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3 シグマ&スルー


 僕たちの前に立ちふさがる銀髪の男と、丸髪の女を前にして、僕は周りを見た。


「仕方ない、戦って突破しましょう」

「そうだな」


 カサンドラがそう言うと、その右手の中に鎖剣が現れた。

 その様子を見た銀髪の男が、不敵に笑う。


「フッ、やはりそうくるか。ならば仕方ない! 見せてやろう、オレの力を!」


 そう言うと銀髪は、親指を立てたままの右拳を、思い切り左側に伸ばした。


「変身!」


 そう叫んで、ぐっと拳を右に戻す。

 ――え?


 すると男の姿が光りに包まれ、みるみるうちに変化した。

 その光が消えたところに現れたのは――


「……シロスジカミキリ?」


 の、人間形だ。というか、ぶっちゃけ、虫人間というよりヒーローものっぽいスタイルで……ちょっとカッコイイ。


 と、シロスジカミキリ人間は、ババッと素早いポーズをとった。


「ビートライダーΣ(シグマ)!」


 名乗り? というか、この人……ヒーローのつもりなのか?


「トゥッ!」


 姿が消えた。

 と、思った瞬間、僕の傍まで来ている。


「くっ――」


 蹴りだ。僕は腕を十字にしつつ重硬化して、蹴りを防御した。

 と、僕の身体が、蹴りの威力でズズッと下がる。


「ウソだろ……?」


 五角イノシシの突進を受けても動かなかった僕の重硬状態を動かす?

 とんでもないパワーだ。


「なに? オレのキックの受けきるとは!」


 虫ヒーローが跳び退く。


「妙な感触だ……気力を使って防御された形跡もないのに、オレのキックを受け止めきった――貴様、何者だ?」

「シグマ、そいつが『クオン』だ」


 丸髪女性の声に、シグマと呼ばれた虫ヒーローが振り返った。


「なに!? ギュゲス様が捕らえろと命じた、あの『クオン』か!」

「ああ、『重さ』を操るディギアを持ってると言っておられた。重さだけでなく、『硬さ』も操れるんだろう」


 僕は察した。この二人も、あのハルトと名乗った人たちと同じ、転生者で異能者だ。そしてギュゲス・ネイの部下なのだ。


「待ってくれ! 貴方たちは、ギュゲスが転生者を処分といって殺してる事を知らないのか?」

「知っている。それがどうした?」

「どうした? って……なんとも思わないのか? 殺されるのは自分かもしれなかったんだぞ! ギュゲスに仕えるなんて、おかしいだろ!」


 僕がそう声をあげると、丸髪の顔色が変わった。


「お前! ギュゲス様の事を悪く言ったね……ただじゃ済まさないよ!」

「言っておこう! オレにとっては『正義』以上に、ギュゲス様の命令が絶対であるということを!」


 シグマの言葉に、僕は失望した。

 少しでもヒーローみたいかも――と期待した僕がバカだった。


「おかしい事に気付かないなんて――おかしいだろ!」


 僕は叫ぶと、バネ脚でシグマに突進した。

 重硬タックル!


 ――が、シグマは腕を十字にして、僕のタックルを堪えた。

 僅かに後ろに足がずれた程度だ。


「こいつ……僕の重硬タックルを受けきるのか――」

「貴様もやるな――トゥッ!」


 横蹴りが飛んでくる。僕は跳び退いて、棒剣を取り出して受ける。

 ガン、とした衝撃を受ける。


 そこからシグマはパンチとキックの連続攻撃を仕掛けてきた。

 僕はバネ脚で回避しつつ、棒剣で受け流した。


「助勢する!」


 そこへ鎖剣がシグマへと飛んできた。

 カサンドラが鎖剣を戻しながら、シグマへと斬りかかる。

 シグマはそれを躱した。


「フッ、いいだろう。――スルー! お前はそっちの女二人を頼む!」

「判ったよ。あいつ――妙に張り切ってるね」


 スルーと呼ばれた丸髪女が笑みを浮かべた。


「じゃあ、喰らわせてもらうかね!」


 スルーが片手を向ける。と、空中にグレーと白の巨大なシャチが現れた。


分霊体(ファントム)! こっちは霊術士か!」


 エリナの声がする。と、そのエリナにシャチが襲いかかった。


「エリナ!」


 キャルが傍に来て、魔導障壁で防御した。

 シャチが魔導障壁をガジガジ噛んでいる隙に、エリナは両手を交錯させる。


 その手には手裏剣が握られている。四枚の手裏剣がひとりでに飛んでいき、スルーに襲いかかった。


「おっと! そっちは霊術士と魔導士のコンビってことね」


 スルーは微笑むと、念動力で手裏剣を止める。が、手裏剣がすぐに離脱して、再びスルーに襲いかかった。


「フン、此処まで攻撃が届くかしら?」


 スルーはそう言うと、壁へ向かって移動した。

 と、その身体が壁に消えていく。


「え! ウソ!?」


 エリナが眼鏡の奥の眼を見開いた。


「壁に潜れる――ディギア?」


 キャルの言葉に、姿の見えないスルーの声が応えた。


「そう、アタシは『通過(スルー)』。アタシの居場所が判るかしら?」


 そう言うと、スルーが顔を半分だけ壁から出して、微笑んでみせた。

 その顔をめがけて手裏剣が飛んでいく。


 しかしその手裏剣が当たる前に、スルーは壁の中に姿を消した。


「フフフ……この研究棟の壁は耐震、耐火の特別仕様よ。ちょっとの攻撃では、ビクともしないわ」


 その間に、シャチが魔導障壁を破った。


「キャルちゃん!」


 シャチがキャルと噛みつこうとした瞬間、エリナがキャルを押し倒してそれを躱す。再び襲いかかろうとしたシャチを、今度はエリナが念動力で止めた。


 空中を飛んでいた手裏剣が、ボトボトと落ちる。


「キャルちゃん、攻守交代だ。私が守るから、キャルちゃんは攻撃をして! 電撃がいい」

「判った!」


 キャルは魔法輪を取り出すと、胸の前へ掲げた。


「稲妻の蔓薔薇(ライトニング・ローズ)!」


 電撃でできた蔓と薔薇の鞭が、シャチを襲った。

 その一振りで、シャチが消える。


「――大した魔法力だね。けど、ファントムは、霊力があればまた出せるんだよ!」


 壁から姿を見せたスルーが、不敵に笑う。

 その言葉通り、シャチが再び現れた。しかしキャルは、稲妻の薔薇をスルーに向けて放つ。スルーが壁に消えるのを追うように、電撃が壁に当たった。


「どう?」

「――そんなものが、当たるもんか」


 まったく別の壁から、スルーが姿を見せた。壁の中を移動したらしい。

 不意にシャチが消えて、背後から現れる。ファントムを出し直したのだ。


 キャルの頭をシャチが喰おうとした瞬間――その姿が消えた。


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