3 バルギラの異能使い
僕はバルギラに向けて棒剣を振り下ろす。が、その瞬間にバルギラの姿が消えた。
高速移動じゃない――本当に消えたんだ。
「――驚いたね、能なしだと聞いていたのに、そんな速さで動けるとは」
頭上から声が響く。見上げると、艦橋の頂上――キャルの横に、バルギラの姿があった。
「瞬間移動――?」
「クオン! バルギラは我々、ディギナーズの異能、全てを使えるディギア・ガントレットを着けている!」
驚いてる僕に、ハルトが教えてくれた。
バルギラはにやりと笑った。
と、その時、スルーの悲鳴が上がった。
「嘘! ファントムが出せない!」
「アタシの魔法も使えないよ!」
カエデも目を開いて驚いている。その二人に、ヒモグラーが二体で襲い掛かった。
と、その二体のヒモグラーが、いきなり横に吹っ飛ばされる。
「シグマ!」
変身したシグマが飛び蹴りをくらわせたのだった。
「オレはこの白夜の中でも戦える! お前たちは、何処かに隠れてろ!」
ビートライダーΣが、スルーとカエデに言った。
スルーは頷くとカエデの手を取り、艦橋の壁の中に消えていった。
エリナとカサンドラは、群がるヒモグラーを次々に斬り捨てていた。
体内で気力を使える組は、とりあえず戦えるようだ。
「この状況下でも、意外に戦えるようだね。仕方ない、じゃあ――キャル、君が行って片づけてきなさい」
「ギィアアァァァッ!」
バルギラの声に呼応して白猫が鳴くと、白猫は翼を広げながら艦橋を疾走してきた。
「ギイイィィィィッ!」
白猫が巨大な爪で、ハルトに襲い掛かる。
「ムッ!」
ハルトは剣で受けるが、そのパワーを堪えきれず、吹き飛ばされた。
「ウワァァァッ!」
ハルトの身体が宙に浮き、甲板から飛び出して落下しそうになる。
と、そこに影が飛び出して、ハルトの身体を掴まえて右舷から左舷に飛び移った。
シグマだった。
「大丈夫か、ハルト!」
「すまない。しかしあの猫――とんでもないパワーだ」
ハルトが痛みに顔をしかめながら口にする。
「ギャアアオゥッ!」
白猫は今度はエリナに襲い掛かる。
エリナが爪を跳んで避けた瞬間、白猫の翼がエリナを打った。
「あうっ!」
甲板に叩きつけられたエリナが呻き、そこにさらに白猫が爪で襲い掛かる。
と、その手に鎖が巻き付いた。カサンドラの鎖だ。
「やめるんだ、キャル!」
カサンドラが叫ぶ。が、そのカサンドラをヒモグラーたちが囲んだ。
ヒモグラーたちが一斉に火を噴く。
「カサンドラぁっ!」
そうか、ヒモグラーたちの火は魔法じゃない。
こっちの魔法は封じられてるのに、向うは火も改造した身体もなんの制約も受けないんだ。
「う……ぐ……」
火の中から脱出したカサンドラが、甲板に転がる。ダメージを受けている。
「やめろおっ!」
僕はヒモグラーたちの処へ跳躍して、重化斬りを浴びせた。
頭から真っ二つになったヒモグラーが、甲板から落ちていく。
その僕に別のヒモグラーが襲い掛かるが、僕はその爪を躱しつつ重硬タックルをぶちかます。そのヒモグラーも呻きながら、甲板から落ちていった。
「やめるんだ、キャル!」
僕は白猫に向かって叫んだ。
「ギ……ギィアオゥゥッ!」
白猫の巨大な爪が僕を襲う。僕は棒剣でそれを受け流した。
白猫は咆哮をあげながら、僕に襲い掛かる。
棒剣で防ぎきれなかった爪が、僕の身体に当たる。
無論、硬化しているから怪我はしない。――が、その攻撃は何よりも痛かった。
「キャル! もう君に――これ以上、誰も傷つけさせない!」
「ギャアアオオォォゥッ!」
白猫が巨大な爪で襲い掛かるのを、僕は両手を広げてそれを受ける。
白猫が何度も、何度も僕に斬りかかる。
「キャル……」
僕は見た。白猫の赤い眼から、涙が流れている。
「キャル!」
僕はそのまま白猫の首元に抱きつき、両手をまわしてがっちりと抱きしめた。
重化!
「ギャアオゥッ!」
グン、と一気に白猫の身体が沈み、甲板に落ちる。
僕は上に廻り込んで、重化で白猫を抑え込んだ。
「僕はキャルを抑え込んでる! 誰かバルギラを!」
「判った!」
カサンドラがヒモグラーを斬った後に、艦橋の上にいるバルギラの元へ駆けあがろうとする。
が、その前にいきなり、バルギラの方から艦橋から飛び降りてきた。
「な、なにっ!?」
「そんな抱擁で白猫を停められても興ざめだよ」
空中でそう言ったバルギラの姿がいきなり消えた。
――いや、消えたんじゃない! 僕がいきなり、空中にいる。
「う――うわあぁぁっ!」
甲板目がけて、僕が落下していく。
僕は慌てて、硬化して甲板に着地した。
バルギラは涼しい顔で、白猫の首元から離れる。
僕と空中の自分の位置を、位置入れ替えしたのか。
「フフ……位置入れ替えか、なかなか面白い異能だ」
バルギラがそう笑うと、いきなりその姿がヒモグラーに変わった。
何処だ!?
「――ウアァッ!」
ハルトの声がして、赤い炎のような剣を振った後のバルギラがそこにいた。
ハルトの身体が飛ばされ、甲板から落ちようとしている。
が、落下するハルトの姿が、いきなりヒモグラーに変わる。
「ギイィィィィィ……」
ヒモグラーは呻き声をあげながら、落下していった。
と、別の場所に、ハルトが胸を押さえて立っている。落下の寸前に、位置入れ替えを使ったのか。
「くっ――」
しかしハルトが膝をついた。
その胸が、赤く染まっていく。バルギラに斬られたんだ。
「まずは一人」
そう言うと、またバルギラの姿が消えた。
何処だ!?
シグマがヒモグラーにジャンピング・ストレートで殴りかかろうとしている、その上にバルギラが突然現れる。瞬間移動だ。
バルギラが赤い剣をシグマに斬りつけた。
「ぐぅっっ!!」
シグマが甲板に叩きつけられた。
「ほう、斬れないのか。変身後の身体は頑丈だな」
そう言うなりバルギラは、赤い剣を縦に持つと、甲板のシグマに突き刺した。
シグマが咆哮のような呻き声をあげた。




