第七話 ブランケッツ再始動! 1 修行の成果
「ねえ、クオンくん。この武器なんだけどさ――」
トレーニング期間が二週間経った頃、エリナが庭で練習してる僕のところにやってきた。
僕の作ってやった警棒を持ってきている。
「どうしました? 何か不具合でも?」
「いや、根本的に別の武器にしてもらえないかと思って」
「別の武器? 何です?」
「手裏剣」
エリナはそう言うと、にっと歯を見せて笑った。
「……忍者になるつもりですか?」
「そうなんだよ! 私の能力は透明化。いわば隠形だ。だから忍者の戦い方が適切だと気づいたんだ!」
エリナは眼をキラキラさせている。
……どこまで本気なんだ、この人?
「なんだ、その眼はあ。疑ってるのか? じゃあ、これを見たまえ」
エリナは警棒を手にすると、その手を開いてみせた。
警棒は落ちない。
「霊力を使う念動力だ」
掌の中で、警棒が急に回転し出す。
と、突然、回転したまま飛び出すと、離れた処にある木の枝に向かっていった。
そのまま枝をぶち切り、エリナの元に戻ってくる。
掌に警棒が収まった時、木から葉のついた枝が落ちた。
「……凄い! 凄いですね、エリナさん!」
僕はもう、驚いて言葉もなかった。
「な。ここまで出来るようになったのは時間がかかったけど、そもそも手裏剣の方がいいんじゃないかと思ったんだ。一度に複数のものを操る練習もしてるし、幾つか作ってもらえないかな」
「判りました、そういう事なら――」
僕は警棒を受け取ると、家に戻って、残っていた剣を手にした。
それを軟化でつぶしてしまう。
「いつもの事だけど、君の能力には感心するな」
「ちょっと手裏剣をつくってみますんで、できたら声かけます」
「楽しみに待ってるよ」
エリナはそう言うと、にっと笑ってみせた。
エリナが戻した警棒も、鉄の部分を取り出して潰してしまう。
試しに十字手裏剣を一つ作ってみる。
「こんな感じかな? もうちょっと大きい方がいいんだろうか」
大小、三種類作って、エリナのところに持っていく。
エリナが念動力で操った結果、中サイズのものがいいと言ったので、それを十個作った。
「おお! さすがクオンくんだ! よし、じゃあ残りの期間はこれを操る練習に特化するよ。ありがとう」
エリナはそう言って、新たな意気込みをみせた。
僕は潰した剣の鉄材が残ったのを見て、僕の武器をもっと改良しようと思いついた。
僕が適当に作った武器は、丸い鉄棒で、それをちょっと先の方を刃物っぽくしただけのものだ。長さも、もうちょっと長い方がいいと思うようになった。
少し鉄を足して、長くする。1m…50cmくらいか。
刃の部分を長めにとって30cmくらいにした。そして刃の根元の部分は、輪っかをつくって少し膨らませた。
持った時、自分が刃を握らないための工夫だ。
柄の先端を少し丸く膨らませる。これは叩いた方がいい場合に、使うためだ。
ふと思いついて、柄の方と刃より下に、小さい輪をつける。そこに買ってきてた紐を通して結んだ。
刃を上向きにして、肩に担いでみる。
「うん、いい感じだ」
僕は自分の武器が気に入った。
そう言えば、これは何というべきなんだろう?
「剣じゃないし、槍――という感じでもないし…」
棒に剣っぽい刃をつけただけだ。
「……棒剣?」
どうかと思うセンスだが、他に思いつかないからしょうがない。
*
「ね、ちょっと練習を手伝ってほしいんだけど」
僕はキャルにそう言われて、二つ返事で引き受けた。
「何するの?」
「あのね……わたしに薪を投げつけてほしいの」
「えぇっ!?」
そんな事、できるわけがない!
慌てて話を聞いてみると、瞬時に魔導障壁を発動する練習をしたいという事だった。それなら――
僕は杭になっている木材を、土に埋めて立てた。
「僕がそれに向かって物を投げるから、キャルはその少し斜め後ろに立って魔導障壁を使うといいよ。実際に使う時も、人を庇う場合があるかもしれないし」
「そうか、そうだね」
キャルが微笑む。
何を投げよう? 薪を投げるのもいいけど、万が一間に合わなくて杭に当たり、それが跳ね返ってキャルに当たったりしたらイヤだ。練習に、安全確保は大事。
ちょっと考えて、足元の土を取った。
軟化で柔らかくした後に、握りつぶして一体化させる。
「これでいいかな。当たったらバラけるだろうし」
僕はそれを持つと、杭の後ろに立つキャルに声をかけた。
「それじゃあ、投げるよ」
「うん、いつでも来て」
土の塊を投げる。
「魔導障壁!」
杭に当たる前にキャルが魔法を発動し、見えない力場の壁にぶつかって泥の塊は砕けた。
「いいじゃない」
「もっと早くてもいい。どんどん投げて」
「判った」
キャルの真剣な顔を見て、これは決して遊び半分でやってることじゃない、と改めて気づいた。キャルも、自分の力を本当に高めようとしてるんだ。
そう思った僕は、本気で何投かした。キャルは全部、反応できてる。
「もっと早く投げられる?」
「ううん……僕は筋力自体は貧弱だからな――」
ちょっと考えて、ふと思いついた。
ゴムの上半身をつくって、ぐっと貯めた力を一気に解放する形で投げるのはどうだろう?
「ちょっと思いついた事があるから、それで投げてみるね」
僕はキャルにそう言うと、泥塊を持った。
投げ終わった形を作って、そこからゴムにし、ぐっと後ろに反らせる。
タメを作った上で、一気に解放して投げた。
「きゃっ!」
キャルが声をあげる。
自分でも驚くくらいの速さだった。
「凄い、クオン! 今のは見えなかったよ。けど、今度はそれに反応できるように頑張る」
「うん――」
これは……いい武器になるかも。
考えてみれば、僕には遠距離で攻撃する方法が皆無なんだった。
よし。キャルの練習相手になると同時に、自分の武器投げの練習にもなる。
なんて名づけようかな。――『放ち投げ』。
……僕って、ネーミングセンスがないよね。
それは諦めるとして、僕は放ち投げの感覚を掴むように、一心不乱に投げた。
最初は反応できなかったキャルも、最後は完璧に反応できるようになっていた。
そうして一ヶ月が過ぎた頃、貯金が遂になくなってきた。
「そろそろ、クエストを受けないとな。――ブランケッツ、再始動だ!」
エリナの掛け声に、僕とキャルはオーッと声をあげた。
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