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6 奪還作戦始動!


 スレイルはその後、なんで龍王が我が家にいるのか、とか、龍王の分体ってなんだとか、何を食べるのか、フンはするのか、言語は理解するのかとか色々聞きたがったけど、時間がないのと面倒なので後回しにしてもらった。


 で、すぐに二頭立て用の幌付きの馬車が調達され、エターナル・ウィスルのメンバーに同調の仕方を教え、出発するという段になると、スレイルが駄々をこねる。


「パイロットは、是非、ぼくにやられせてくれたまえ! なにせ経験があるのでね!」

「いや、スレイルさんはスピード狂だからパスで」

「何を言ってるんだ! 今は一刻を争う時だぞ! この中で一番魔法力が強く、『経験がある』ぼくが適任だ!」


 ……この人、まともな作戦の時は頼りになるんだけど――今は、絶対、単なるワガママだよね?


「なあ、クオン、いいんじゃないか? スレイルさんに頼めば。私がバリアを張ろう」


 カサンドラがそう言い出した。あ~、判ってない! スレイルさんは、ほんとスピード狂なんだって!


「そうそう、口論する時間も惜しいよ。いいじゃないか、スレイルさんに頼めば?」


 エリナもそう言い出す。……判ってないんだ、二人とも。

 けど、もう僕も諦めて言った。


「判りました……じゃあ、スレイルさん、お願いします。エリナさんはゼロライズで、カサンドラがシールド――ランスロットとミレニア、サポートお願いね」

「判ったよ」


 ミレニアが、親指を立てる。

 ちょっと狭いけど、なんとか荷馬車にぎゅうぎゅうに乗り込んだら、僕は荷馬車を軽化した。


「スレイルさん、それじゃあお願いします。――ジョレーヌさん、行ってきます」

「みんな、気を付けてね!」


 ジョレーヌの言葉に皆が頷いた。

 と、馬車が透明化する。エリナがゼロライズしたんだ。


「じゃあ、スレイルさん、発進で」

「任せたまえ!」


 そう言うなり、馬車が急上昇する。スルーとミレニアが悲鳴をげた。


「きゃあ! な、なに!?」

「ちょっと、絶叫マシンじゃないのよ!」


 だから言ったんだ。が、ある程度、上空まで来ると、スレイルが目を輝かせた。


「それじゃあ、飛ぼうか」


 一気に加速! 風圧が凄い。身体にかかるGも凄い!


「カサンドラ!」

「判った!」


カサンドラがバリアを張って、少し静まった。

いやあ……戦闘機の発進て、こんな感じか? けどまあ、シールドがしっかりしてるおかげで、体感速度は新幹線の中なみに軽くなった。


 けど、外を見るとやはり凄い勢いで飛んでいる。

 けど、確かにこれなら早く着けそうだ。


「おい、見えて来たぞ」


 ロンに言われてみてみると、視界のはるか先に、黒い塊がある。

 近寄ると判ったが、それは巨大な陸上戦艦と、その周囲で進軍する軍隊だった。


「スレイルさん、もういいです。速度を落としましょう」

「もうちょっと飛びたかったが、あっという間だったな。残念」


 そう言うと速度が下がり、僕らは上空から陸上戦艦の威容を眺めた。


「巨大な三門の砲門が五機。十五の砲門か――あれだけの火力を使うとなると、動力源の奴隷は相当の人数に違いない」


 ランスロットが下を見ながら、そう口にした。


「兵力はざっと三万。かなりの戦力ですな」


 同じく下を見たジージョがそう口にする。


「降りるか、クオン?」


 レガルタスが訊いてくる。


「いえ、動いてる戦艦に降りるのは、ちょっと危険だと思います。停止するまで、このまま待機しましょう」


 僕はそう答えた。

 しばらく、上空から進軍を見つめている。陸上戦艦に気付かれた様子はない。


 が、陸上戦艦からスピーカー音で声が響いた。


「全軍停止!」


 バルギラの声だ。その命令で、傍の歩兵たちも進軍を停めた。

 進軍を停めたってことは――


 僕らはその先を見つめた。

 黒い飛竜が飛んできている。――ジュール・ノウが、また一機で来ている。


「全砲門、発射用意!」


 砲門が動いて、飛来してくる黒い飛竜に狙いを定める。


「撃て!」


 一気に十五の砲門が火を噴いた。こちらは火炎弾式の砲弾だ。

 だがその火炎弾が着弾する前に、ジュール・ノウが重気界を張った。


 彼の周囲半径100m圏内くらいが、紫の空気に包まれる。


「あれが――ジュール・ノウの重気界か!」


 カサンドラが驚きの声をあげた。

 火炎弾がそこに呑まれると、いきなり停止したように空中で止まる。


 黒い飛竜は悠々と火炎弾網を突破すると、陸上戦艦の傍まで来て低空飛行に入った。ジュール・ノウが抜刀しながら、飛竜から飛び降りる。

 左舷の甲板に降り立つと同時に、ジュール・ノウは砲門に刀を振った。


 いきなり、砲門が斬られ、砲身が短くなる。さらに刀を振ると、砲塔自体が斬られて、破壊された。

 鉄の塊だとか、そういう事が関係ないらしい。


 ふと思った。ジュール・ノウは、僕が硬化しても斬ることができる。

 ……あの人とは、戦いたくない。


「僕らも降りましょう、右舷の艦橋寄りの場所に」

「判った」


 スレイルがそう答えると、右舷の根元近くに降下していく。


「スルーさん、全体を『すり抜け』して!」

「やってみる!」


 甲板に降りずに、馬車はそのまま甲板をすり抜けて、船体の内部へと侵入した。

 そこは広い空間になっており、馬車はその床に着地した。


 僕らは馬車から降りる。


「じゃあ、作戦通り行きましょう。ボルト・スパイクは動力の遮断、エターナル・ウィスルは陽動を担ってもらって、残りはキャルの奪還で。各チームの連絡役はリンクを張れるエリナさん、スー、スルー、ジージョさん。それで各連絡役同士がリンクを相互に張る形で」


 僕らは各チーム内で霊力のリンクをもらい、霊術士同士がリンクを張り合う。


「目的はキャルの奪還なので、目的を果たしたら、ただちに撤退します。できたらこの場所に帰還して、荷馬車で帰るのが理想だけど、戻れない時は連絡を。必ず救助に行きます」


 僕の言葉に、レガルタスが頷く。


「よし、それで行こう。――エターナル・ウィスルは陽動。つまり、この船ぶっ壊せばいいんだ。皆、簡単だろ?」

「腕がなるよ!」


 イオラが笑い、他のエンバーが頷いた。


「俺たちは船の一番奥へ向かう。心臓部はもっと後方だ。――よし、ボルト・スパイク、行くぞ!」

「「「おう!」」」


 ボルト・スパイクが意気をあげる。

 そしてハルトが口を開いた。


「我々は甲板に上がろう。そこに、キャルさんが出てくる可能性が高い」

「そうですね、行きましょう!」


 僕らは頷いた。そして僕は声をあげた。


「じゃあ、みんな、作戦開始だ!」

「「「「「「「おう!」」」」」」


 僕らは声をあげると、それぞれの方向に散開した。


 僕らとディギナーズは、甲板へ上がる階段を走る。


「気を付けて上がらないと、ジュール・ノウの重気界に巻き込まれる。あれに巻き込まれたら、身動きがとれなくなります」

「ジュール・ノウは左舷にいたが――船まで来たジュール・ノウを、バルギラが放っておくとは思えない」

「もう、キャルが出てくるかもしれない?」


 僕の問いに、ハルトが頷いた。


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