第六話 リフォーム&トレーニング 1 底上げ計画
「おー、愛しの我が家よ!」
エリナが声をあげながら、家に入る。僕とキャルは笑った。
買い物をして遅くなったので、簡単に掃除をして食事をし、リビングに三人分の寝具を並べて寝た。
朝になり、朝食をとることにした。
と言っても、調理をほとんどしなくていい、パンとハムだけだ。
と、エリナが顔をしかめながら言った。
「しまったなあ、食器類は買ったのにテーブルを買ってなかった!」
それを聴いて、僕は言ってみた。
「簡易なものでよければ、僕が作りましょうか?」
「え? そんな事できるのかい?」
「多分」
僕はそれを了承のサインと見て、裏から薪を10本ほど持ってきた。
まず二本を手にすると、軟化させる。で、合わせる。
少し押して、くっつけてしまう。これを六本合わせて、天板を作った。
「それじゃあ、ちょっと協力してもらえます?」
僕は天板を立てると、買ってきておいた木綿の糸を出した。
「二人で垂直に糸を降ろして、表面を削いでください」
「わ、判った」
キャルとエリナに、糸の端を渡す。
「柔らかくしますよ。降ろしてください」
二人が糸を下げる。糸は薪の天板に喰い込み、それを薄く切っていく。
「あ、切れる! チーズを糸で切ってるような感じだ」
「はい。柔らかいチーズをイメージしてます」
二人が糸を下まで降ろすと、軟化を解く。平らな表面ができた。
「これで天板の出来上がり。後は足を四本くっつければ――」
残りの薪を天板の下に張り付ける。置いてみて、足の長さを確かめ、糸で切って揃えた。
「出来上がりです」
おお! と、エリナとキャルが感動の声をあげた。
「クオンって、本当に凄いわ」
「いやあ、粘土工作みたいなものだからね」
僕の言葉に、キャルが微笑む。
「ううん。どういう力を持ってるかじゃなくて、対応策をすぐに思いつくところっていうか――」
「そうだな。君のひらめきには、本当に感心するよ」
そうかなあ。なんかテレる。特にキャルに褒められると。
それから僕らは簡易テーブルに朝食を乗せて、朝食を食べ始めた。
エリナがパンを食べながら、口を開く。
「必要な小物ばかり買ってきたが、まずこの家を直さないといけないな。そういう素材や道具が必要だろう」
「その事なんですけど――」
僕は色々考えていたことを話すことにした。
「森を少し、切り開こうかと思ってるんです」
「森を開くって――木を切るってこと?」
キャルの問いに、僕は頷いた。
「うん。家の修繕はさっき見せたみたいに、僕の能力を使えばある程度できると思うんだ。薪が結構あるから、それを使えば穴はふさいでいける。けど、森の木を切れば、もっと大きな木材が手に入って加工に色々工夫できる」
「どういうつもりなんだい?」
エリナの問いに、僕は答えた。
「まず、南側を切り開くことで、この家に陽が差すようにしたいんですね。今のままだと背の高い樹で、一日中薄暗いから。それでもう一つは、開けた場所を作って、トレーニング場にしたいと思ってるんです」
「トレーニング場かあ」
「それで提案なんですけど……僕たち全員が、もう少し力の底上げをしてから次のクエストに挑戦したほうがいいと思ってるんです。それでしばらくは、午前はトレーニング、午後はリフォームっていう暮らしをするのはどうかなって」
僕は昨日、寝ながら考えてたことを提案してみた。
エリナがそれに返す。
「凄くいいと思うが――木材はさ、切った直後は生木だから、あまり加工に適さないんじゃないか?」
「え? そうなんですか?」
エリナは頷く。
「うん、通常は木材というのは、切った後にしばらく置いといて乾かすんだよ」
「あの……」
キャルがそこで、恐る恐る声をあげた。
「……魔法を使えば、木材を乾かせる――と、思う」
僕とエリナが、おぉ、と声をあげた。
が、その後でキャルはためらいがちな顔を見せた。
「けど、そのためには、魔導書が必要かも……」
僕は即座に言った。
「じゃあ、買おうよ。何にしろ、キャルの実力アップのために必要じゃない」
「けど……魔導書って、結構するから。こんな事なら、空で詠唱できるように、もっとちゃんと勉強しとくんだった」
キャルが少し俯く。僕はすぐに言った。
「幾らしたって、構わないよ。必要なものは、買っていこうよ」
「けど……わたしばかり、なんか出費させてる感じだし…」
キャルが申し訳なさそうに言う。と、エリナが口を開いた。
「何を言うんだ、キャルちゃん。我々は運命共同体だぞ。キャルちゃんの力が上がることが、我々全体のレベルアップにつながる。魔導書は即、必要なものだな。じゃあ、それでクオンくんは木材を切り、キャルちゃんが乾かす。私はその間に、この家を徹底的に掃除することにしよう。それでどうだい?」
「いいと思います!」
僕は声をあげた。と、エリナが口にする。
「それで午前中は実力アップのためのトレーニングか、いい思い付きだよ。カミラさんのノートを読み込んで、霊力の使い方をじっくりと練習したいと思ってたんだ」
「僕は基礎体力の向上と、能力の応用的な使い方の必要を感じてたんです。お金が続く限り、底上げ期間を作って、同時にこの家の暮らしを形にしたいと思って」
「わたしは魔導書の読み込みと、指輪に魔刻する魔法を選ぶことにする」
それぞれにトレーニング目標を口にしたところで、自然に笑みがこぼれてきた。
「いいなあ、目標のある生活って。ちょっと張りが出て来たぞ」
「そうですね。それで力をつけたらクエストをこなして、家具とか必要なものを揃えていきましょう。――それまでは、この簡易テーブルで我慢してください」
「わたし……このテーブル、凄く素敵だと思う」
キャルがそう口にして、僕を見た。凄く嬉しい。
「そう言えばキャルちゃんは、本来は高い椅子とテーブルの生活なのかい?」
「ううん。わたしの一族は、床に座って生活してた」
キャルの言葉に、僕とエリナは微笑んだ。
「おお。なんか親しみを感じるなあ。じゃあ、当座、クッションくらい買っておけばいいか」
「そうですね。キャルの魔導書も必要だし、一度、また街に買い物に行きましょう。僕は実は、余裕があったら鎌を一本買いたいんですが、いいですか?」
「もちろん、構わないさ」
そうして僕らは、街へと出かけた。
地図を見て、書店を訪ねる。『月光堂書店』という名だった。
新書店というより、古書店っぽい。天井まで本棚があって、ぎっしり本が詰まってる感じだ。
「おおぉぉぉぉ!」
なんか、エリナが声にならない雄叫びをあげている。かなり興奮してるようだ。
「素晴らしい! これがノワルドの本屋か!」
興奮してるエリナを置いておいて、僕は魔導書の棚らしい場所にいるキャルに訊ねた。
「どう? いい本あった?」
「あるにはあるんだけど……」
キャルが手にしていたのは、かなり厚めの本。そっと値段を見せると、12800ワルドとある。高い! が、僕はキャルに言った。
「いいじゃない。買っていこうよ」
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