2 ボルト・スパイク、艦内潜入
ランスロットは円柱の横にあるスイッチを押した。
それがドアが開くボタンで、円柱の真ん中からドアが開く。
ランスロットはガド、スー、ミレニアを見た。
皆が頷く。ランスロットたちは中に乗り込んだ。
中は狭い部屋である。ガドが声をあげた。
「なんだ、ここは? 物置か?」
「いや、多分、違うよ。そこにまたボタンがある」
ミレニアが声をあげて指さしたのは、三角形が上を向いてるものと、下を向いてるボタンだった。
「どうやら、この部屋自体が移動する箱のようだな」
ランスロットはそう言うと、下のボタンを押した。
案に違わず、エレベーターは下に降りていく。
ドアが開くと、その視界の先には広い空間が広がっている。その奥の方には、天井から大きな円錐状のものがぶら下がっており、それは床に向けて赤い放電状のエネルギーでつながっていた。
「なんでしょう、あれは?」
スーが首を傾げる。眼の前の空間には手すりがある。ランスロットたちはそこまで歩み寄って、その眼下に広がる光景に絶句した。
手すりの下は巨大なプールのようになっていた。しかしそこに溜められているのは水ではない。――人だった。
人が立ったまま、倒れることもできないほど、ギュウギュウに詰められている。
男もいれば女もいる。子供も年寄りもいる。中には獣耳を持つ者も多く、明らかに奴隷らしき人々だった。
「これは――」
ランスロットはあまりの光景に絶句した。
「この人のプールは……命力を奪う、動力装置だ!」
ランスロットは憤怒のなかで、そう声をあげた。
と、その時、奥からやってきた者の声がする。
「チッ! こんな処まで入ってきやがって……」
「まあ、いいじゃねえか、ゲイル。退屈しないで済むぜ」
忌々しそうに唾を吐いた眼に星のペイントをしたゲイルと、鼻ピアスのカザンの二人が、ランスロットたちに向かって歩いてくる。
と、その姿がみるみるうちに変貌し、ゲイルはキングバイパー、カザンはブラックバイソンの怪人へと変貌した。
ゲイルの目が光る。
「みんな、見るな!」
ランスロットが叫び、仲間たちは眼をそむけた。
と、その隙を見て、バイソン怪人と化したカザンが突っ込んでくる。
「ウオオォォォ!」
ガドが咆哮をあげて、突進してくるカザンに向けてハンマーを振り下ろした。
カザンがそのハンマーをまともに受ける。が、ハンマーは両手で掴まれていた。
凄まじい力が拮抗しあう中、ガドは声をあげた。
「早く、下の人たちを救出してくれ!」
「――そんな事させるか!」
蛇行する槍を持ったゲイルが、しゅるしゅると素早く動いてガドを刺そうとする。
が、その槍をランスロットが払った。
「俺たちが、こいつらの相手をする。二人は、救出を実行してくれ!」
「判った!」
ミレニアは返事をすると、ランスロットたちが拮抗しあうのと逆の方向に走り出した。スーがそれに続く。
「あ、待て! 貴様ら!」
カザンがそれに気づいて追いかけようとするが、ガドがその前に立ちふさがる。
「だから――行かせねえって言ってんだよ」
ガドは不敵に笑った。しかし、カザンも笑い返す。
「ヘヘ……てめえは前にオレに負けてるだろ! オレのパワーに、勝てるとでも思ってんのか?」
「パワーで勝てなくたって――てめぇには勝てるさ」
ガドは笑いながら言い返した。
ランスロットはゲイルの槍を剣で応戦していたが、ふとミレニアたちの様子を見る。と、ミレニアたちの前に、ヒモグラーが現れた。
「このモグラ野郎ども!」
ミレニアが氷柱ミサイルを発射し、スーが猛牛のファントムでヒモグラーたちを吹っ飛ばす。ランスロットはそれを見て、苦笑した。
「あいつらなら、大丈夫だな」
しかし、そう呟いた瞬間だった。
何か異変が起きた――のを感じた。
「……なんだ?」
その違和感に気付かないでいると、ミレニアの声があがる。
「なにこれ!? どうして魔法が使えないの!?」
「わたくしのファントムも――出せません!」
なんだって? ランスロットは電撃魔法をゲイルに向けて発射しようとした。
が、魔法が出ない。
「なんだこれは! 魔法が出ない――」
ランスロットが驚愕していると、向うでミレニアの悲鳴が上がった。
「きゃあっ!」
「ミレニア!」
ランスロットはミレニアの方に向けて駆け出した。
気力を放出しようとするが、うまくいかない。
「くっ、体内ならどうだ?」
体内で気力を爆発させる。これはうまく使え、ランスロットはミレニアたち元へ駆けつけることができた。
「おやめなさい!」
スーが両手を広げて、倒れているミレニアを庇おうとする。
そのスーに対して、ヒモグラーが爪を振り上げた。
キン、と瞬間にヒモグラーの爪を、ランスロットが剣で受ける。
「オオオォォォッ!」
ランスロットは体内で気力を爆発させ、ヒモグラーの胴体を真っ二つにした。
「大丈夫か、スー、ミレニア!」
「わたくしは大丈夫ですけど、ミレニアさんが!」
スーがしゃがみこんで、治癒をしようとするが、治癒の光が出ない。
「治癒もできません!」
「……大丈夫、大した怪我じゃない」
ミレニアは歯を食いしばって立ち上がった。
その様子を見ながら、ゲイルが近づいてくる。
「ヘヘ……ボスの言ってたのは本当だったな」
「なんだというんだ?」
ランスロットは歯噛みしながら、ゲイルを睨む。
「じきにこの一帯は霊力、魔力、気力の使えない領域になる。言っとくがな、これはお前らが助けにきた、あの猫耳娘の能力らしいぜ」
「キャルの……?」
ランスロットは驚きに眼を見張った。
○ 〇 ○ 〇 ○ 〇 ○ 〇
僕はもう少しで、二人の戦いに眼を奪われるところだった。
ジュール・ノウとワン、二人はまるでペアのアイスダンスのように、接近しては離れ、離れては近づく。
だがその度に交わされてるのは言葉ではなく、刀の応酬だ。
けどあの二人は――
「楽しんでいるな……」
カサンドラがヒモグラーを斬った後に、呟いた。視線は、ジュール・ノウたちを見ている。
二人は笑ってはいない。真剣な厳しい表情そのものだ。
けど、彼らが刀を通して会話をしているのを、カサンドラは感じているのだ。
――僕は我に返った。
「いや、僕はキャルを助けるんだ!」
あの勝負がどちらが勝つにせよ、僕はキャルを助けなければ――
そのためには、バルギラから呪宝を奪還しないと。
僕はバルギラに向けて、バネ脚ダッシュで猛加速した。




