3 クエスト報酬
「なんだい、いい事って?」
「二人とも、荷車に乗ってみてください」
僕がそう言うと、二人がイノシシのカバーの上に座った。
イノシシも相当に重いが、さらに二人分の重量が加わったことになる。
「それじゃあ、軽くするんで、それと同調してみてください」
僕はそう言って、荷車の取っ手をとった。
軽化!
取っ手を持って、歩いてみる。成功だ。
「あ、動いたわ。重くないの、クオン?」
「うん。二人の体重もないも同然だ。これでこのまま街までいっちゃいますよ」
エリナが愉快そうに笑い声をあげた。
「アハハハ! 素晴らしいな、クオンくん! いい眺めだぞ!」
振り返ると、キャルも微笑んでいる。僕は嬉しくなって、そのまま街まで荷車を運んだ。
*
荷車は軽いのだが、やはり能力を使い続けた事でちょっと疲れた。街に入る前に解除して、三人で普通に街並みを歩く。
やがてギルド隣の交換所へたどり着いた。
と、突然、中から女性の大声が響いてくる。
「文句があるなら、他所へ行きな! こっちは正当な価格で交換してんだよ!」
そう言ったかと思うと、突然、ドアが開く。
するとそこから、男が二人、ボロ雑巾でも放るかのような勢いで、外に飛ばされてきた。
それを追うように、中から腕組みをした女性が現れる。
女性だが、体格が大きい。肩幅は広く、肩周りの筋肉も盛り上がってる。
女子プロレスラーみたいだ。
「力づくで値を吊り上げようとはいい度胸してるじゃないか。少し、教育しといた方がいいかねえ」
「ヒッ――す、すいませんでした!」
女性の凄みにブルった二人組は、一目散に逃げだしていった。
「やれやれ、冒険者の質も落ちたねえ。先が思いやられるよ。ん――」
女子プロレスラーが、こちらに気付く。
顔自体はあどけない感じだが、なにせ荒事の後だ。おっかない。
「あんたたち、新人冒険者だね? ミリアから聞いてるよ、なんてったっけ――毛布ズ?」
「ブランケッツです!」
僕は慌てて、訂正した。
女性はカラカラと笑って、手をひらひらさせた。
「ああ、そうだった。ゴメンゴメン。あたしはガールド。此処の責任者だよ。確か登録クエストに挑戦したんだろ? うまくいったかい?」
「はい。ヒモグラと薬草、とってきました!」
「そうかい、じゃあ中に持ってきな。換金するから」
「あの……この五角イノシシもお願いしたいんですが――」
僕はシーツの下にあるイノシシを指さした。
ガールドが驚きの表情を見せる。
「なにっ!? 五角イノシシを獲ってきた? あんたたちが?」
「はい」
ガールドは、にぃと微笑んだ。
「へえ、あんたたち見かけよりヤルじゃないか。大したもんだよ。裏に廻ってきな」
僕らは言われた通り、交換所の裏へと廻った。
ガールドが、体重計のような機械を用意して待っている。
「じゃあ、シーツをはいで」
言われた通りにすると、ガールドは掌を向ける。
すると、イノシシの身体が荷車から宙に浮いた。
「うわ、凄い!」
「力場魔法だよ。さて、計量するかね」
ガールドは魔法を使ったまま、傍の機械のスイッチを押す。
と、機械から光線が発射された。
光はイノシシの身体全体と包み、ぼんやりと光っている。
「ほう、1000kg越えだ! こりゃ大物だよ、『トン越え』って奴だね」
機械のメーターを覗いてみると、1054と表示されている。1トン以上あったって事か。
よく、こんな奴の突進を防いだな。我ながら。
「それと――ヒモグラは20匹も獲ったんだね。で、ヒリアの薬草が3kgに……おや、こりゃ珍しいね、ベルニカの花じゃないか。これも、あんたたちが見つけたのかい?」
「あ、はい。キャルが」
僕がそう言ってキャルを指さすと、キャルはテレたように俯いた。
ガールドがそれを見て、にっと笑う。
「なかなか優秀だね、あんたたち。じゃあ換金するから、正面に廻って中に入んな」
僕らは改めて正面に廻ると、交換所の中に入った。
そのままカウンターのある受付まで進むと、奥からガールドが出てくる。
「それじゃあ、計算するね。クエスト報酬が10000…だけど、あんたたち別のクエストも受けてきたんだね?」
「はい、近所のジールさんに頼まれまして、そちらのヒモグラを駆除したんです」
ガールドは、ジールさんがくれたクエスト依頼書をみせた。ヒモグラと一緒に、置いておいたものを、見つけてくれたらしい。
「なるほどね。次にヒモグラを持ってくる時は、中の魔石だけでいいから」
「魔石?」
「これさ」
そう言うとガールドは手にしたヒモグラに、ナイフを入れてみせた。その心臓付近から、紫の結晶を取り出す。
「今回は登録クエストだから、誤魔化しがないように身体が必要だったけど、次からは魔石だけでいい」
「判りました」
「じゃあ、クエスト報酬は倍の20000。それでヒモグラが20匹で1200×20。ヒリアの薬草が3000と、ベルニカの花が6コで500×6の3000」
「え! ベルニカの花って、そんなにするの!?」
驚いたエリナが声をあげた。
「そうだよ。草じゃなくて花から薬が採れるんだけど、花の時期は限られてるからね。え~と、それで大物の五角イノシシは1054kgと。こいつはキロあたり300ワルドだから――」
え? 1キロあたり300って言った?
「――316200ワルドだね」
「「「え~っっっ!!!」」」
僕らは一斉に、驚きの声をあげた。
ガールドがじろり、と僕らを睨む。
「なんだい、不満かい?」
「い、いえ、とんでもないです! ただ、大金なんでビックリしただけです」
そう答えると、ガールドはにっと笑った。
「まあ、五角イノシシは肉が美味いからね。あんたたちが獲ってきたのは、火炙りにもなってないし、いい状態で獲ってきたよ。いい腕してるね、あんたがやったのかい?」
そう言って、ガールドは僕を見た。
「あ……はい、まあ…」
「ふうん。見た目は華奢な感じだけど、案外、鍛えてるんだね。気力の使い方が上手いのか……」
いや、すいません。能なしですけど――
「まあ、何にしろ大したもんだよ。五角イノシシはDランクモンスターで、Dランク冒険者でもやられる事がある難敵だ。突進力が凄くて、Dランク冒険者の気力防御や魔導障壁をぶち抜いてしまうのさ。あんたたち、デビュー戦でこいつを仕留めるとは大したもんだ」
ガールドはそう笑うと、計算の続きをし始めた。
「20000+24000+3000+3000+316200は? ――366200ワルドだね。」
ガールドはそう言うと、一枚の紙に数字を記入した。
「じゃあ、これを持ってギルドに行きな。向うで換金してくれるから」
「わ、判りました、ありがとうございます!」
僕たちは頭を下げると、交換所を出ようとした。と、ガールドが声をあげる。
「そうだ。なんて言ったっけね? あんたちのチーム名は」
「ブランケッツです」
「ふうん……そうかい。これから有名になるかもね」
ガールドさんはそう言うと、意味ありげに微笑んでみせた。
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