4 決着! ジュール・ノウvsワン
シグマの身体を串刺しにしたバルギラは、微笑を浮かべて口を開く。
「君たちはルイン・バスターという兵器を見ただろう? あれは元々、ルイン・ブラスターという古代兵器を、ウェポンが改良、巨大化したものだ。そしてこの剣はね、そのルイン・ブラスターを素材にしたルイン・ブレードという」
「――グアアァァァッ!」
バルギラが解説をするその足元で、シグマが呻き声をあげた。
ビートライダーの身体が赤く光り、その光が剣に吸収されている。
「この剣は光線を発射したりできないが――相手の命力を吸い取ることができるんだ。そしてそれはぼくに還元される」
「グアアアァァァッ!!」
シグマが呻き声をあげると、その変身が解除されてビートライダーΣの姿から戻った。
「シグマ! ――その手を放せ、バルギラ!」
カサンドラが鎖剣を飛ばす。と、バルギラの姿がまた瞬間移動で消えた。
と、今度は艦橋傍の根元に立っている。
「さあ、二人目だ。――見たまえ、世紀の決戦もそろそろ決着がつくんじゃないのかな?」
バルギラに促され、僕らはジュール・ノウとワンの戦いに眼を向けた。
二人は細かい応酬を終え、離れた距離で睨みあっている。
「手さぐりの段階は終わった……。次の一合で――勝負が決まる」
カサンドラが呟いた。
僕は固唾をのんで見守った。
ジュール・ノウは青眼。ワンは下段から――八相に構えた。
二人が……ほんの僅かずつ、間合いを詰めている。
ワンが出た。八相から首筋に、刀を横に振る。
ジュール・ノウは動かない。受けも避けもとらない。
その刀が首筋に届く直前、ジュール・ノウが動いた。
ジュール・ノウはワンの太刀を――ただ真っすぐに斬り割る。
ワンの剣線が逸らされ、ジュール・ノウの剣が進んでいく。
このままなら正面に立つワンの脳天が斬り割られる。
が、ワンは僅かに身体を落として、刀を返しながら左側――裏に入った。
頭上で振り返した刀がジュール・ノウに斬りかかる。
――が、その瞬間だった。
ジュール・ノウが横に動く。その刀は、ワンの胴体を真っ二つに斬り割っていた。
「む……」
刹那、いきなり空間が歪んだ。
あの――一秒の巻き戻しだ。
八相で斬りかかったワンの剣線を、ジュール・ノウが斬り割る。
ワンはそれを抑え込んで、ジュール・ノウの刀の上を滑らせるようにしてジュール・ノウの首を切りに行った。
が、ジュール・ノウは斬り割る刀を再び起こし、ワンの刀を外すと、逆八相からワンを袈裟斬りにした。
――と、再び空間が歪み、時間が巻き戻る。
ワンは八相から斬りかかり、ジュール・ノウがそれを切り割る。
ワンをそれを無理やり下に沈め、ジュール・ノウの胴体に突きを入れようとする。
が、ジュール・ノウはそれを巻き払い、返す刀でワンの脇腹から斬り上げた。
また空間が歪み、時間が戻る。
八相から斬りかかるワンの刀をジュール・ノウが斬り割る。
ワンは頭から空中回転するように沈み込み、その回転間際にジュール・ノウの膝裏に斬りつける。
が、ジュール・ノウはその刀を受けると、それを踏みつけた後に、ワンの喉を串刺しにした。
また空間が歪み時間が戻る――
これを何度繰り返しただろう。
百――いや、そんなものじゃ済まない。
時間が巻き戻ってるから、その一秒はいつまで経っても終わらない。
が、気の遠くなるほど長い時間、僕らはその一秒を繰り返した。
いつまで続けるつもりだ? いや、いつになったら終わるんだ!
そして――
「ぐ……むぅ――」
胴体を半分斬られ、その上で袈裟斬りにされたワンが、呻き声をあげて倒れた。
ジュール・ノウは静かにそれを見下ろしている。
「…フフ……まさか1026回やり直しても――一太刀も浴びせることができぬとはな――完敗だ……ジュール・ノウ」
「悪くなかったぞ、ワン」
青い髪のワンはジュール・ノウの言葉を聴くと、満足げな笑みとともに目を閉じた。
「……馬鹿な…信じられん。あのワン相手に、あれだけの回数を勝ち続けただと――」
カサンドラが絶句している。
その驚きは、バルギラもそうだった。
「まさか、あのワンが負けるとはね……これは想定外だよ。しかしね――君が白夜にいることに変わりはない!」
バルギラはそう言うと、姿を消した。
と、バルギラはジュール・ノウの近くの甲板外の空中に現れた。
「位置入れ替えだ!」
その空中のバルギラの姿が、ジュール・ノウに変わる。
ジュール・ノウが驚きの表情を浮かべた直後、その姿は落下していった。
と、突然、空中に巨大なバルギラの顔が浮かぶ。これは――ビジョンの力か?
「兵士たちよ! 今、落ちていったのがジュール・ノウだ! 彼の首を獲った者に、10億ワルドの報奨金を出すぞ! 全員で一斉にかかれ!」
下を見ると、何万もの兵士たちが一斉に動いた。
恐らく、落下したジュール・ノウを襲いにいったのだ。
「重気界さえ封じれば、ジュール・ノウとて一介の剣士。これだけの軍勢を相手に戦えるかな!」
バルギラは勝ち誇ったように声をあげた。
その瞬間だ――
突然、バルギラの喉に赤い線が走った。
「え……」
驚くバルギラの喉から、血が噴き出す。
その赤い線が走った先に、エリナの姿が現れた。エリナは小太刀を握っていた。
「貴方たちの野望はここまでよ!」
眼鏡の奥の瞳を光らせ、エリナがそう告げた。
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ゲイルの言葉に、ランスロットは驚きを隠せなかった。
「なに……? キャルの能力だと――」
「ハン! 今頃、ジュール・ノウが罠にかかって死に、お前たちの仲間もみんなやられてるだろうさ!」
眼に星のペイントをしたゲイルは、そう言うと薄笑いを浮かべる。
「そしてお前たちも――ここで死ぬ!」
しゅるる、と不可思議な動きで、ゲイルが蛇行する槍を突き出す。
ランスロットはそれを躱した。が、その背中に、ヒモグラーが火を噴きかける。
「くっ!」
少し炎に焼かれながら、ランスロットは床を転げて難を逃れた。
寄ってくるヒモグラーは10体。離れた場所で、カザンと力比べになっているガドが声をあげた。
「ランスロット!」
「仲間の事を気にしてる場合か!」
カザンは押し込んだガドのハンマーに、自ら頭をぶつけていった。
その角が、グオン、と衝撃音をたててハンマーに圧力をかける。
「ぐぅ……」
「オレとお前のパワーの差は歴然。わりぃが、ここで潰れろ!」
カザンがもう一度、頭突きをくらわそうとした瞬間、ガドはハンマーから手を放した。いきなり支えが無くなり、カザンが前につんのめる。
その隙をついて、ガドはカザンの背後に廻り、腰に手を回した。
「ちょろちょろしたって、オレの重さはどうにもなるものか!」
カザンが背後の気配を感じながらも、勝ち誇った顔で叫ぶ。
が、ガドは相手の重心を後ろにずらし、自分のヘソに相手をのせる。と、同時に膝を落として相手を浮かせた。
「ウオオオオォォッ!!」
ガドは思い切り背中を逸らすと、カザンを後方にスープレックスで投げた。




