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6 パーティーハウス


 七三が伺うように声をあげた。


 僕らは驚きの中、互いに顔を見合わせる。と、エリナが笑い出した。

 僕も可笑しくなって笑う。キャルも、つられて笑い出した。


「あ、あの……皆さん?」


「決まりだな!」

「決まりですね」

「うん……決まり」


 僕らは頷き合った。


「此処、いいですね。購入希望で」

「ありがとうございます! ……本当に、よろしいんで?」


 僕らの即決に、逆に七三の方が怪訝な顔をした。と、エリナが口を出す。


「いや――少しまけてもらいたいな…。20万ワルドで!」

「えぇっ!?」


 七三が、少し焦った顔を見せる。


「いやちょっと20万ワルドというのは……。そうですね、手数料・諸経費コミで、25万ワルド。それ以上は無理です!」

「判った! じゃあ、それで手を打ちましょう」


 エリナが笑いながら言った。僕らも頷き合う。


「そうですか、ありがとうございます。それじゃあですね、この物件の所有範囲をちょっとご案内しますが――」


 七三はそう言って、手にしたファイルをめくった。


「え~、この物件には、庭――というか、一部、森がついてますね」

「え? 森?」


「はい。所有領域は――」


 七三が周囲の森をどんどん進んでいく。と、結構歩いたところに、背丈ほどもある大岩があった。


「あ、南の端はここまでですね」

「えぇ!? こんなに?」


 かなり広いぞ。家から岩まで、100m以上はある。


「え~西の端は……」


 七三は直角に曲がり進むと、一本の大樹まで歩いた。50mくらいある。


「この大木が目印のようです。そしてこの川の内側、という事になります」


 僕らは眼を合わせた。


 つまりこうだ。家から川までが4.5mでこれを上辺とする。

 そして岩から大木まで、これを下辺とした台形型――というか、ほぼ三角形の地形。東は山道、西は川に挟まれた空間だ。


「かなり――広いですよ」

「そうだな。これで…25万ワルド?」


 エリナがもう一度七三に訊ねる。


「はい、そのようになります」


 七三が満面の笑みで答えた。


   *


 それから僕らはまた街に戻り、不動産屋で必要な手続きを済ませた。

 その間に、七三はこんな話をした。


「あの家は元は老夫婦が住んでたんですが、爺さんの方が亡くなりましてね。それで婆さんは首都に住む息子夫婦の元へ移住したんです。息子の方は、もう離れたあの家を管理できないという事で、長い間放置してまして、その間に大分劣化が進んだんですね。で、十年以上放置してボロボロになったところで、想い出して私どもに売却なさった――と、いうわけです」


「はあ……そんな事が、あの家にあったんですね」

「――はい! と言ってる間に書類ができました。それでは代金を」


 キャルが25万ワルドをテーブルの上に出す。七三は丁寧に、お金を数える。


「はい、確かに。それじゃあここにサインを、代表の方が」


 そう言われて、僕らはお互いを見た。


「ここはやはり、クオンくんだろう」

「うん、クオンがいいと思う」


 二人にそう言われ、僕は名前を書いた。


「はい、確かに。これが諸々の書類です。これであの家は皆さんの所有となります。――ありがとうございました」


 七三の礼に見送られて、僕らは不動産屋を後にした。


 荷車を引きながら、まだ何か現実感のない感じがしている。


「僕ら……家を買ったんですよね…」

「うん。――そうだな。いわゆるパーティーハウスだが……」


 エリナもまだ現実感がないらしい。と、キャルが口を開いた。


「わたし、あの家で暮らせて嬉しいわ」


 キャルが嬉しそうに微笑んだ。それで、僕にも現実感が沸いてきた。

 と、エリナも嬉しそうに口を開く。


「そうだ! あの家はもう我々の家なのだから、もう隠れなくていいんだ。堂々と住めばいいんだ!」


「うん、僕も嬉しいよ。あの家は今はボロボロだけど、もっと僕たちでよくしていこう!」


 僕らはお互いに笑いあった。


「それじゃあ、我が家に帰るとして――その前に買い物をして帰ろう。これからは色々もの入りだぞ」

「まず、何から買います?」

「当座の食料品に、全員分の食器……それから調理器具も必要だな」


 あ。僕はふと思い立った。


「布団が必要ですよ、全員分の」


 エリナとキャルが、顔を見合わせる。


「そうか……確かにな」

「クオンは――一緒に寝るの、イヤだった?」


 キャルが少し寂し気に、僕に訊いてくる。僕はちょっと慌てた。


「いや、そうじゃないけどさ。だけど、やっぱり寝返りとか気楽にできた方がいいでしょ? カミラさんちで、ゆっくり寝られたじゃない」


 本音を言うと……キャルとエリナに囲まれて寝れたのは、最高だった。

 だけど、いつまでもその状態で寝てられない。こっちは男の子だし。


 今に興奮して、寝られなくなる。


「そうか……そうだよね」

「まあ、確かにそうだな。それにあの家には個室もあるし、部屋分けも考えないとな。じゃあ、とりあえず寝具を買いに行くか」


 それから僕らは寝具を買って荷車に積んだ。寝具は1セット15200ワルド。これを×3で、45600ワルド。これが一番、大きな買い物だった。


 それから食料品を買いに行く。


 地図を見ると、市場がある。そこに僕らは出かけた。


 人通りの多い繁華街で、活気がある。荷車を引いてるのは変かと思ったが、結構、周りを同じような荷車がウロチョロしていて、そんなに目立つ感じでもなかった。


 市場で食料品を買ってると、エリナが不意に言った。


「そう言えば、冷蔵庫がないんだよな。だから保存があまりきかないから、毎日買い物に来る感じかな?」


 それを聴いて、キャルが口を開く。


「あの、食品の保存だったら、収納珠を使えばいいと思います」

「え、そうなの?」


 僕もキャルに訊ねた。


「うん。あれは空間の歪みの中に物を保管する装置だから、雑菌や虫が入らないの。だから収納珠を食品保存に使うのは一般的」

「なるほど~、そうなのかあ。冷蔵庫みたいに冷やせはしないけど、痛まないってことだな」


 食料品を買って、キャルの持ってる収納珠に入れる。

 それから僕らは通りを歩いて、用品店を見つけると、食器、調理器具なんかも買い求めた。


 帰り道、エリナがキャルに訊ねる。


「キャルちゃん、残金はどれくらい残った?」

「大体、3万ちょっとくらい」

「上出来だな! まあ、生活してく中で、色々必要なものが出てくるだろう。その都度稼いで、買い足していこう」


 僕らは頷いた。


 やがて僕らは家に帰り着いた。ボロボロの廃墟だけど――これが僕らのパーティーハウスだ。僕らは互いを見ると……微笑いあった。



    *     *     *     *     *


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