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2 青霊鳥の救出


 ♦   ♦   ♦   ♦   ♦   ♦   ♦   ♦


 床にうち棄てられた焼死体に、手下たちの顔は青ざめていた。


「いいか……放っておけば、お前らもこうなる。ただし――俺がやるんじゃない」


 カリヤは床に転がった焼死体を前に、手下たちに言った。


「クオンだ。奴が、お前らを皆殺しにする。あいつは、おとなしい顔をしてるが、そういう奴だ」


 カリヤはゆっくりと歩いて、場の中央に移動する。


「あまく見るな。奴はこの場所を知った。次はここを襲撃してくる」

「マジかよ、カリヤ」


 ゲイルが、カリヤに問うた。カリヤは頷く。


「間違いない。奴は必ず何か仕掛けてくる――そういう奴だ」

「じゃあ、どうするんだよ?」


 カザンの言葉に、カリヤは言った。


「この場所は廃棄だ。が、その前に――」


 カリヤは、その他の手下たちを見回した。


「てめえら、むざむざと死にたいか?」


 手下たちは、声を上げられない。


「いいか。死にたくなければ強くなれ! ここにいるゲイルとカザンは、元は三流のEランク冒険者だ。だが今は、どうだ? Bランク相当のボルト・スパイクにもヒケをとらねえ実力になった。それは、こいつらに覚悟と度胸があったからだ。お前らに、それがあるか?」


「オ…オレはあるぜ!」


 カリヤの言葉に、まだ子供に近い若い男が声をあげた。

 それに続いて、おれもおれもという声があがる。


 カリヤは眼を細めた。


「……いいぜ。だったら、お前たちを強くしてやる」


   *


 カリヤは10人の手下を連れて、裏通りを歩いていた。


「ねえ、何処で行くのさ?」


 隣を歩きながら、ネラが訊いてくる。


「ドクター・ロウという男の処だ」

「おお、ドクター・ロウ! 有名人だな。ワシも会うのは初めてだ」


 ケケケと、赤いゴーグルをしたビヤルが笑う。


 やがてロウの診療所に着いたカリヤ一行は、ロウと向き合った。


「おい、ドクロ! こいつらを、ゲイルたちにやったような強化をしてくれ」

「ヒッヒッヒッ! 随分と大勢じゃのう。しかし残念ながら、今は強化となる『素材』がない。何か、モンスターでも狩ってくることじゃな」


 ロウの言葉に、カリヤは眉をひそめた。


「なんだと? 手っ取り早い何かねえのか?」

「そうじゃのう……ヒモグラなら、ギルドの廃棄所に転がっとるかもしれんが」


 カリヤは黙って、ゲイルに首を振ってみせた。ゲイルとカザンが、一緒になって駆け出す。


「しかし、移植手術をしたところで、成功率は半々といったところじゃ。あの二人はたまたま耐久力があったから適応できたが――誰もが耐えれるとは限らんぞ」

「フン、ここで死ぬようなら、そもそも使い物にならねえ」


 カリヤはそう言うと、手下たちを睨んだ。



   〇   〇   〇   〇   〇   〇   〇   〇



 僕たちは呆然としながら、並ぶ瓶に入っている青霊鳥を眺めた。


「青霊鳥を――助け出せないかな」

「う~む、少し見てみよう。一旦、アタック体勢を解除するか」


 そう言うとエリナが、ポケットから降りる。

 キャルとカサンドラもそれに倣い、皆が透明化から姿を現した。


 エリナは各瓶からのチューブが集まってる、集積器の方を見ている。


「う~ん、残念ながら霊力を逆流させるスィッチはない。霊力を奪うだけの装置だ。これから青霊鳥を出したら、生きていられるかは――ほぼ賭けだな」


 エリナの言葉に、僕は言葉を失った。

 青霊鳥を無理に出そうとして、逆に殺すかもしれない。

 ――そんな恐さが脳裏を横切った。


「……出そうよ。それでも」


 不意にキャルが口を開いた。僕らは全員、キャルを見つめた。


「生きていたとしても、こんな機械につながれるだけの生き方なんて……青霊鳥だって望んでないよ、きっと。こんな残酷な仕打ちを――そのままにできないよ」


 キャルははっきりとした、強い意志を持ってそう言った。

 そして僕らを見つめる。僕は頷いた。


「判った。……そうだね、僕もキャルの言う通りだと思う。この瓶から、青霊鳥を出してみよう」


 エリナとカサンドラも、それに頷いた。

 とりあえず、一番、手前にあった瓶を手に取る。


 こうして手にしてる今も、青霊鳥が霊力を奪われている感じが判る。

 僕はロックを解除して、蓋を開けた。


 パシュ、と空気の抜ける音がして、青霊鳥の姿が露わになる。

 そっと取り出した。


 動かない――と思ったが、少し首を振った。

 生きてる。エリナが言った。


「少なくとも、出してすぐに死ぬような装置じゃないな」

「よし、手分けして全部の青霊鳥を出しましょう」


 キャルとカサンドラが、僕の言葉に頷いた。

 それから僕らは、瓶から青霊鳥を一羽ずつ救出していった。


少し時間はかかったが、数えると32羽いる。


「そうだ、カサンドラの収納珠、まだ返してなかった。そもそも、これを返そうと思って、戻ったんだった」


 僕がそう言って、大き目の収納珠を取り出すと、カサンドラが苦笑した。


「もう、クオンが持っていてくれていい。とりあえず、それは生物も保管できる大サイズだから、ここにいる全部の青霊鳥を収納できるだろう」


 僕は収納珠に青霊鳥を全部収納する。これで保護は完了だ。


「さて……目的の証拠集めだが――まず、この瓶を一つ物証として持って行こう。後は研究資料探しだな」

「瓶はキャルの収納珠に入れといて。資料は上の階で、皆で探しましょう」


 僕らは上の階に戻って、その辺の機材においてある書類なんかを調べた。


「多分、これが設計図だな。機能も書いてある――この隅に、ギュゲス・ネイのサインもある。証拠としては充分だろう」

「よし。それじゃあ引き上げましょう。またアタック体勢に戻って」


 再び三位一体の状態になった僕らは、姿を消して研究室を後にした。

 透明なまま、研究棟の廊下を進む。


と、突然、僕らの身体に電撃が走った。


「うわぁっ!」


 衝撃で倒れると、透明化が解除されて、倒れた皆の姿が現れた。


「――ウソ! ホントに? こいつら、全然、姿が見えてなかったんだけど!」

「透明になる魔法でも使ってたのか。しかし、それも無くなった。お前たちの姿は、完全に見えているぞ!」


 女の声に続いて、男の声がする。

 身体を起こしてみると、男女のペアが歩いてきていた。


「こんばんは、泥棒さんたち。ファフニールに忍び込むなんて……命知らずね」


 そう言って微笑んだのは、スレンダー体型の女性だ。頭全体が丸く見えるようなショートカットで、ブラウンの髪をしている。


 隣にいる男の方は、風もないのに風になびいたような銀髪だ。ちょっと見には、少年漫画の主役みたいな感じに見える。男の方が、僕らを指さした。


「大胆不敵な悪党どもめ! 覚悟しろ!」


 なんか、常に勢いがないと喋れないのか、この人。しかし、僕らが悪党?


「僕らは悪党じゃない。悪党というなら、青霊鳥を実験で苦しめてるファフニールの方がよっぽど悪党だ」

「なんの話か知らんが、深夜に忍び込んだお前たちに言い逃れはできない! おとなしく捕まるか、それとも――」


 銀髪の男は、自分を親指で指さした。


「ここで、オレに倒されるかだ!」


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