4 たちの悪い奴ら
ギルドに移動した僕らは、受付のミリアさんの処へ行った。
「あ、ブランケッツの皆さん、登録クエストが完了したんですね」
「はい、なんとかできました。色々ありがとうございました」
僕らはお礼を言った。それでガールドから貰った紙を渡す。
と、ミリアが笑顔から、驚きの顔になった。
「え!? こんなに? どうしたんですか、これは?」
「はい。いきさつで五角イノシシを倒してまして」
と僕が答えると、ちょっと背後の方でざわついた感じがした。
なんか――あいつらが? とか、新人じゃねえのか、とか呟きが聞こえてくる。
そんな事は別にして、ミリアが満面の笑みを見せてくれた。
「まあ、皆さん、実力者だったんですね。なかなかいませんよ、登録クエストで五角イノシシを獲ってくるパーティーなんて」
「そうですか」
そう言ってると、ミリアがお金を出してきた。
紙幣の束が三つと、数枚、小銭だ。
「はい。366200ワルド。よく数えてください」
そう言われて、僕は振り返った。
「エ、エリナさんお願いします!」
「わ――わかった」
硬い表情のまま、エリナが前に出てお金を確かめる。
「確かに。――これは、キャルちゃん持ってて」
「はい」
キャルが渡されたお金を、収納珠にしまう。
すると、ミリアが今度は銀色のカードを三枚差し出す。
「これが皆さんの登録証です。常に身に着けておくのがオススメですよ」
僕らはそれぞれ、自分の名前の入ったカードを手にした。
カードは薄い金属製で、名前が刻印されている。僕が取ったカードには、『クオン・チトー』と書いてあった。
これがこの世界での――僕の身分証か。
ミリアさんが、笑顔で口を開いた。
「はい、どうもご苦労さまでした。これで冒険者リストに皆さんは登録されました。次からは、あそこの掲示板を見て、受けたいクエストを申し出てください。私に直接、声をかけてもらっていいですよ。ご相談に乗りますから」
「あ、ありがとうございます」
僕らはお礼を言うと、ギルドから出ることにした。と、周りから声がかかる。
「やるじゃねえか、新人!」
「頑張れよ!」
「あ……どうも――」
僕はヘラヘラしながら、ギルドから外へと出た。
往来へ出て、しばらく無言で歩く。
と、噴水の広場みたいな処に出たので、僕たちは足を止めた。
お互いに顔を見合わす。
堪えきれない思いが、遂に口をついて出た。
「「「ヤッターーッ!!」」」
僕たちは手を取り合って、輪になって飛び跳ねた。
しばらく、そうして輪になって踊った。それくらい、嬉しかったんだ。
「やったぞ、私たち! 初仕事で、こんなに稼ぐなんて!」
「そうですね、幸先のいい滑り出しです」
キャルは嬉しそうに、うんうんと頷いた。
エリナが口を開く。
「さあて、これからどうするかな。とりあえず、祝勝会かな」
「それもいいね」
エリナの案にキャルが同意する。と、僕は不意に想い出した。
「――あ」
「どうしたんだい、クオンくん?」
僕は苦笑して見せた。
「荷車を交換所の裏に忘れてきました。ちょっととってきます、此処で待ってて」
僕はそう言うと、走って荷車をとりに戻った。
これも僕らの貴重な財産だ。
戻ってくると、キャルとエリナの傍に、ヘンな男二人組がいた。
僕は慌てて走り、荷車を置いて近寄った。
「――だからよ、俺たち先輩冒険者が色々、タメになる事を教えてやるって言ってんだよ」
「そうそう。冒険者には上手いやり方や、危険があるからねえ」
見た事ある感じだ。たちの悪い手合いだ。
キャルとエリナは困惑した顔で、少し怯えている。
「すいません」
僕は二人組に声をかけた。
「何か御用ですか?」
「お、お前がこのパーティーのリーダーだろ? いいねえ、可愛い子連れて冒険とは。俺たちが冒険者の手ほどきをしてやろうってんだよ」
「いりません、結構です。――行こうか、キャル。エリナさん」
僕はキャルの手を取ると、男たちの中から引っ張り出そうとした。
と、そのキャルの肩に、男の一人が手をかけた。
「おい! 勝手に行くんじゃねえよ、こっちが話してんだろ」
その眼周りに火のペイントをした男は、急に凄んだ声を出した。
指が――キャルの肩に喰い込んでいる。
「痛い……」
僕の怒りが、一瞬にして沸点に達した。
「その手を離せ!」
「あん?」
火眼男は、僕の声に薄ら笑いを浮かべて見せる。面白いのか。こんな事が。
僕はキャルの肩から男の手を引き離す。と、火眼男が本性剥き出しにして、僕の襟首を掴んだ。汚い顔を近づけてくる。
「おい、新人が生意気いってんじゃねえぞ! 授業料払えって言ってんだよ!」
僕はものも言わずに、掴まれた腕の肘に腕をかけると、重量化で地面に沈み込んでやった。
「うわっ!」
男が重さに耐えきれず、地面に倒れ込む。
そこを僕は、上から胸を踏みつけた。
重硬化!
「ぐわっ――なんだ、どかせ……ねえ――」
火眼男が僕の足をどかそうとして、呻く。
僕はさらに重量化した。ミシ、と男の胸が音がした。
「があぁっ!」
「てめぇ、足をどかせ!」
もう一人の鼻ピアスをした奴が、殴りかかって来る。
予想してた。
こういう奴らは気力ってのを使って攻撃してくるから、硬いからといって受けちゃいけない。
僕は左腕を上にあげてパンチを防御すると、踏んでいた足をどけて、男の膝横を蹴り込んだ。最大重量化している蹴りで、男の足がヘンな方向に曲がる。
「ぎゃあっ! いてぇ、いてぇよ!」
男が足を抱えて転げまわった。
踏まれていた火眼が立ちあがって、足を痛めた鼻ピの肩を担いだ。
こちらを睨んでいる。
男たちが口を開く前に、僕は言ってやった。
「覚えてろ――って言って逃げるなよ」
「なに?」
男たちが眼を剥く。
「僕はお前たちの事を覚えるつもりはない。だけど、これ以上関わってきたら、次は容赦しない。判ったか」
「わ……判ったよ」
そう言うと、男たちは背を向けて去っていった。
「――大丈夫だった、キャル?」
僕はキャルに向き直った。
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