6 ハルトとの戦い
スーが驚きのまま、僕に言う。
「クオンさんて――転生者だったんですか?」
「そう……なんですよね」
僕は、なんか誤魔化さなきゃいけない気がして苦笑してみせた。
「まあ……クオンさんの能力――リィンカーのものと考えると、納得できますが」
スーが理解の速い人で助かった。
と、ハルトが口を開く。
「クオン・チトー、君は勘違いしている」
「勘違い? 何を?」
「あのカリヤがどう思ってるかは別として、我々は君を傷つける気はない。君を捕らえることが、我々の目的だ」
そうだ。この人たちは、カリヤがランスロットたちを人質にして僕を黙らせたことを知らない。今なら――
「聞いてください! 僕は本当にカサンドラの兵士たちを殺してない。兵士を殺したのはカリヤだ! それに青霊鳥を獲ったのも、ファフニールの仕業です。僕は何もしていない!」
僕の言葉を聞いて――ハルトは表情一つ変えることはなかった。
「そんな事は最初から問題ではない」
なんだって?
「君が兵士殺しをしたとか、青霊鳥を獲ったとか、どうでもいい事なのだ。あれは合法的に君を捕縛するための方便にすぎない。ついでに言っておくが、カリヤが何をしたかなど、どうでもいい話だ。兵士が何人死んで、誰に殺されようと――我々の目的には一切、関係のない話だ」
……なんて事を言う人だ。
少しでも、まともそうな人だと思った僕がバカだった。
「貴方がたは、僕を捕らえてどうしようってんだ?」
「恐れる必要はない」
ハルトは平然と言った。
「我々は、君の敵ではない。――我々は、君をギュゲス様の処へ『戻す』ことだけが使命なのだ」
ハルトは平静な顔をして言った。
その時になって、僕は思い出した。この人は牢屋にいる時、「ギュゲス様に報告だ」と言っていたじゃないか! どうして、その時、気付かなかったんだ。
「ギュゲスって……ファフニールの局長で、片眼鏡の人ですよね?」
「そうだ。異能を持つ君は、ギュゲス様のもとで働く価値がある。ギュゲス様はそれをお望みだ。君も、ギュゲス様のもとに来れば、その手足となって働けるだろう。裕福な暮らしもできる。身分も地位も安泰だ。光栄に思いたまえ」
あの僕を殺そうとした片眼鏡のもとで働く?
――冗談じゃない。
「お断りします」
僕は言った。
「ギュゲスって人に伝えてください。あなたの下で働く気なんかないと」
「君の意志は聞いてない。君は我々に従ってればいい」
結局……こういう連中だ。
僕は、黙って身構えた。
ハルトがため息をつく。
「やはり……力づくでなければ判らないか」
瞬間、ハルトの姿が消える。
「――ぐうっ!」
いきなり背中に衝撃をくらった。何かある、と予期して硬化していたから耐えられたが、そうでなかったらこの一撃で終わりだった。
「クオンさん!」
スーの声が聞こえる。
僕は後ろに向けて棒剣を振った。
ハルトが素早く躱す。
「なに? なんだ、この感触は?」
驚きの表情が現れるハルトを、僕はバネ脚で追撃する。
ダッシュして――重硬タックル!
が! 目の前のハルトが消える。
僕は誰もいない空間で、つんのめってたたらを踏む。
しまった、位置を入れ替えられた!
また背中に衝撃を喰らう。今度は重い。
「ぐうぅっっ!」
僕は地面に顔から倒れ込んだ。
全身に衝撃を受けている。やっぱり、気力ってやつの攻撃は、硬化では無効化できない。
「やめなさい!」
スーが水牛のファントムで、ハルトを襲う。
しかしハルトの剣が振られると、水牛は四散した。
「あなたには用はない。カエデ、この女を止めといてくれ」
「はいはい」
カエデはそう答えると、両手を広げた。
すると炎の円盤が両手の上に二つ現れる。カエデは、その手を振った。
炎の円盤がスーに向かって飛んでくる。交差しながら飛んでくる炎の円盤を、スーは細目を僅かに開けて睨んだ。
「霊式結界!」
炎の円盤が空中で止まる。
炎の円盤の方が、その場で消えた。
「やっぱ、相性でいったら不利だよ、ハルト」
「足止めだけでいい。こっちも、もう片付く」
ハルトが剣を振り上げ、僕の背に向かって振り下ろしてきた。
僕は転がって躱す。が、すぐに横に振られた剣に、脇腹を強打された。
「うっ――ぐぅ……」
またもや走る全身への衝撃。駄目だ、全身をどれだけ硬化しても、結局、振動のように衝撃が伝わってしまう。
……待てよ。振動?
この振動を逆に、一時的に伝えきってしまったら、どうなんだ?
「これで終わりだ! クオン・チトー!」
膝立ちになった僕の肩に、ハルトの剣が振り下ろされる。
肩に剣が当たる。硬化で斬られるのを防いだ直後、衝撃が伝わってくる。
今だ! 軟化!
軟化した身体を、衝撃があっという間に浸透し、伝わりきる。
ここで硬化!
「……なるほど、これでよさそうだ」
僕は立ち上がった。
ハルトが驚きの表情を浮かべている。
「なに? 何をした? 気力のダメージが伝わってないのか?」
ハルトがそう言った直後、僕をめがけて炎の円盤が飛んできた。
「コート・シールド!」
僕はコートを硬化させて防ぐ。
「はあい、選手こうた~い! 大体さ、相性からいったら、この女の相手をあんたがした方がいいでしょ?」
「……仕方あるまい」
僕に向かってくるカエデと入れ替わるように、ハルトが後退する。
カエデは両手を掲げて、炎の円盤を出した。
「あんた、硬くなったりできるみたいだけど、その安っぽいコートでどれだけ防げるの?」
カエデが炎の円盤を投げてくる。
僕はコートでシールドする。が、カエデは次々に炎を投げてきた。
「ほらほらほらほら! どこまで頑張れるわけ?」
僕はその魔法攻撃に耐えきれず、バネ脚でダッシュした。しかし、その僕を円盤が追尾してくる。
すぐ間近で炎の円盤が爆発した。
「ぐあっ!」
「クオンさん!」
「よそ見してる場合か、女!」
スーはハルトとの戦闘で身動きが取れない。
僕は地面に手をついた。地盤軟化!
「え?」
カエデが足元の軟化にぐらついた瞬間、僕はカエデに重硬タックルをくらわせた。




