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5 カリヤの手勢たち


   ♦   ♦   ♦   ♦   ♦   ♦   ♦   ♦


 カリヤの凄みに、眼に火のペイントをしたゲイルが口を開いた。


「わ、判った。おれはやるぜ!」

「お、おい、ゲイル……わかった――オレも…やるよ」


 鼻にピアスをつけてカザンが、弱気ながらも言い添える。

 カリヤはにやりと笑って、ロウを見た。


「だとよ。どうだ、なんかいい方法でもあるのか?」

「う~ん、今二つの方法を試そうと思っているところじゃ。一つはキング・バイパーの体液を静脈注射する方法。もう一つは、ブラック・バイソンの細胞を移植する方法じゃ」

「フン、おもしれえじゃねえか。――おい! どっちがいいんだ!」


 カリヤの声に、ゲイルがまず口を開いた。


「お、おれはキング・バイパーの方で!」

「じゃあ……オレは、猛牛かあ…」


 カザンは心細そうな顔で呟く。カリヤは二人姿を見て笑みを浮かべた。


 二人の施術が済むと、カリヤは二人に言った。


「おい、十人くらいでいいから、金を払えばなんでもやる連中を集めろ」

「い、今からかよ」

「お前らのほうが、ろくでなしに詳しいだろう。俺は『コブラ・ピット』の二階にいる。そこに連れてこい」


 カリヤは行きつけの酒場の名をあげた。そこは素行の悪い連中が集まるので、有名な酒場で、カリヤはすっかり馴染みだった。


 酒場の二階の広い部屋に、やがてゲイルとカザンが声をかけた連中が集まってきた。明らかに人相が凶悪で、素行の悪い連中と一目でわかる者たちだった。


 カリヤはゲイルに訊いた。


「おい、この中で有名な奴はいるのか?」

「あの赤いゴーグルをしてる魔導士――あいつは『赤目のビヤル』って言って有名な奴だぜ」

「おい、ビヤル!」


 カリヤはいきなり、赤目のゴーグルをつけた男を呼んだ。

 頬のこけた顔に赤目のゴーグル。黒い髪は、パイナップルのように逆立っている。


「なんだい?」


 ビヤルが呼ばれて、前に出てきた。


「お前、なんで有名なんだ?」

「ケケ、ちょっと手前にいた奴らを、極大魔法でキング・バイパーと一緒に吹っ飛ばしただけさ。まさか、一人も耐えられんとは思わなかったがな」

「味方殺しか――それで、どうなった?」


 カリヤの問いに、ビヤルは笑った。


「ケケケ、冒険者資格をはく奪だと! ったく、弱い奴をかばいたがる面倒なギルドだぜ」

「フン、面白い奴だな、お前」


 カリヤはビヤルが気に入ったらしく、眼を細めた。

 その時、一角から声があがる。


「おい! ここに集められたのは、それなりの腕利きだろ! なんで、てめえみたいな子供が混じってんだ?」


 声をあげたのは、スキンヘッドで片目に傷のある男だった。


「誰だあれは?」

「『心臓つぶしのジャガード』。モンスターの腹に手を突っ込んで、握り出した心臓を潰すんでついた仇名だ」


 カリヤの声に、カザンが応えた。

 そのジャガードは、傍にいる背の低い子供に声をあげている。


「あの、子供はなんだ?」

「いや…おれが連れてきたんじゃねえがーーカザン、お前か?」

「いや、オレじゃねえ」


 ゲイルもカザンも不思議そうな顔で子供を眺めている。


 子供は薄い緑色の髪をセミロングにしており、その外見は年端もいかない少女だった。背も低く、身体も細く、色が白い。しかしそこには、妖しい美しさがあった。


「面白そうな話をしてたからさ、ボクも混ぜてほしいなって」


 薄緑の髪の少女は、悪気なさそうな微笑を浮かべる。

 ジャガードはカザンの方を向くと、声をあげた。


「おい! 集めてんのは10人じゃなかったのか? ここには11人いる。子供はいらねえだろ!」

「ふうん、集めてるのは10人だったんだ。…じゃあ、一人いらないね」


 少女が微笑する。

 その緑だった瞳が、紅く染まる。


「ぐ……」


 突如、ジャガードの身体が宙に浮いたと思うと、その全身が締め付けられた。

 ジャガードが息もできずに、ただ小さく呻く。


「げ…がっ…ぁッ……」


 右腕がおかしな方向に曲がり、ゴキン、と乾いた音を立てて折れる。

 続いて右足、左足――肋骨が絞られるように、バキバキと音を立てて崩れる。


「ぐが……ぅ……」


 ジャガードが白目を剥いて、口から泡を吹いた瞬間、ゴキ、という鈍い音とともに首が折れた。


 どさり、と音をたてて、絶命したジャガードの身体が床に落ちる。


「お――おい……」


 その場にいた、凶行に慣れているはずの男たちの顔が青ざめた。

 誰も、あまりの出来事に口もきけない。


 が、そこでカリヤが声をあげた。


「おい。――お前、何者だ?」

「ボクはね」


 少女と見紛うばかりの子供が、カリヤの元に歩み寄ってくる。


「ネラ」


 子供はそう言うと、三日月形に口を開いた。


「お――想い出した…『妖術師ネラ』! 子供にしか見えない外見で、凶悪な霊術の使い手だという話だ!」


 ゲイルが、恐ろし気な眼で子供――ネラを見る。

 それを聴いたカリヤは、薄笑いを洩らした。


「フン……面白ぇ」

「ねえ、何か面白いことが起こるんでしょ? ボクも混ぜてよ」


 ネラの言葉に、カリヤは黒牙マスクの上の眼を細めた。


「いいぜ――楽しみな」


 返事の代わりに、ネラは微笑してみせた。



   〇   〇   〇   〇   〇   〇   〇   〇



 翌日の朝、僕は新装備の製作にとりかかった。


 僕には遠・中距離を攻撃する方法が弱い。今のところ、放ち投げがせいぜいだ。しかし放ち投げは、正直なところ陽動には使えても、威力という点ではあまり有効じゃない。


 しかしカサンドラの戦いを見て、判ったことがある。

 魔法じゃなくても、鎖剣のような武器を使えば、中距離の相手を直接攻撃できる。


 それにヒントを得て、僕は鉄塊を軟化させ、一本の細い鉄棒にしていた。


 相当に細くした後で、それを蚊取り線香のように渦巻き状に巻く。

 その巻いたものを、スコップの柄にとりつける。完成だ。


「これを、鞭のように使えば――」


 振り上げて、軟化させた瞬間に放る。する鉄が鞭のように唸りながら、宙を飛んでいった。


「いいぞ。じゃあ、今度は狙いをつけて――」


 丸太を立てると、僕は鉄鞭を放って巻き付けた。

 鉄鞭が丸太に巻き付いた瞬間に、硬化する。


 ぐい、と引っ張ると丸太が揺らぐ。


「これで、全体を軽化させたらどうだ?」


 鉄鞭を通して『一体』となった丸太が、宙に浮く。

 僕はそれを遠くに放り投げた。


「うん、いいぞ。先を丸くしたほうが扱いやすいか。それに、スコップ側を武器として使うことも考えて――」


 僕はしばらく、夢中になって新しい武器の練習をした。

と――背後から女性の声がする。


「――随分と熱心だな」



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