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6 ファイアー・ジャッカル


 僕らはスーの切羽詰まった声に、地上を凝視した。


 と、森の中から幾つもの黒い影が飛び出す。その影は素早い動きで、魔導士たちに襲い掛かった。


「みんな! 防御して!」


 スーが上空から叫ぶ。ミレニアが声をあげた。


「あれは――ファイアー・ジャッカルだ!」


 襲い掛かっていたのは、犬っぽいモンスターだった。

 黒い身体をしているが、その首周りに炎をまとっている。


「いけない! 下に降りなきゃ!」


 ミレニアがそう叫んだ瞬間だった。


 ぐらり、とブランケッツ号が傾く。重さが生まれたのだ。


「キャーッ!」


 悲鳴とともに、ブランケッツ号が急速に落下していく。


「ダメだ! 僕に同調して! 軽く!」


 ダメだ、地面に激突する!

 ――と、思ったギリギリの瞬間で、ブランケッツ号が宙にとどまった。


「あ……危なかった」

「ゴメン! あたし、つい気が逸って――」


 ミレニアが謝罪の意味か、両手を合わせて頭を下げる。


「それより、皆の処に合流しましょう」


 僕らはブランケッツ号をそこに置いて、駆け足で魔導士たちのいるポイントに向かった。


 そこでは、ランスロットとガドが、必死になってファイアー・ジャッカルの群れと戦っていた。


稲妻剣(ボルト・ブレイカー)!」


 自身が電撃をまとい、稲妻のような瞬足でジャッカルのの群れのなかを駆け抜ける。その間に電撃をまとった剣は、何匹ものジャッカルを斬り倒していた。


 凄い。ランスロットが魔導剣士としてかなりの使い手だと判る。


 ガドの方はほぼ足を止めた状態で、群がるジャッカルたちを巨大な斧で切り飛ばしていた。凄まじいパワーだ。


「ランスロット!」


 ミレニアが声をあげる。と、ジャッカルたちが僕らに気付き、群れの一部がこちらに凄まじい速さで駆けてくる。


「ダメだ! お前たちは防御魔法で身を守れ! この数では、魔法では速さに対抗できない!」


 ランスロットが叫ぶより早く、群れがミレニアに襲い掛かる。


「魔導障壁!」


 ミレニアの障壁が、僕たちを包む。

 その瞬間、凄い数のジャッカルが、障壁に噛みついてきた。


「なんて、数だ! 数えきれない」

「まさか、ランスロットとガドだけで、このジャッカルをなんとかするつもりなのか?」


 僕の言葉に、スーが微笑んだ。


「うちのリーダーって、そういう人なのよね…」


 そりゃ大した人だ。けど、この状況じゃもたない。


「すいません、僕も出ます。障壁を広げて、僕を除いた分で内側にキャルが魔道障壁を作って」

「わかった」


 キャルが僕を除いた女性陣に、改めて魔導障壁をつくる。とその時、エリナが僕に手裏剣を数枚手渡した。


「クオンくん、ちょっとだけ持ってて」


 僕は頷いて預かる。ブリッツ・バットの時のように障壁内側から念動力で操るつもりなのだろう。


「それじゃあ、外側の障壁を消してください」

「クオン、気を付けて!」


 ミレニアの言葉に、僕は、はい、と頷いた。

 障壁が消える。と、その瞬間に僕はゴム脚ダッシュで、ランスロットたちの傍まで駆け抜けた。


 ランスロットに背後から襲いかかろうとするジャッカルがいる。

 僕は棒剣を抜いて、重さを乗せて斬った。


「クオン! 助かった」

「けど、この数じゃあ、厳しいよ」

「けど……やるしかないだろ?」


 ランスロットは不敵に笑うと、再び稲妻になる。


 高速移動で、次々とジャッカルを斬り伏せてる。

 凄い。僕は重さを乗せないと、ジャッカルと斬り殺せないだろう。けど、それだと高速移動と適合するのが難しい。


 いい方法はないのか――と、思った瞬間、僕の中に閃くものがあった。


 放ち投げだ。あれは持った瞬間に「引き絞った」状態にする訓練をした。

 あれを応用して、構えた瞬間――そして斬った後にもすぐに『引き絞った』状態にできないか。


 僕は棒剣を構え『引き絞る』。そこにジャッカルが跳躍して襲い掛かって来た。


 その瞬間、僕は棒剣を軽化して目に見えない速度で「放った」。


 と、目の前で、ジャッカルが真っ二つになって落下した。


 いける。そして斬った後の形で、そのまま「引き絞る」。

 僕は高速移動しながら、棒剣を放つ。


 通り過ぎざまに、ジャッカルが両断された。着地した時には、ゴム脚で次のダッシュ。そして引き絞り――振り抜く!


 この連続攻撃行動で、ジャッカルの群れの中で戦う術を覚えた。僕は立て続けに何匹ものジャッカルを斬り抜く。

 これは新しい技だ。『放ち斬り』と名付けよう。


 たまに背後から頭や肩に噛みついてくるジャッカルがいるが、その瞬間に硬化する。放ち斬りの最中は、全身ゴム状態なので、気を付けないといけない。


 が、ランスロットやガドは大分、負傷してきた。

 二人の消耗が激しいし、まだジャッカルの数は多い。このままじゃダメだ。


「ランスロット、大丈夫!?」


 僕はランスロットに並んで、声をかけた。

 ランスロットが微笑む。


「おお、クオン。お前の戦い見せてもらったぜ。何をやってるのかは判らないが、凄いな」

「ガドの傍へ行こう」


 僕らは二人で、ガドの傍へ移動する。

 ガドはかなり負傷していた。


「くそ……数が多すぎる。どうして、こんな大量発生したんだ?」

「それより、これからどうする? 何か考えがあるのか?」


 僕は頷くと、エリナたちの方に呼びかけた。


「エリナさん、キャルと透明になってこっちに来てください!」

「判った!」


 不意に、魔導障壁の中の、キャルとエリナの姿が消える。


「な! 二人が消えたぞ!」


 ガドが声をあげると、一瞬だけ障壁が切れて、また復活した。エリナたちが障壁から出て来たに違いない。


「キャル、僕たちを障壁で包んで」

「うん」


 見えないけど返事があって、僕らが魔導障壁で包まれた。

 と、エリナとキャルの姿が傍に現れる。


「わ! なんだ、どっから出てきた!?」

「……それが、あんたの能力なのかい」


 驚くガドをよそに、ランスロットはエリナを見た。エリナはただ微笑む。


「それで、どうするつもりだ、クオンくん」

「エリナさん、僕にリンクをください。それで僕ひとりが囮になって、ジャッカルの群れを引きつけます。群れがある程度の範囲に収まったら、合図を送るので、キャルを筆頭に魔導士たちで一斉攻撃してほしいんです」


「おい! そんな事できるわけないだろ!」


 ランスロットが僕の胸倉を掴んだ。


「それは――お前が犠牲になって、ジャッカルを全滅させる作戦だろ!」


 ランスロットは僕に顔を寄せて、本気の憤りを見せた。


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