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5 ジャイアント・バイパー


「エリナ、凄かったよ。エリナがいなかったら、群れを相手にするのは大変だったと思う」


 キャルがエリナに言う。エリナはそれを、笑いで返した。


「キャルちゃんが魔導障壁で守ってくれてたからだよ。頼りになるなあ、キャルちゃんは」


 そう言うと、エリナは地上に落ちたコウモリを拾った。


「魔獣っていう事だから、魔石があるんじゃないか?」


 コウモリを拾って、心臓を見てみる。やはり、小さい魔石があった。

 僕らはそれを残らず回収した。38個もあった。


 僕らはさらに、森を分け入って進んだ。


「また来るぞ。違う気配だ」


 エリナの声に、僕は身構える。


「囲まれてる!」


 エリナが声をあげる。


 やがて森の茂みから、光る眼が幾つも姿を現す。

 それは掲げた首が人の背丈ほどもある、青い身体の大蛇だった。


「ここは僕が!」


 ちょっとは挽回しないと。


 そう思い、僕はゴム脚ダッシュで突っ込み、先にいた大蛇の頭を斬り伏せた。


 いける――そう思った瞬間、キャルの声が飛んだ。


「クオン、危ない!」


 僕の身体が魔導障壁に包まれる。と、その瞬間、横に現れた大蛇が吐いた毒液が障壁に浴びせられた。


 地上に垂れた毒液は、地面を溶解し煙をあげている。


 これは――また僕が防御できない質の攻撃だ。


「戻れ、クオンくん!」


 エリナの声に我に返り、僕は二人の元に戻る。

 それを追うように毒液が吐かれたが、エリナが念動力で防御してくれた。


「キャルちゃん、さっきの作戦でいくか」

「判った!」


 キャルが魔導障壁を作り、エリナが手裏剣を飛ばす。


 しかし、今度はエリナの手裏剣が妙に弾かれている。


「くっ、鱗に何かぬめり(・・・)があって、うまく斬り裂けない!」


 そう言っている間に、毒液を吐くのを止め、大蛇が直接、魔導障壁に襲い掛かった。牙を剥くが、とりあえず破れない。


 と見るや、大蛇たちは長い胴体で、体当たりを始めた。


「くぅ……このままじゃ耐えきれないよ」

「僕が斬りこんで、蹴散らしてみる」


 キャルに僕がそう言うと、キャルは少し考えて言った。


「それより、クオン。わたしたちを一気に遠くに運べない?」

「――二人が軽化に同調してくれたら、一気に駆け抜けられるよ」


 キャルが真剣な顔で言った。


「それをやって、お願い」

「判った」


 僕はキャルとエリナを腰から抱き寄せる。


「いいよ、いつでも言って」

「じゃあ、解除!」


 魔導障壁が解かれる。

 僕はその瞬間にゴム脚でダッシュし、最速で大蛇の群れから離脱した。


「此処でいい!」


 キャルの声に、僕は立ち止まる。

 キャルが指先を、大蛇の塊に向けた。


爆裂砲閃花(バーニング・キャノンフラワー)!」


 指先から放たれた巨大な火炎が、大蛇の塊に向けて飛んでいく。

 と、着弾した瞬間に火炎弾は爆ぜ、それは紅蓮の花のように大きく咲いた。


「「………」」


 あまりの威力に、僕とエリナは声すら出なかった。


 あれだけいた大蛇が、ほとんど消し炭になっている。少し動いていた大蛇を、キャルが最後に焼いた。


「キャルちゃんて、もしかして――物凄く魔力高いんじゃ……?」

「そう……かもしれないです」


 キャルは少し恥ずかしそうに、エリナにそう答えた。


「けど、大蛇が一ヵ所に集まってないと難しかったし、そこから距離がとれてないと自分もまきこんじゃうから。クオンが離脱してくれたおかげだよ」


 微笑。――は、いいけど。


 僕、ちっとも役にたってないんじゃ?


 僕は、自分が二人を守らなきゃ――とか思って、切羽詰まった顔して気持ちでいたんだ。


 僕が二人を守るだって? 僕が二人に守られてるじゃないか。


 自分の弱さの自覚も忘れて、いっぱしのつもりで何を考えてたんだ、僕は。


 僕は無能だけど、彼女たちは能力がある。そして努力してた。僕が思ってたよりも、ずっと彼女たちは強いんだ。


 思いあがってた僕の、とんだ思い違いだ。バカだな、僕は。


 そう思うと、不意に可笑しさがこみ上げてきた。


「アハッ、ハッハハハ――」


 僕が急に笑い出して、二人が驚いた顔で僕を見る。


「どう…したの、クオン?」

「いやあ、二人があんまり強いからさ……頼りになるなって」


 僕は笑いながら言った。

 エリナが微笑む。


「うん。やはりクオンくんにばかり負担かけさせられないからな。私もできる事で頑張ろうと」

「わたし……少しでも役にたとうと思って」


 僕は二人に言った。


「ううん。僕より、二人の方がずっと重要だった。さっきのモンスターたちは、僕じゃあ、どうにもできなかったよ」


 僕が苦笑すると、キャルが真面目な顔で言った。


「クオンもエリナも、わたしも……みんながいたから、のり切れたんじゃないかな」

「そうだな! 私もそう思うぞ」


 エリナが微笑む。


 そうか……そうなんだな。僕は不意に悟った。


「僕たち……やっぱり、三人でブランケッツなんですね。――みんなで力を合わせて、頑張ろうよ」


「うん! そうだね」

「そうだな。クオンくんの言う通りだ」


 僕らは大きく頷いた。


   *


 さらに森を進む。エリナが緊張した面持ちで言った。


「近いぞ……五角イノシシの気配を濃厚に感じる」


 そこからはゆっくりと歩を進める。


 森の先に――五角イノシシらしき巨体が横たわっていた。


「寝てるのか?」


 僕が呟いた瞬間だった。エリナが突如、叫ぶ。


「来る! 左だ!」


 突然、凄まじい勢いで樹々をなぎ倒し、巨大な五角イノシシが突進してきた。


「魔導障壁!」


 キャルがぎりぎりで、魔導障壁で突進を止めた。





    *     *     *     *     *


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