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6 巨大イノシシとの格闘


「ブゴーッ!」


 殴られて痛かったのか、イノシシが咆哮をあげる。

 僕は続けて殴った。が、思うようにいかない。


 本当は最大重量を乗せて、上から押し潰したいのだけど、イノシシが大きすぎて上から殴れないのだ。


 横から殴ってるだけでは、こいつを仕留めきれない。


 と、角を振り回していたイノシシが、一旦、距離をとって僕を睨んだ。

 イノシシのくせに、ガンを飛ばしてきてる。なんて奴だ。


 と、突進してきた。

 僕は最大重化で堪える。が――今度は少し、後ろ足が地面にめり込みながら後退した。


「ウソだろ?」


 最大重量の僕を、イノシシはぐいぐい押してくる。

 踏ん張る僕の身体が、ぐんぐん押されていた。信じられない力だ。


「この野郎!」


 僕はイノシシの顔を殴る。しかし勢いを抑えきれない。


「クオン! 鉄棒!」


 キャルの声がして、僕は横を向いた。キャルが僕の鉄棒を持っている。

 僕は策を思いついて、叫んだ。


「真上に放って!」


 キャルは頷く。と、すぐにキャルが僕の真上にくるように、鉄棒を投げた。


 一瞬、硬化を解くと同時に、すぐにゴム脚へ。

 イノシシの横をすり抜け、すぐさま僕は上へ跳んだ。


 僕の身体が空中に舞う。足元に――五角イノシシ。


 僕はキャルの投げた鉄棒をキャッチした。

 そのまま降下しつつ、僕は最大重量でイノシシの頭へと鉄棒を叩きつけた。


「ブギィィィッ!」


 しかしイノシシは頭を振り回して、僕の鉄棒を弾いた。


「嘘だろ――」

「ブゴーッ!」


 イノシシが突進してくる。重硬化!

 衝撃が加わる。

 ギリギリ間に合ったけど、イノシシは逆に怒り狂っている。


 ダメだ。最大重量で叩きつけたのに、イノシシを潰せない。どうしたらいい?


 僕は鉄棒の尖ってる柄の先端を突き刺そうとした。

 しかし、イノシシの表皮が堅くて、突き刺せない。


「ヒモグラと全然違う……」


 とんでもない猛獣だ。どうしたら倒せるんだ、こんな奴。

 その時、キャルの声がした。


「クオン! 詠唱で火炎魔法を浴びせてみる! 合図したら避けて!」

「判った!」


 僕が返事をすると、キャルが詠唱を始めた。


「大気に宿りし大いなる炎の源よ、我の元に集いて、その内なる力を蓄えよ。呼び出したる稲妻の光、凝りたる潜みし力に今、姿を与えるべし。されば我の指より、炎の槍現れよ! ――火炎(フレイム)放射(・バスター)!」


 技の名前を聴くと同時に、僕はゴム脚で地面を蹴って横に離脱した。

 と、次の瞬間、キャルの指先から人を軽く呑み込むほどの、凄まじい火炎が発射された。


「ブギーッ!」


 イノシシの身体が炎に包まれる。が、イノシシは炎をまとったまま、キャルに突進しようとした。


「危ない!」


 僕はキャルとイノシシの間に割って入った。

 

「キャル、逃げて!」

 

 イノシシを抑えながら、僕は背後のキャルを振り返った。

 キャルが怯えた眼で、呆然としている。動けないらしい。


「キャルちゃん、こっちだ」


 姿は見えないが、エリナの声がした。キャルが呆然としたまま、身体が横に揺らいだ。エリナがキャルを連れていってる。


「熱い!」


イノシシの奴に炎がくすぶったまま、僕はその身体を受け止めていた。

重硬化して衝撃には耐えられるけど、熱さには耐えられない。


 僕はたまらず、横の地面に転がった。


 イノシシから距離ができる。奴の身体はもう燃えてない。

 イノシシは僕を睨んだ。次に最大の力で突進してくるつもりだ。


 重硬化すれば耐えられるが、それでは決着がつかない。


 そうだ。叩くのではなくて――斬る。

 僕は鉄棒を軟化させ、その先端部を指で抑えて薄くした。少しでも刃物っぽくなるように。


「キャル!」


 僕はキャルに呼びかけた。我に返ったキャルが、僕に応える。


「なに、クオン?」

「僕が跳んだら、イノシシに炎を浴びせて!」


 キャルが眼を見開いている。が、すぐにキャルは頷いた。


「判った!」

「よし!」


 僕はゴム脚で跳んだ。イノシシが、空中の僕を見上げる。

 と、キャルが火炎放射を浴びせた。


「ブゴーッ!」


 イノシシが怒ってキャルの方を向く。それでいい。移動されたら、もう攻撃できない。


「喰らえ!」


 僕は降下しながら鉄棒を最大重量で振り下ろした。

 今度は堅い頭部ではなく、骨を避けて首の端を斬り下ろすように。


 薄くした鉄棒の刃がイノシシの堅い皮膚にめり込む。と、それが重さで皮膚を斬り割っていく。


「オオオオォォッ!」


 僕は咆哮しながら、イノシシの首を斬り割った。

 イノシシの首を中ほどから斬りながら、僕は片膝を曲げるまで鉄棒を振り切る。


 鉄棒が地面にめり込んだ。――どうだ?

 と、思った瞬間に、半分になったイノシシの首から、血しぶきが飛んだ。


 僕の顔や身体に、生ぬるいイノシシの血がかかる。

 僕は慌てて、それを避けた。


「ブギ………」


 イノシシが小さく呻くと、その血だまりの中に倒れ込んでいった。

 倒れたイノシシの首から、大量の血が流れ出し、地面を黒く染めていく。


 やがてイノシシは動かなくなった。


「ふぅ――」


 僕は息をついた。


「やった! やったぞ、クオンくん! 凄いぞ!」


 エリナが僕の元に駆け寄ってきた。

 と、真っすぐ僕の元に走って来たキャルが、突然、僕に抱きついた。


「キャル……」

 

 え? 何が起きてる? 女の子に抱きしめられてる?


「クオン」


 キャルが潤んだような声を出した。


「クオンが無事で……よかった…」

「大丈夫だよ、キャル。キャルが足止めしてくれたから、あいつを倒せた」


 僕は安堵のなかで、キャルにそう言った。

 耳元で、キャルの声が聞こえる。


「また、わたしを助けてくれた。クオン……ありがとう」

 

 キャルが身体を離して、微笑む。と、僕は慌てて声をあげた。


「大変だ! キャルに血が移ってるよ!」




    *     *     *     *     *


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