5 救出作戦!
ガドのスープレックスで投げられたカザンは、思いきり後頭部から床に落ちた。
「が……」
自分の体重が乗った衝撃に、さしものカザンも眼がくらむ。
そのカザンを見下ろして、ガドが笑った。
「悪いが――こっちは、より遙かに重い相手とスパーしてたんでな。お前を投げるくらい造作ねえんだよ」
「オ……オレより重い相手? だ…誰だ、それは?」
「クオンだよ」
カザンは首を傾げた。
「あのチビのガキだと――てめぇウソをつきやがって…」
「ウソじゃねえんだよ!」
ガドは床に這いつくばっているカザンの顔を蹴り上げた。
「ゴハァッ!」
「おら! 寝てるともっと蹴りを入れるぞ!」
カザンがぐらぐらする頭で立ち上がる。
と、その腕をとられ、カザンはガドの背に担ぎ上げられた。
ガドはそのまま旋回する。
「ウオ……ウワアアァァァ――」
「ガド・スパイラル・ボム!」
ガドは足を抜くようにして跳びざま、横向きにカザンを頭から落とした。
カザンがモロに頭から落ち、あまりの衝撃に昏倒した。
「へっ、どうよ!」
ガドが勝ち誇った顔で、親指で鼻を撫でた。
「カザン! ――くっ、貴様ら……許さんぞ!」
ゲイルが蛇の目を光らせる。が、ランスロットは、それを剣をたてて防いだ。
「ガド――そんな技を身に着けていたのか……。やっぱりお前は、最高の仲間だ」
ランスロットは少し目を伏せて微笑む。
と、ランスロットは顔を上げて、眼を見開いた。
「ならば次は、俺の番だな!」
そう言うとランスロットは体内で気力を発力し、ヒモグラーの群れに突進する。
「へっ! 別に今までと変わらねえ速さだぜ!」
蛇の動きでそれを追おうとしたゲイルが、目を見張った。
ランスロットの姿が一瞬消えた――と思った瞬間、ヒモグラーを斬り抜けて、止まっている。
「な――なにっ!?」
明滅する光のように、ランスロットの姿が現れては消える。
そのランスロットが消えるたびに、ヒモグラーが両断されていた。
「な――何が起きているんだ……?」
呆然とするゲイルの前に、姿を現したランスロットが口を開いた。
少し息をつく。
「体内で気力を爆発させる分には、障害はない。ならば――体内で魔法を使えばいいかと思いついたのさ」
「なにぃっ!? バカか! そんな事をすれば、身体に損傷が出るだろうが!」
ゲイルはランスロットに怒鳴る。が、ランスロットは言った。
「感電した時、人の筋肉は無意識にビクリと動く。その動きは随意筋でだせる以上の速さだ。無論、それを流し続ければ、俺の身体ももたない。だが、一瞬なら気力でダメージをカバーしながら、随意筋以上の動きを出せる。――かもしれない、と思いついたのさ。そうだな……この新しい技を、ブリッツ・アタックと呼ぶか」
ランスロットはそう微笑すると、ゲイルに向かっていった。
「くっ!」
ゲイルが槍で迎撃態勢をとる。が、ランスロットの姿が眼の前で急加速した。
「ぐあっ………」
槍を途中から斬られ、その脇腹を斬られたゲイルは、小さく呻き声をあげた。
切り抜けたランスロットは、髪を揺らしながら背後に振り返った。
「お前たちの負けだ」
「くそ――これでもくらえ!」
ゲイルが目を光らせる。ランスロットが、その直視を避けるために剣を立てる。
と、その瞬間に、ゲイルはそこから逃げ出していた。
「カザン、撤退しろ!」
「……うおぅっ!」
カザンは落ちていたガドのハンマーをガドにむかって放る。
ガドがそれを受け止めてる隙に、カザンは猛ダッシュでその場から走り去っていった。
「――あいつら、逃げちゃったよ」
静かになったところで、ミレニアとスーが出てくる。
ランスロットが応えた。
「構わない。連中を倒すのが目的じゃない。早くこの装置を止めて、下の人たちを救うんだ」
「どうやら、あのレバーが起動装置ですわ」
スーが壁の一ヵ所を指し示す。そこにはコの字型のレバーがあった。
ランスロットがそれに近づいて、下がっていたレバーを上げた。
と、人のプールの頭上にある、巨大な球体装置が、吸収を止める。
「機械が止まったぞ!」
ガドが声をあげた。ランスロットは頷いて言った。
「よし、後はプールの人たちを此処から出すんだ!」
ボルト・スパイクのメンバーは、皆で頷きあった。
○ 〇 ○ 〇 ○ 〇 ○ ○ ○
エリナの小太刀で、バルギラの首をかき切った。
鮮血を吹き出し、バルギラが倒れる――その時。
空間が歪む。
まさか!? 時間が――
――バルギラが振り返り、炎の剣で首に迫る小太刀を止めている。
「危ない、危ない。君の能力は、まったく気配がしないんだねえ」
「バルギラ! まさか……貴方がワンの能力を使った!?」
エリナが憎々しげに声をあげた。
「君は危険だ!」
バルギラは肘でエリナを打つ。
「う――」
さらにバルギラは、裏拳でエリナを殴りつけた。
エリナが飛ばされ、甲板に倒れる。
「死ね!」
バルギラが赤い炎の剣をエリナに突き立てようとした瞬間だった。
――何かが突如、船の外から飛び出してくる。
その影は空中に飛び出した。
「「「「――ジュール・ノウ!」」」」
その場にいた全員が、驚愕に襲われた。
甲板にある手すりを跳びあがってきたのだ。
「あの数の兵士たちの攻撃を――抜けてきただと!?」
バルギラの驚嘆を洩らす。
疾風のように甲板に舞い戻ったジュール・ノウは、恐ろしい速さで迫ってくる。
何処へ? ジュール・ノウがバルギラを狙うかと思ったが、僕はその間違いを即断した。
違う! あいつの狙いは――キャルだ!
僕はダッシュした。ジュール・ノウは白猫と化したキャルに向かって、刀を振り上げている。
その刀が振り下ろされる瞬間に、僕は棒剣を持ってそこに飛び込んだ。
「ぐうぅぅぅ――」
棒剣で受けたジュール・ノウの刀が――異常に重たい。
その細身の刀身に反して、まるで巨大なダンプカーがその上に乗ってるような重さだ。僕の棒剣で――受けきれない。
棒剣が僕の鎖骨にくっつくまで押し込まれ、そのままジュール・ノウの黒い刀が棒剣ごと僕の身体を斬る。
「う…わあぁぁぁっっ!」
鉄の棒である棒剣が斬られ、チタン合金以上の硬さにまでなってるはずの僕の身体が――斬られる。
僕はその刀の重みに、膝をついた。




