしすぎですよ。それより、ニュー・ブランケッツ・アタック、うまく行きましたね! 練習した甲斐があった」

「うん。凄くうまくいった」


 キャルも近づいてきて、にっこり微笑んだ。

 うん、やっぱりキャルの笑顔は最高だ。


 昼間、潜入作戦までの時間に、僕は新しく思いついたニュー・ブランケッツ・アタックを、皆と一緒に練習したのだった。


 本来、屋外だったらもっと高く飛び、エリナは念動力、カサンドラは力場魔法で軟着地する。けど、キャルは高い処から飛び降りても、くるんと回転して着地できることを知ったのだ。


 それで重化落としの前の攻撃をキャルがやることになったのだけど――やっぱり、猫耳はダテじゃなかった。


「治癒は終わったよ。死なない程度には治ったと思う」


 治癒を終えたエリナがこっちにやってきた。


「この虫仮面は?」

「多分、丈夫そうだから大丈夫でしょう。行きましょう」


 僕は皆に微笑んだ。

 みんなも笑い返して、アタック体勢に戻る。と、僕らの姿が消えた。


「ま……待て――」


 シグマが小さい声で呻く。待つわけないだろ、何を言ってるんだ。


 走り出すと、カサンドラがぼそりと呟いた。


「しかしあの男……何故、虫人間なんかに? もっと他のものはなかったのか?」

「わたしもそう思った。虫、苦手だし……」


 キャルが続けて呟く。

 あ。そう……異世界女子には、虫ヒーローの魅力は判んなかったかあ……。


「あははは! いや、面白いな、クオンくん!」

「はあ……」


 笑い声をあげるエリナをよそに、僕はちょっとため息をついた。



   ♦   ♦   ♦   ♦   ♦   ♦   ♦   ♦



「ボス、誰かやってきました!」


 手下の声に、カリヤは眼を向けた。


「……何人だ?」

「一人ですが――」


 手下の言葉に、カリヤは眉をひそめた。


 その男は、扉を開けるとカリヤの前に臆することなく姿を見せた。


 明らかに高級な衣装を身にまとう、貴族である。顔立ちは若そうに見えるが、男前のためか年齢が判らない。水色の髪を後ろで結んでいた。


「……誰だ、お前?」

「ぼくはミゲル――まあ、バルギラ公爵と呼んでくれてもいいけどね」


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