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3 狩谷との対決


「フフ……ますます、お前と合同パーティーを組んで見たくなったよ」


 ランスロットの言葉に、僕は応えた。


「仲間と――相談してみる」


 その言葉に、ランスロットは微笑んだ。と、その背後から、カリヤが声をあげた。


「はぁ? この臆病者が勇者だ? 笑わせんじゃねえよ!」


 ランスロットは、カリヤに向き直ると厳しい表情をみせた。


「カリヤ、お前は今どき純人主義者(ピュアマニスト)なのか? 言っておくがガロリアには多くの有徴族(マーキアン)が暮らしているし、混血も珍しくない。さっきみたいな差別発言を続けていると――冒険者仲間から蔑まれるのは、お前の方になるぞ」


 ランスロットにそう言われたカリヤは、不機嫌丸出しの顔をした。


「はぁ? 何言ってんだか判らねえよ! チッ、どいつもこいつも――めざわりだぜ!」


 カリヤは僕に近寄ってきて、顔を間近に寄せた。


「おい、千藤、オレを殴って、ただでで済むと思うなよ」

「……お前こそ、さんざん僕を殴って――このままで済むと思うな」


 カリヤに脅しに、僕は脅しで答えた。

 僕らはしばらく睨みあう。


 ――が、カリヤがやがて離れて出ていった。


 僕は息をつくと、エリナとキャルに言った。


「僕らも行きましょうか」


 キャルが頷く。僕らは三人でギルドの外に出た。


「せっかく報酬を貰っていい気分だったのに――ブチ壊しになって申し訳ありません」

「どうして君が謝るんだ? 君のせいじゃないだろ」


 それはそうだ。けど――


「キャル、ほんとに気分を悪くするような事になって、ごめんね」


 僕はキャルにそう言った。キャルは首を振る。


「ううん。……ああいう人いるのも知ってるし……慣れてるから」

「慣れてるの?」


 僕の問いに、キャルは慌てたように手を振った。


「あ、けど気にしないで。クオンが怒ってくれたから――もういいんだ」


 キャルはそう言うと、微笑んだ。


「まあ、今夜はとりあえず夕飯の食材を買って帰るか」

「そうですね」


 僕らはそう話し合うと、夕食を買ってブランケッツ号でハウスに戻った。


 家に戻ると、僕は二人に言った。


「あ! ――エリナさんから貰った、棒剣カバーを落としたみたいです。僕、ちょっと探してきます」

「おい、もう暗いよ。明日でいいんじゃないか?」


 エリナがそう言うのに、僕は「すぐに戻りますから」と告げて家を出た。


 ゴム脚ダッシュで、来た道を戻る。

 粘着気質のあいつが、このまま引き下がるはずがない。

 やがてしばらくすると、視線の先に集団がいた。


 僕がこの道を来たことを、あまり知られたくないな。

 そう思って僕は街道を逸れて大回りをし、背後から集団に近づいた。三人だ。


「もう見えないぜ、あのクオンって野郎、めちゃくちゃな速さだ」

「もう、諦めた方がいいんじゃねえか?」

「バカ野郎! この道を行ったんだ、必ず先に奴らがいる!」


 カリヤの声だ。僕はその集団の背後へ出ていった。


「――探してるのは、僕か?」


 集団が一斉に振り返った。カリヤが驚きの顔を見せる。

 傍にいたのは、火眼と鼻ピアス――前に会った、たちの悪い奴ら二人組だ。


「お、お前、いつの間に後ろに?」

「探してるのは、僕かと訊いたんだ」


 カリヤの問いには答えず、僕はさらに問うた。別に答えは求めてないが。


 カリヤが表情を変えて、薄笑いを浮かべる。


「ああ、そうだよ、千藤――いや、こっち風にクオンって呼ぶか。クオン、お前たち随分、クエスト報酬を貰ったらしいな? それをそっくりよこせば、許してやるぜ。どうだ?」

「断る」


 僕は即答した。バカかこいつは。


「異世界に来てもたかりか。死んでもバカは治らないな」

「てめぇ! ……いいだろう。てめぇをぶち殺して、金もあの女たちもオレのものにしてやる」


 カリヤが目で合図をして、剣を抜く。それに倣って、左右の二人も剣を抜いた。


「次は容赦しないって言ったはずだぞ」


 僕は左右の二人を睨んだ。

 眼に火のペイントをした奴が、喚く。


「うるせぇ! おれたちをコケにしやが――」


 僕は地面を蹴り、ゴム脚で最速のダッシュをかけた。

 重硬タックル!


 火眼が言葉を言い切る前に吹っ飛び、街道脇の大木に当たって崩れ落ちた。


 動かない。死んだかもしれない――し、判らない。


 考えてみれば、重硬タックルで1.5tのイノシシの突進を止めたんだった。

 トラックにはねられたくらいの衝撃はあるだろう。


「ゲイル! この野郎、てめぇ!」


 鼻ピが喚いて、剣で斬りかかってくる。

 けど、僕は慌てる必要がなかった。


 訓練とかブランケッツ号で、速さに慣れ過ぎたのか。

 相手が遅く見える。


 相手の剣が当たるギリギリの処で身をかわす。

 鼻ピが空を切って、前につんのめる間に、僕は横をすり抜けて背後に立った。


 鼻ピが身体を起こして振り向うとした瞬間、僕は右拳で鼻ピの右肩を殴った。

 最大重化!


 ゴキ、という鈍い音とともに、僕の鉄槌が肩にめり込んでいく。


「ギャアーッッ!」


 鼻ピが肩を抑えて、地面を転げ始めた。


「いてぇっ! いてぇよ!」


 転がる鼻ピを、僕は右足で踏みつける。鳩尾に、重化!


「グフゥッ!」


 鼻ピは呻き声をあげると、そのまま失神した。

 僕は足をどけつつ、カリヤを睨んだ。


 カリヤは驚きの表情から、薄笑いを浮かべた。


「ほぉ……もう、昔の弱虫じゃないってわけだ」

「いや、僕は今でも弱虫だ」


 僕はそう答えながら、棒剣を肩から外して構えた。

 そう。僕は今でも弱虫だ。だけど、僕たちに危害を加えようとする、お前を許さない。


 カリヤがにやりと笑った。

 ゴム脚ダッシュで、棒剣の斬りつけ。


 しかしその最大加速がかわされる。棒剣が空を切る。

 と、カリヤの剣が頭上に振って来る。


 僕は棒剣を掲げて、一文字で受ける。ギン、と金属音がした。


「言っとくが、オレは中級剣士の資格もとってる。あいつらみたいなザコと一緒にすんなよ」


 棒剣で受けた感触では、カリヤも気力を使う。

 移動の速さも、多分、気力で身体を強化してるんだろう。


 カリヤが剣を抜くと、連続攻撃を仕掛けてきた。

 僕はそれを棒剣で受ける。


 鋭い。左右上下の斬りに、突きを織り交ぜてくる。

 僕は後退しながら、棒剣で攻撃を捌く。が、肩と腿を、カリヤの剣がかすめる。

 重硬化してなかったら、怪我になっていたはずだ。


「なんだ、てめぇの身体は? 妙な感触だな」


 カリヤは眉をひそめて、僕を睨んだ。



    *     *     *     *     *


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