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第八話 その名はカリヤ  1 ランク昇格


 僕はそう叫ぶと、二人の身体を抱え岩陰へとダッシュした。


「しかし、蛇に見つかるのは時間の問題だ」

「だから、今度はエリナさんの透明化で、ここを抜け出すんです」

「なるほど」


 エリナさんが僕とキャルの服を掴む。と、僕らは全員透明になった。


 そっと岩陰から出る。キング・バイパーは、岩陰にいるはずの僕らを狙って、巨体で廻り込んできた。


 僕らは別の茂みの中に潜んでいた。


「どうする? このまま逃げるか?」

「いや、あれがいたら村の人が安心して山に入れない。ここで倒しましょう」

「けど、どうするの?」


 キャルに訊かれ、僕は思いついた作戦を二人に話した。


「――よし、その作戦で行こう!」


 エリナの囁きとともに、僕らは作戦を実行した。


 僕は姿を現して、岩に向かってダッシュする。

 キング・バイパーが僕を見つけた。


 大きな口を開けて毒液を吐こうとするその頭に、僕はその岩を持ち上げて放り投げてやった。


 僕の二倍ほどの高さがある巨大岩石が、キング・バイパーの顔にぶち当たる。

 キング・バイパーが、なんとも言えない舌のすすり音を出した。怒っている。


 しかしその瞬間、飛来して来た手裏剣がキング・バイパーの両目に突き刺さった。

 透明化して接近してたエリナの手裏剣だ。


「クシャアーッ!」


 キング・バイパーが、独特の吠え声をあげる。


「よし、これで邪眼は封じた!」


 僕は跳躍する。眼下にキング・バイパーの身体だ。


「重化斬り!」


思いっきり最大重量にした棒剣を、蛇の首に振り下ろす。が――


「うわぁっ!」


 しかし、その棒剣がぬめりで滑り、僕は地面に転がり落ちた。


「ク――やっぱりか!」


 エリナの発言で、ここまでは想定済みだ。


 僕は岩石を軟化させると、指を喰い込ませる。そして軽化して持ち上げた。


「シャァッ!」


 見えなくなったキング・バイパーは、毒液をめくら撃ちしている。

 しかし、一度吐いたら、少しタイムラグがある。


「今だ!」


 僕は岩ごとジャンプして、大口を開けたキング・バイパーに岩石を突っ込んだ。

 岩石は蛇の口より大きいが、岩を軟化させる。


 すると、はみ出す部分がこそげ落ちて、岩はすっぽりと蛇の口にはまった。


「重化!」


 岩を最大に重化すると、持ちあがっていた蛇の頭が岩の重さに耐えきれず、地面に落ちた。


「今だ、キャル!」

「うん!」


 キャルが駆け寄ってきて、蛇の口と岩との隙間に指を向けた。

 体内に向けて、キャルの火炎魔法が発射される。


爆裂砲閃花(バーニング・キャノンフラワー)!」


 キング・バイパーの首から後ろが、異常に内部から膨れ上がった。

 ――と、それは凄まじい勢いで爆発した。


「魔導障壁!」


 飛散する肉片から、キャルが魔導障壁で守ってくれる。

 後には、大岩を咥えて胴体と分離した、キングバイパーの頭部が残った。


「やったね、クオンくん、キャルちゃん!」


 エリナが姿を現し駆け寄ってきた。


「やりましたね!」

「うん。やった!」


 僕らは達成感のなかで、微笑みあった。


   *


 夕方には僕らは街に戻り、ギルド交換所にいた。


 ガールドが僕らの持ち返った獲物を見て、声をあげる。


「なんだい、こりゃあ! あんたたち、また凄い奴を仕留めて来たね!」


 一文字の姿を見て声をあげたガールドに、僕はもう一つ、僕の身体以上に大きいキング・バイパーの頭を差し出してみせた。


「あの……こんな奴もいるんですけど…こっちはどうでしょう?」


 ガールドが眼を剥く。


「キング・バイパー? ……まさか? あんたたちが、やったのかい?」

「ええ、まあ……」


 ガールドは絶句した後に、笑い出した。


「こりゃ凄い! あんたちは本物だね! 大したもんだよ、ブランケッツ!」


 ガールドはそう言うと、しばらく笑っていた。


 ガールドに計量してもらい、渡されたメモをミリアの処へ持っていくと、ミリアも眼を剥いた。


「えぇっ! あ……皆さん、一文字を倒したんですね! ありがとうございます」


 ミリアが深々と礼をする。


「あ、いえ! クエスト紹介してもらって、こちらこそ助かりました。ありがとうございました」


「けど皆さん、一文字だけじゃなくて、キング・バイパーも倒してしまったんですね。実はキング・バイパーの討伐依頼も出ていたんです」

「そうなんですか」


「ええ。けど、こちらはBランククエストで、こちらの一般ギルドでは取り扱ってなかったんですよ」


 ミリアはそう言って微笑んだ。説明を聴くと、どうやらCDEランクのクエストを扱う一般ギルドと、ABランクのクエストを扱う特別ギルドがあるらしい。


「あのキング・バイパーは過去に三人も冒険者を呑み込んでいるBランクモンスターでした。それを倒してくるとは……皆さん、本当にお強いのですね」


 僕らは顔を見合わせた。


「Bランクモンスター……道理で、強いわけだ」

「一歩間違えれば、我々も全滅してたかもな」


 キャルも神妙な顔で頷く。


「このBランクモンスターを倒したので、皆さんをDランク冒険者に昇格したいと思います」

「え! もう昇格ですか! まだ二つしかクエストこなしてませんけど……」


 僕が驚いて言うと、ミリアはにっこり微笑んだ。


「それでは報酬ですが――五角イノシシが1520kgだったので、1520×300で456000ワルド。魔石が38×1200で45600ワルド。キングバイパーの頭部からは、希少な霊骨が取れます。これが50000ワルド。クエスト報酬が20000と100000ワルド。合計で671600ワルドですね」


 金額を聴いて、僕らの方が絶句した。


「どうしますか? 一括でお支払いもできますけど、口座を作って必要に応じて引き出す事も可能ですけど」


 ギルドは銀行業務もやってるわけか。僕は二人に言った。


「前みたいな事もあるから、口座を作って預け入れておく方が安全じゃないかと思うんだ」

「そうだな、私もそう思う」

「うん、それでいいよ」


 僕らは10万ワルドだけ受け取り、後は口座を作って預け入れることにした。

 そして新しい、Dランク冒険者の身分証も手にした。


 少し前まで浮浪者だった僕らに、貯金ができるなんて――


そんな事を考えていた僕の前に、不意に一人の男が現れた。


「――よお、久しぶりじゃねえか」


 それは……狩谷だった。




    *     *     *     *     *


 読んでいただき、ありがとうございます。☆、♡、フォローなどをいただけると、とても嬉しいです。

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